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「蛸」の話 プロローグ
どうしてこうなるのか。
迫るくるタイムリミットに焦る脳裏にふとよぎる。
思えば、最近は特にツイてなかった。
親が事故にあって死んじゃうし,親戚に引き取られて転校だし,転校初日の自己紹介はうまく決まらなかったし、誰も案内してくれないし。
今は屋上で鉈持った蛸の被り物した奴に追われてるし。もう、散々だ。
「kkammmdedddaa」
なんか言ってるし。怖いわ。なんなんだ。
ガシャン
背には落下防止用に人ひとり位の高さのフェンス。
夕方の屋上。ふたりきり。不思議と手足が震えてない。
「告白みてぇだな、笑えねぇ」
もしも都市伝説通りなら逃げ道はない。アレに捕まえれば終わり。迷ってる暇はない。
フェンスを乗り越え、身を乗り出す。
こうして私、神崎鏡花の人生がまた終わる。
「また?」
虚空に落ちながら感じた違和感は、風切り音にかき消された。