第六話
血にも似た赤い雨粒が降る。今日の天気は生憎の雨模様ではあるが、悪いことかと言うとそんなことは無い。
雨の日はニクハテも普段より大人しいことが多い。視界は悪くなるが、総合的に見れば晴れの日よりも安全と言えるだろうか。
ただ移動が大変になってしまうのは間違いない。それもかなりの距離だ。私には大した距離では無いが、アリスには雨が足枷ともなりそれなりに疲れが出てきているようだった。
それに───。
「……ルカ」
流石にこの光景には、アリスも恐れを抱いているらしい。護身のためか、形見だからか。持ってきた拳銃を胸に抱くようにして肩を震わせる。
そこは、以前とは比べ物にならないほど赤かった。
この辺りで狩りをする人間が居ないのだろう。そのせいで私が最後に来た時とは既に別世界と言っても過言ではないほど、そこはニクハテの波に包まれていた。
ニクハテの成長速度は、抑圧されればされるほど、解放された時に大きくなる。故に人の手が入っていた場所であればあるほど、それが無くなった時に、一瞬で染め上げられてしまうのだ。
塀も、地面も、家屋も、何もかもが肉に覆われた赤い世界。およそ二ヶ月以上もの間、一切の邪魔が入らず成長し続けたニクハテはその全てがかなりの大きさとなっていた。当然歩くのも一苦労であるし、戦闘を避けることも難しそうだ。
「この辺りにはもう誰も住んでいないらしい。少し間引くから、アリスはここで待っていてくれ」
幾らニクハテが大人しい雨の日とはいえ、アリスを伴って歩くには流石に厳しい環境だ。私一人であれば対処出来るが、アリスを守りながらとなると難しい。
アリスにこの場から動かないよう伝え、腰に提げたマチェットを手に取る。
やはりと言うべきか、複数のニクハテが融合し一体となったそれらの攻撃性は激しかった。横幅十数メートルはあろうかという肉塊には無数の目玉と口が付いており、姿をさらした瞬間、それらが一斉に凄まじい速度で迫ってくるのだ。
狙われたのは頭、胴体、腕、脚。つまり全身であり、それらの攻撃は全て同時だ。体を逸らすだけの回避は意味が無いと悟り、横に飛ぶ。
脇を通り過ぎる肉口を、瞬時に振り下ろしたマチェットで斬り落とし、振り上げる力で再び迫ってきた別の口を落とす。
切り残しが出来ないよう、確実に断ち切り、繋がりが残るようなら再度振るう。
ニクハテの攻撃手段は寄主によるが、主なものとしては口を用いた噛みつきだ。その際には口周りの肉を伸縮させてくる。
伸縮時の勢いは秒速100mを超える速度のため、噛みつかれなかったとしても、肉塊に当たっただけで怪我は避けられない。それが幾つも同時に迫ってくるのだ。戦闘慣れしている人間でないと駆除は難しい。
だがこのニクハテは幸い、足を持っていない。動き回ることがないのはそれだけで有難く、移動するタイプの個体は私としても少々労力を使わなければならないため、このニクハテは大きくて攻撃回数が多いだけのただの的と言い換えることも出来る。
攻撃してくるのは口のみ。それ以外の部分の肉に移動や攻撃能力はなく、それでいて相手の生命力はしっかりと削ることが出来る部位。
無論、それでも通常のニクハテと比べれば危険度は段違いであろう。
普通のニクハテは攻撃を一度回避すれば、比較的容易に接近できるため、あとは刃を突き立てれば仕留めるのは簡単だ。銃を初めとした飛び道具があるのならば、ニクハテの感知範囲外から狙うことも物によっては可能だろう。
だが、融合と巨大化を繰り返したニクハテはそうもいかない。攻撃の数は多い上に、一度や二度その肉を攻撃したところで死ぬには程遠い。感知範囲はその巨大さ故に通常のそれとは比べ物にならず、的が大きいこと以外は全てにおいて完全に上位互換。
唯一の有効打は爆発を伴う攻撃だが、数を用意できる環境が揃っていることはほとんど無いはずだ。
これを単身で殺すことの出来る人間は限られているに違いない。そしてこの世界では、こんな化け物が有り触れている。
半分以上の口を斬り落としたところで、ニクハテの攻撃の意思が急速に退いていくのが分かった。攻撃すれば逆に自分達が殺されると悟ったのか、遠巻きに歯をギシギシと鳴らすだけ。
ただ死闘をするだけならばこうはならない。向こうも死ぬまで攻撃してきたはずだ。
私とコレらの間に埋めようもない差があると生存本能が理解したから、攻撃を止めたのだ。一矢報いることすら叶わない。ただ見逃されることを願うしかないと。
それは死闘を繰り広げるような人間相手には絶対に抱かない本能。
だがここにいられては通行の妨げになるため、残りの肉も全て剥ぎ落とす。反撃はもちろんあったが、ただ大きいだけのニクハテの攻撃は絶対に当たることはない。秒速100m程度ならば、見てから避けても十分に間に合う。
大部分が肉に包まれていた道路は、肉塊を退かすと大きく陥没していた。表面は全て肉に置き換わってしまったのだろう。
下水管やガス管などが見えている辺り、深さも1メートル以上はありそうだ。その管にも別のニクハテがくっついているが、これは別に通行を妨げるようなものでもない。
威嚇しているぐらいならば、放置して問題ない程度だろう。
アリスを抱え、陥没した道路を上手く渡る。
とは言っても、これは街の入口にいるモノを排除しただけのこと。そして見える限りでも、邪魔になりそうなニクハテは数体居る。そのどれもが、先程と同じかそれ以上の巨体を持つものだ。
家屋に寄生し、屋根の上から巨大な目玉を向けこちらを見下ろしているニクハテや、道路一面に広がった無数の目を開け待ち構えているニクハテ、何に寄生したのかも分からないほど丸く巨大化し、心臓のように一定の感覚で脈動を繰り返すニクハテなど、その種類は様々だ。
私の中ではどれも『巨大化したニクハテ』という一括りの分類になっているが、種類分けをすればそれこそ多岐に渡ることだろう。
そして、それぞれ対処の仕方は少しずつ異なる。
分かっていたことなので、効率良く殺していくことにする。
そうして何度か駆除と移動を繰り返していると、ようやく目的地付近にまで辿り着くことが出来た。もっとも、やはりその光景は大きく変わってしまっているが。
電柱は完全にニクハテに寄生され、真っ赤な肉柱と化している。その上部からは道の反対側に向けてカーテンのように薄い肉の膜が垂れ下がり、道路を壁のように塞いでいた。
カーテンの下部は道路のニクハテと繋がり、薄い膜を引っ張るようにして引き伸ばしていた。
一体どれだけのニクハテがくっついたのか、やはりソレにも無数の口と、そして目玉が付いていた。私達はその先に用があるため、この道路を塞ぐ程に巨大なニクハテを退かしていかなければならない。
ガチガチと、激しい雨音でもかき消し切れないほどのけたたましい歯軋りが鳴り響いた。巨体を持つニクハテは、雨による行動抑制の影響も受けにくい。
「あれ、お父さんを食べた……」
「電柱に寄生したニクハテか。もっとも、どれが主体かはもう分からないね」
そこはアリスと会った場所。そして、アリスの父親が、電柱に寄生したニクハテに殺された場所だった。
道路と融合している今となっては、果たして同じ個体と言えるのかどうかすら曖昧だ。ただあのニクハテの一部は、確かにかつてアリスの父親を殺したモノだろう。
アリスを下がらせ、私は腰に提げたマチェットを取り、雨の中でも俊敏なニクハテの攻撃を回避する。
ニクハテの攻撃手段は、前述したように寄主に由来する。電柱自体はただの柱だが、そこに繋がる電線にはかつて電気が通っていた。このニクハテは寄生時にそれを克服しているはずだ。
そして同時に、自身の性質としているだろう。
目には見えないが、ニクハテの体には電流が走っているはず。原理は違えど、起こる現象はデンキウナギと同じ。どのぐらい寄主に依存するかは分からないが、電線に走っているものと同じ電圧を持っているなら、触れることは深刻な被害を意味する。
「これは、雨の日だったのは悪手か」
上体を逸らし、肉塊が通り過ぎていくのを見送りながら思案する。
デンキウナギは、それが入っている水槽に手を入れるだけ感電する可能性もあると言う。無論死ぬほどではなく、麻痺する程度ではあると思うが、問題は元となったのが電柱、電線という点。
素肌はあまり晒していないとはいえ、下手にニクハテと接触している水溜まりを踏み抜けば、心停止を起こす可能性もあるかもしれない。もっとも、道路そのものがニクハテであるため、水溜まりなどなくとも近寄ることは難しい。
電柱に寄生したニクハテによる頭上からの攻撃が、バックステップをし回避する私を追うように、連続して地面に突き刺さる。
とてつもない勢いに道路のニクハテごとアスファルトを抉り、僅かな破片が飛び散った。
電流が流れているかもしれないというのは、当然かなり厄介だ。簡単に口を斬り落とせない以上、攻撃の数を減らすことが出来ないため、常時回避行動をとる必要がある。
だが、それはニクハテの疲労を誘発するのにかかる時間が少し長引くだけのこと。駆除への大きな支障はない。
いくらニクハテが寄主に由来して変質する異常な化け物だとしても、永久機関のように発電できるわけでもない。むしろ効率はかなり悪いはず。
外部から刺激を与え、発電に疲れたところで一気に仕留めるのが良さそうだ。
道端に落ちている小石や、無関係なニクハテの肉片などを手に取り、その体に投擲して電流を促す。マチェットで叩いてもいいが、絶縁が施されている訳でもないため、念の為遠距離から専念した方が良い。
絶縁手袋などを持ってきていればこんなに回りくどいことをしなくても済んだのだが、生憎と今までの探索で見つけたことがないため、悔やんでも仕方の無いことだ。
少々時間はかかったが、ニクハテの動きが鈍ったところで、迫る肉口を半歩ずれて回避し、マチェットで斬り落としてみる。
感覚から特に問題はなさそうだと判断し、私は反撃へと転じ始める。
人間の死角となる頭上。電柱の上部に付いた口による攻撃も、今度はその場で回避し、伸びてきた肉が戻る前に即座にマチェットを引っ掛け引き裂く。
根元の方はまだ発電能力が残っていたのか、少し指先に電流が走ったような感覚に襲われるが、支障はなさそうだ。電柱も下の支えとなる肉をへし折る。
やがて数分ほどで、ニクハテの体の半分ほどは本体と切り離すことが出来た。既にニクハテからの攻撃は止んでいたが、やはり通行の邪魔になるため念入りに殺していく。
目玉も、口も、全て削ぎ落とし、残った肉片も寄生元となる電柱や道路の残骸から引き剥がしてとどめを刺す。
時間さえかかったが、この程度なら息が上がる程の作業でもない。
「行こうか、アリス」
不安げなアリスの手を取り、邸宅へと向かう。既にアリスにも、少しづつ現実が見え始めているだろう。
敷地を囲う塀は、その殆どがニクハテに飲まれていた。地面はまだ足場があるが、低木は軒並み餌食となっている。当然、敷地内に立つ家屋も既に常人が足を踏み入れられる状態ではない。
そして確認したかった対象はと言うと───いつかアリスと私で作った、彼女の父親の墓は、ニクハテに飲み込まれていた。
折れた十字架の形をした肉塊と、地面から突き出すソレ。やはり見つかってしまったのか、死体にまで辿り着いたニクハテは彼女の父親に寄生したようだ。
歪な形の肉塊が脈打つ。
「……おとう、さん……?」
立ち尽くすアリスの横で、私はある種別の驚きを少し持っていた。
「本当に亡骸に巣食ったか。随分と珍しい」
ニクハテがこうして人間の死体に寄生するのは、かなり珍しい現象だ。私も今まで数える程しか遭遇したことがない。
大体の場合は捕食の対象となり、死体が無くなってしまう。故に寄生先に選ばれたのは随分と希少な例であり、そして残酷でもある。
アリスの父親だったものは、地面の下でそのニクハテに寄生されてしまっただろう。そして亡骸を模倣している。もっとも、それはかなり異形となっているだろうが。
この場から動いていないということは、寄生してからまだそこまで時間が経っていないのかもしれない。
地面から突き出ているのは、伸びた顔のようなものだと思えばいい。
「こうなったら、もうどうしようもない。既に死体から引き剥がすという段階を過ぎている」
「……倒すしか、ないの?」
「それは私の決めるところじゃないよ。君が決めることだ」
人間の死体に寄生したニクハテは総じて周囲に甚大な被害を生み出す。先程まで戦っていた単に巨大なニクハテよりも、更に危険な存在だ。
それでも、私にとってはそれ程害にはならない。放置しようと殺そうと、どちらでも良い。
だがアリスにとっては別だろう。コレを残すことも、殺すことも、どちらも大きな意味を持つ。
黙り込んだアリスに、私から助言はしない。私の言葉が彼女の意志に変化を齎すようなことがあってはならないからだ。
それに、私とアリスでは価値観が異なる。私の価値観は決して常人のものではなく、故にそれに染めてしまうことは私の望むところではない。アリスはアリスの意思で、物事の結末を決定するべきだ。
やがて、アリスは持ってきた父親の拳銃を、墓に居着くニクハテへと向けた。
その意味は、考えるまでもない。
「……」
1秒、2秒。ゆっくりと時間が過ぎ、アリスは肩を上下に大きく震わせる。呼吸が荒くなり、鼓動が速くなる。
それでも、セーフティを解除し、引き金へと指をかけて……。
「……っ……」
私は何もせず、それを見守っていた。少なくない時間が過ぎ、結局撃つことが出来ずに銃を下ろす、その瞬間まで。
雨に隠れて、アリスが涙を零すのが分かる。
「……出来ない……出来ないよ、ルカ……」
殺すつもりでいた。けれど、殺せなかった。
アリスにとって、どんなに姿が変われど、あれが単なる化け物でしかないとしても、少しでも父親と結びつくものがあるなら、それは父親でしかなかったのだろう。
「だってあれは、お父さんじゃなくても……お父さん、かもしれなくて……」
父親を食った仇敵と見るか、それとも父親を宿した化け物と見るか。そんなものは捉え方の違いでしかなく、現実の、事実が変わる訳では無い。
そして、そのような割り切った考えを、アリスは出来ない。
「───君がそう思うなら、確かにあれは君の父親かもしれないな」
これ以上は、流石にアリスも思考を進ませることは出来ないか。子供がここまで自分で考えただけでも上出来だ。覚悟が決まっていないと批評することは出来ない。
私は彼女の横に立ち、その頭に手を乗せる。
「どうすることも出来ないのなら残しておくといい。ずっとこの場にいる保証は無いが、いつか決心が出来たら再びその銃を持ってくるというのも選択肢としてはある」
私が代わりに殺す、という選択肢もある。しかしアリスがそれを自分から頼んでこない以上、提案するのも無粋だろう。
それでどれだけ心境が変わるのかわかるものでは無いが、アリスは無言で私の手を握り、そのまま抱きついてきた。
今は、汚いからと押し返すことはしない。
「今日は疲れただろう、早く帰って休もうか。帰りは背負ってあげるから」
「……うん」
雨が降っているのもあり、アリスもかなり疲弊している。これ以上ここにいても仕方が無いため今日は帰る他ない。
私の手でこの家を掃除することも出来たが、特に触れることはなく、アリスを背負い、帰路に着く。ここに来るまでで邪魔なニクハテは徹底的に駆除したため、アリスを背負いながらでも問題なく帰ることが出来る。
「……ねぇ、ルカ」
背負われたアリスは、私の首に腕を回しながら耳元で呟いた。
「もしも私が死んじゃったら……私の死体を食べてくれる?」
唐突な質問ではあったが、予期できなかった訳でもない。死体の処理の話として最初に『食べて欲しい』というのは突拍子もない発想だが、以前父親の死体を燃やすことなく埋めたのを考えてのことだろう。
燃やせないのなら、食べて欲しいと。
「それは難しいな。人肉を食すことには病気のリスクがある。人一人分となれば尚更な。だが……その一部ぐらいなら、しっかり処理をすれば比較的ローリスクで食べることは出来るかもしれない」
人肉を食す場合、プリオン病のリスクを伴う。脳に広がればそのまま死へと繋がるような、難病だ。
だが、それはかなりの量を食べた場合。無論少量であれ感染症などのリスクは伴うが、可能性は下がる。しっかり処理をすればリスクを抑えることが出来るかもしれない。
脳や脊髄を取り除けば、大きな問題も無さそうだ。
その問いの真意は、父親のように、死後ニクハテに寄生されるぐらいならば、自身の亡骸をどうにか消し去って欲しいという思いからなのだろう。
私が返事をすると、首に回された腕に少し力が入った。
「それでいいよ。残りは……アルフィーに上げて欲しいな。アルフィーなら、まだ私も許せるから」
「アルフィーも、君の父親に寄生したものも、結局は同じニクハテだ。それでもいいのか?」
どれだけアルフィーが、あの小屋のニクハテが他とは違くても、根元は同じ。放置していれば、またすぐに食欲と生存本能が顔を覗かせ、人間を襲う本質を持っているだろう。
「うん、それでもいいよ」
だがアリスの中では、明確に組み分けがされているようだ。
アリスがそうして欲しいと願うのならば、私が断る理由は無い。死体を誰が食すかというだけで、方法に違いが無ければ、特に面倒という訳でもない。
「そうか。なら、死ぬ時は事前に伝えてくれると助かる。予期せぬものなら仕方ないが」
「……死なないでって、言わないんだ?」
「私は君が生きる決意を持ち続けても、それを放棄しても、君の意志を尊重するだけだよ。私から何かを求めることも、誘導することもない」
今までがそうであったように。これからもそうであるように。
アリスが生きようとするならばそれを支え、死のうとするならば自殺の幇助も厭わない。もし自分で死ぬ勇気は無いが、それでも死にたいというのならば、その生を私の手で終わらせてもいい。
その意志を遮ることなど決して無いだろう。もしあるとすれば、それは彼女自身が、自分の決断に迷いを持っている時だけ。
そして今、その迷いは見られない。
先程の一件で、既に覚悟が決まったのだろう。
「ただ、そうなると結婚の話は無しになるな」
「……うん、そうだね」
アリスは私の言葉を肯定した。もうそれを願っても意味などないかのように。
いつの間にか雨は止んでいた。それでも暗い曇天は、晴れ間を見せてこない。いつ再び降り出すかも分からないような状況。
この生活の終わりが見えてきたことを、僅かに残念に思う自分が居る。だがそれも一瞬のことだ。
元の生活が戻ってくるだけ。私はそれ以上アリスに話しかけることは無く、会話も無しに小屋へと帰る。
翌日。アリスは行き先を記した一枚の手紙だけを遺して、姿を消していた。
それが最後だと理解した私は、急ぐことも無く、手紙に記された場所へと向かう。
───そこにどんな結末が待っているかなど、分かりきったことなのだから。
次話は3/26の20時頃投稿します。