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水の都・ローディリウスの物語  作者: 嶺上 三元
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エルフェロールの女王キーラ 1


 キーラたちがエルフの里を治める様になって、早くも一〇〇年が経過した。

 この一〇〇年の間に大きな変化は様々にあったが、その最たるものはやはり、エルフ族の統一であろう。

 キーラたちが住むこのオーバーロードス島の森林地帯には、様々なエルフ族がそれぞれで集まり、一つの共同体を作り、それを里という形にまとめ上げていた。

 ハイ・エルフ、ダーク・エルフ、ウッド・エルフ、グラス・エルフ、そんな数多くのエルフ族の頂点に立ったのが、キーラであった。

 キーラによって治められたエルフ族は、もはや里と言う小さな単位ではなく、オーバーロードス島の森林地帯全域を治める新興国エルフェロールとして、オーバーロードス島、引いては世界に影響を与える巨大な勢力となった。

 そんな巨大勢力の長となったキーラは、全エルフ族の英雄とも言える存在であり、同時に、エルフと敵対する全ての勢力にとっての大敵であった。

 特に近年、キーラたちの最大の敵となっていたのは、オーバーロードス島の西部に存在する平原部のヒュームによる諸王国であった。


 その中でも特に、ここ十数年はメールウィン王国というエルフェロールと隣接する国が、国境侵犯を頻繁に繰り返して来た。

 その都度、小競り合いによって追い返して来たが、ここ二、三年ほどは小競り合いの規模も大きくなっており、エルフェンロールとメールウィン王国との間に一戦始まるのではないか?というのが、近頃の人々の不安の種であった。

 その不安は庶民のみならず、エルフェンロールの首脳部にも及んでおり、連日の議題には必ずその話題が含まれていた、

今日の国家議会もまた、メールウィン王国との諍いその議題の多くを占めていた。


「メールウィン王国の奴らの近頃の動向は目に余るものがあります。ここはやはり、一度戦端を開いてでも国境線を明確に示す必要がありましょうや」


「それはならぬ。メールウィン王国は近年戦力を増大させており、戦争となれば長期戦は避けられぬ。いや、下手をすればメールウィン王国だけを相手にするのみならず、背後にいる諸王国も相手にするやもしれぬ。それだけは避けねばならぬ」


 賛成も反対もどちらの意見も筋が通っているだけに、結論は中々出されることはなく、侃侃諤諤の議論は今日も平行線のまま進むだけだった。 

 そんな議会の会議を目の前にして、議長の座に着くキーラは深々と溜め息を吐くと、左手でその鮮やかな赤い髪をかき上げた。

 キーラのその様子を見た議員たちは、これ以上は彼らの主人である赤髪の女王は会議が続くことを望んでいないことを察して、そのままで黙り込んだ。


 そんな中、おずおずとした様子で、一人の議員がおずおずと言った様子で手を上げ、キーラはその議員に軽い様子で、「まだ何かあるか?」と話しかけた。

 すると、議員は如何にも緊張した様子で「はい。」と答えて、小刻みに身体を振るわせながら、手元に用意していた書類の一枚を取って話し出した。


「……これは未確認の情報にございますが、どうやら近年のメールウィンの動きの裏では、東部の諸王国の中でも最大の勢力を持つ、エルドウィンが動いているようでございます」


 そんな報告に、キーラは頭が痛そうに左手で額を押さえると、面倒くさそうに眉を顰めた。


「……東部諸王国の中でも最大の国であるエルドウィンが動いているとなると、流石に事が大きくならざるをえないな……。一先ずは書簡を送り、様子を見よう。エルドウィンにしろメールウィンにしろ、現状で使者を無碍にすることはあるまい。それと、ローディリウスへの使いも出せ」


 ローディリウスへの使い。その言葉を聞いた議員たちは、一斉に騒ついた。

 何故ならば、ローディリウスへの使いとは、人事の変更、ないしはそれに伴った組織の改変を行う際に出される使いであり、今回の件で人事を変更するという事は軍事関係の人員が入れ替わるという事を示していた。

 それはつまり、かなり大規模な範囲での軍事行動を取るという意思の表れであり、暗にキーラはメールウィンとの戦争に踏み切る覚悟を決めたという事である。

 だが、キーラは騒然とする会議場を見て頭が痛そうに額を抑えると、静まれ!と、鋭い声を上げた。


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