ローディリウスの騎士キーラ 3
そんなキーラの構えを見たガルガウェインは、それだけで彼女の武が練り上げられた強さを持っている事に気づき、ほんの僅かに今までの傲慢な笑みを僅かに潜めた。
「ほう?構えだけは、中々様になっているではないか。どうだ?今すぐにでも俺の前にひざまづけば、麾下として使ってやっても良いぞ?」
「戯れ言にこれ以上付き合うつもりはない」
「ふむ?口だけは達者なようではないか。ならば見せてやる。我がスキル、竜岩砕きをな!!」
そう言うやいなや、ガルガウェインは取り出した戦斧を両手で握ると、激しい鼻息を一つ鳴らして、全身に力を込めた。
その途端、ガルガウェインと全身からは膨大な魔力が溢れ出し、ガルガウェインの持つ戦斧を覆う様に魔力が迸った。
竜岩砕き。それは、魔物や人間が生きる為に扱う能力であるスキルの一種であり、ガルガウェインの編み出した、独自の戦闘用スキルである。
スキルの内容自体は、自身の持つ魔力の全てを手にした武具に注ぎ込み、魔力によって強化された一撃を叩き込むというものである。
本来ならば、ただそれだけのものでしかないが、エルフの里の中でも一際に高い魔力量を誇るガルガウェインがそのスキルを使えば、それは一軍を吹き飛ばすほどの威力を持つ戦術級の兵器に匹敵する破壊力を持つ。
そして、このスキルこそがガルガウェインをエルフの里の長へと押し上げた必殺のスキルである。
そのスキルを発動しようとガルガウェインが全身に漲る魔力を迸らせると、その余波を受けて背後にいた多くエルフたちが吹き飛び、思わずその恐ろしさに慌てふためいた。
そうして、自らの魔力を自身の戦斧に溜めると、ガルガウェインは高笑いを上げながら手にした戦斧を振り上げた。
「この俺は、この無敵のスキルでエルフの王になったのだ!喰らって死ぬのを誇りに思え!女あ!」
そう言うと、ガルガウェインは振り上げた戦斧をそのまま振り下ろした。
だが、そんなガルガウェインの一撃を、キーラは左手で一本で平然と受け止めて見せた。
こともなげにガルガウェインの戦斧の一撃を受け止めて見せたキーラは、涼しい顔を崩さずにそのまま戦斧の刃を握りしめると、そのままガルガウェインの戦斧を粉々にした。
その目の前の光景に、ガルガウェインのみならず、エルフの将兵たちも信じられない思いで呆然と目を剥いた。
そうして、何もできずにいるエルフの将兵たちを目の前にして、キーラ左手に辛うじて残ったガルガウェインの戦斧の欠片を投げ捨てながら鼻を鳴らした。
「……二つ質問しよう。一つ、貴様の言う無敵のスキルとやらはいつ使うのだ?」
思わずガルガウェインが何?と怒りに滲んだ声を上げるが、そんな返答に構うことも無く質問を続けた。
「二つ目の質問だ。まさかとは思うが、エルフの王とはこの程度の武力でなれるものなのか?」
キーラからの余りにも不躾な質問に、ガルガウェインの中に燃えていた激情の炎は瞬く間に怒りへと変わり、用意していた予備の戦斧を持って来させると、再びその戦斧を構えてキーラの前に立ち上がった。
そうして、ガルガウェインは構えた戦斧に魔力を込めると、自分が使える限りのスキルを発動してキーラへと斬りかかった。
しかしキーラは、ガルガウェインの繰り出すスキルの全てを左手を軽く払うだけで弾き続け、そんなキーラの前にガルガウェインはやがて力尽きると、膝から地面に崩れ落ちた。
キーラはそんなガルガウェインの戦斧を取り上げると、息を荒らげて地面に火沢つくガルガウェインを見下ろしながら、呆れた様に話しかけた。
「……どうやら、これが貴様の言う無敵のスキルの全てであるらしいな」
ガルガウェインの全力、いや、死力を尽くしたず全ての攻撃を受け切ったキーラは、ガルガウェインから取り上げた戦斧を左手に力を入れるだけで粉々に砕くと、地面に膝をついたエルフの王に無情に告げた。
「では、貴様のその無敵のスキルとやらに敬意を表して、私も一つ技を見せてやる。この技の名前を、風花乱舞という」
そう言ってキーラが右手に握った剣を振り上げた瞬間、膨大な魔力がキーラの全身から溢れて嵐となり、その嵐がキーラの構えた刀に纏わりつくのが見えた。