2-3 師匠もアオウも見てて歯痒いややっぱり俺が一番だな。敵の本丸発見編。
二話の三です!
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第二話の三
俺達は、これから別行動をとる。目的はさらわれたアルルの奪還だ。
「早く金を取り戻すんだ」
もう師匠はほっとこう。危なくても知らん。シンクロ解除してやろうか?
「そう言えば、敵には二人ボスがいるんだろ? どんなの」
「そうじゃの。名前はタヌキがポンポコ。キツネがコンコンじゃ。こいつらは人というより、大タヌキと大キツネといった感じの見た目じゃから、見たらすぐ分かるはずじゃ」
アオウの説明を聞いて理解した。のかな? まあ、デカいのをイメージすればいいんだろ?
「よし! なら行くぞ! 私の金を取り戻すんだ!」
師匠の号令で俺達は一斉にばらけた。というか、師匠とアオウが一瞬で消えた。何それ、そんな速く動けるもんなの? 俺はまだまだ力の反応が鈍いのかも。まあそんなに焦らなくていいじゃん。
という訳にはいかないよな。アルル喰われちまうかもしれないし。
俺も急ごうと思った。思ったが。目の前の景色を見て、足が止まった。俺達のいた場所は少し開けていたが、俺の行かんとする場所はまさに森の中、しかも辺りは真っ暗だ。そうだ。そうだった。
俺こういうの無理だ。駄目だ。駄目だって。真っ暗じゃん。ホラーだよ。ホラー。なにこれ? ブ〇ア・ウイッチ? ビデオカメラ持って来てねえよ。俺はお化け屋敷も駄目なんだ。お前の顔にお化けの方がビビるわってのは軽田が俺によく言っていた言葉だ。ホントに失礼な奴だぜ。
けど行かない訳にいかないしなあ。俺は恐る恐る森の中に足を踏み入れた。風に揺れる葉の音。謎の鳥の声、羽音、足元の踏んだ枝が折れる音。全てが不気味だった。
「ちくしょう。怖え」
それでもゆっくりだが進んでいった。だが、進めど進めど前は森だ。何も見つかりやしない。
俺の動きが遅いからかなあ?5秒で1メートルくらいだから。
そういえば。あの二人はどうなってんだろ? 俺なんかより早くすっ飛んで行ったから、今頃もしかしたらもう解決してるかも?
目をつむるんだったな? とりあえず俺は目を閉じた。意識を集中すると自分の力のありかを感じることができた。
とりあえず片方に意識を向ける。こっちは……師匠だな。目の前には、何と敵がいるじゃないか。へえ、獣人ってこんなのか。初めて見た。皆、耳が上に生えてら。ヒゲも生えてるし、尻尾もあるのかな?
なんか皆、忍び装束みたいなの着てる。そういやアオウが忍者とか言ってたっけ?
「やれやれ。わざわざそっちから出向いてくれるとは」
師匠はやる気満々って感じだ。
敵方のタヌキとキツネは何か話し合っているようだ。
「どうする?」
「強そうだね」
「そうだね」
「じゃあ、どうしようか?」
その様子に、師匠は痺れを切らしたようだった。
「どうした? こないならこっちから行くぞ」
師匠がかかっていくと、俺は思った。だが、不思議な事が起こった。師匠はその場で高笑いを始めたのだ。何だ? この女。気でも触れたのか?
「そうか懸命じゃないか。戦わずに、財宝を差し出すとは。それがいい。私も不要な暴力は好まんからな」
こいつ何言ってんだ? と思ったが、俺はふと思った。これはもしや、また幻覚に掛けられているのでは?
「おお、これは高そうだ。こっちも素晴らしいぞ」
うん。どうも間違いないや。しゃがんで、何もないところから空気を持ち上げては喜んでいる。駄目だこりゃ。自意識過剰な人間は掛かり易いのかね?
そうこうしている間に、タヌキとキツネが近付いて来た。
「馬鹿だね」
「うん。馬鹿だ」
「大馬鹿だよ」
連中はそのまま師匠の周りを、輪になって踊り出した。何か、盆踊りみたいだ。掛け声で音頭を取りながら踊っている。
まあ、何か平和そうなんで俺は見るのを止めた。今度はアオウの方を見てみよう。
アオウの方は……こりゃまた極端だ。凄い数の敵に囲まれているじゃないか。ざっと見ても三十人以上はいるぞ。師匠の方は6人しかいなかったのに。
「なんか。すぐに見つかったのう。お主らまさか、最初から見張っておったか?」
アオウの言葉に、敵がざわつく。
「よく気が付いたな。その通りだ。長達の食事を邪魔されては困るんだ」
「食事か? あの娘を鍋にするのか? 全く悪趣味じゃの。主らの食事は。人など食って、何が旨い」
「何とでも言え。邪魔をされると、我々が困るのだ」
「そうか。でも、あの娘を殺されるとわらわ達も困るのじゃ。主らの言う通りにはできんのう」
アオウの言葉に、敵は臨戦態勢に入る。何で、幻覚を掛けないんだろうと思ったが、どうやらそれは敵はとっくにやっているらしい。
「ギン様。あやつ、幻覚が効きませんな」
「ああ、心してかかれ。奴はあの姿だが人間ではない」
その言葉にアオウは強く反応した。
「どうしてお前それに気が付いた? わらわの変身は完璧なはずじゃ」
敵は皆笑っていた。
「完璧だな」
「確かに」
馬鹿にした感じで笑っている。まあ、俺はその理由には大体想像がつく。寝ぼけて角が出てたから。こいつらもそれを見たんだろう。
「何か知っているのか? 話せ」
「断る」
「お前、自分の状況分からないのか?」
「死ぬんだよ。お前は私達のご飯」
敵は皆にやにや笑っていた。
「そうか。お主ら、わらわを殺して喰うつもりなのか?」
「その通りだ。人間じゃなくて残念だが我慢してやる」
敵の何人かが変な踊りを始めた。師匠のとこと一緒じゃん。
「食い物が手に入って喜びが抑えられんようだ」
そうなんだ。師匠もじゃあワンチャン喰われるね。
「無駄話は終わりだ。そろそろ死ね」
「そうか。わらわを喰うか。だがそれは……」
アオウは例の変身をした。相変わらず工程のわりに速い。
「それはわらわをアオウと知ってのことかの?」
「まさか……貴様、架け橋のアオウか!?」
敵は動揺しているのが分かった。というか一瞬にして戦意を喪失して動揺しているみたいだ。こっちも特に問題ないね、師匠も大丈夫だし。うん。大丈夫。
アオウが敵をボコボコに蹴散らすのを少しだけ見学して、俺は目を開けた。二人とも動きはあったみたいだけど、どっちも本丸には当たってないみたいだ。じゃあ、やっぱり俺が急がないといけないみたいだな。
俺は怖いけど進んだ。さっきよりは少しだけ早く、確実に一歩一歩進んだ。誰が見ても速く行けと言われるやつだ。
進んで行くと、少しずつ何かが聞こえてきた。祭りばやしみたいだ。笛や鐘の音もしてなんかにぎやかだぞ。心なしか明るくもなってきた気がする。そんなことを思っていると突然前が開けた。目の前の平地の向こうに大きな洞穴が見える。音もそこから聞こえるな。
「どうやら、あそこが本丸っぽいな」
正直不安で胸いっぱいだけど。行くしかあるまい。
アルルと、一応師匠の金も取り戻すために。
四に続く。
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次話は一日後には上げたいかなと思っています!
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