1-3 負けないで師匠! 師匠が死んだら誰が村を守るの!? 第3回師匠死す?
3回目です。
いつも少し長いので、読みやすさも考慮してもう少し短く割くことにしました。
これからも、読みやすいように書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
第一話の三
俺は走っていた。村を襲う脅威に向かって。
「どこだ! そのオーガは!」
「村の広場にいると思います! そこでギルドの皆が!」
なんか、師匠はやる気十分だった。任しといてもいいんじゃないの? これ。
俺、まだいまいち自分の力分からないし。
そんなことを考えているうちに広場に着いた。そこはまさに惨状だった。
「酷い」
「ギルドの連中は全滅だな」
辺り一面に、多くの死体が転がっていた。酷過ぎる。とんでもない光景だ。こんなの映画でも見たことねえよ。俺は吐き気を押えられなかった。何も食っていないから、ただ胃液だけが口から流れ出した。
「モテム様! 大丈夫ですか?」
「全く。情けないな」
俺は苦しい中、広場中央に敵の姿を見た。
あの緑色の一回り、いや、二回りはデカいぞ。何だよ? あれは。真っ青だ。
「モテム。いけるか?」
え? マジ? やっぱ、俺? 今は無理無理。吐き気もやばいし。あんなのデカいし。
俺が首を横に振ると、師匠はなんか呆れたといった表情だった。
「まあ、いきなりこの光景は仕方ないか。でも、これはこの世界では日常だぞ。慣れていけよ。ふん。今回は私がいこう」
「リリーナ様!」
「大丈夫だ。アルル。あれくらい私一人で充分だ」
えらく自信たっぷりに、師匠は青色の方に向かっていった。
「おい。そこの青いの」
師匠の失礼極まりない呼びかけに、青色が気付き振り向く。
「俺のことか?」
「お前以外に青いのがいるか?」
青いのは笑っていた。
「失礼極まりないが実に旨そうな女だな」
手にした機関銃の銃口を師匠に向ける。緑色のやつよりまだなおデカい。冷蔵庫でも大型だな。ありゃ。
「お前は多少楽しませてくれるのか?」
「勿論」
師匠が両手を青色に向けると、青色はまるで紙のように軽々と宙に舞い、少し離れた民家に落下した。強いじゃんか、この人。
「大したことないな。青いの。まさか、それで終わりか?」
青色はゆっくりと立ち上がった。それほどダメージはなさそうだ。
「……アボーはな、このアオウにとっては友達だったんだ。たった一人のな」
「そうか。それがどうした? お前達もこっちの仲間を多く殺したんだろ?」
師匠が大胆に間を詰めていく。俺達もゆっくり近づく。
「アオウって、どこかで聞いたような……」
俺の横でアルルがそう呟いた。何か、不安そうな表情だ。
「私、ギルドで調べてきます!」
「えっ? あっ! ちょ!?」
アルルは一目散に走って行った。こんなとこに一人にしないでくれよ。
そんなことことしてる間に、師匠は青色の目の前だ。
「俺は強すぎて同族からも避けられて。同じはみ出し者のアボーはいい友達だったんだ」
「そうか。それは悲しいな。じゃあ、今からお前より強い私が友達のところに送ってやるよ」
その師匠の言葉に、青色は高らかに笑った。
「お前じゃ無理だ。アボーは倒したかも知れんがな」
「はあ? 何を血迷い事を。私に勝てるってのかい?」
「ああ、このままじゃ無理だがな」
青色はそう言ったと思うと、突然全身から青い液体を撒き散らしみるみるうちにしぼんで、そして、跡形も無くなっちまった。残ったのは青い液体だけ。
世にもおぞましい光景だったが、師匠はあくまで冷静だった。さっきまでと体勢すら変化ない。青色の液体を浴びて真っ青にはなっているが。
「勝てんと踏んで自害したか?」
師匠はこちらを向き直った。
「全くつまらんな」
「リリーナ様!」
どこか行ってたアルルが走り帰ってきて叫んだ。酷く動揺した顔だ。
「逃げて下さい!」
これには師匠も不思議そうな顔を見せた。
「逃げるも何も、もう終わったぞ?」
「まだです! アオウはオーガの突然変異種! こいつは……」
突然、突風が吹いたと思うと、あの青い液体が宙に舞い上がり、人型を形成した。
「変身します!」
それは本当に一瞬だった。アルルが言い終わる頃には全てが完了していた。
青色はえらく縮んじまった。さっきは4メートル以上ありそうだったのに、今は1メートル40そこそこだろう。見た目も、色と、頭にある対のデカい角、ところどころにある突起以外、人間そっくりだ。
何より驚いたのは、顔立ち、身体付き、どうみても少女ってところだ。
あいつ女だったのか?
師匠はとっさに、両手を青色に向けた。それに対し、青色も片手を前に出す。
「こいつ、エスパー!?」
二人の間に目に見える……これが超能力なのか? 衝撃波が走ったが、青色は微動だにせず、師匠だけが、後ろに向かって吹き飛ばされた。
即座に体勢を立て直したが、流石にその表情にも焦りの色がうかがえた。
「アルル! こいつのクラスは!」
「キングです! リリーナ様!」
師匠がにやりと笑った。
「やれやれ初めてだな。キングにお目にかかるのは」
師匠はまだやる気のようだったが、さっきのように間を詰めたりはしなかった。緊張感が辺りを包んでいた。
「あのさ。クラスとかキングって何?」
「ギルドが纏めている危険分子の危険度です。下からコモン、ジャック、クイーン、キング、ジョーカーとあります」
「で、あいつはキング? 上から二番目?」
「はい。でも歴史上、単体がジョーカーに指定された事は一度もありません」
「つまり、あの青いのは最強クラス?」
「はい。アボーでも単体ではジャックです」
やっべえじゃん。ダメだ。また吐き気が……。
突如、大きな衝撃音が響きわたる。民家が倒壊していく。
「リリーナ様!」
あ、ホントだ。師匠いねえじゃん。あれ? もしかして負けた?
青色が俺達の方を向く。何かニヤけてる。ヤバい。でもこっちのギルドのA級さんは……また腰を抜かしてる。……こいつは。
つまり、俺が行くしかないわけだ。しょうがないよな。しょうがない! 俺は自分を奮い立たせた!
そうだ。俺は師匠より強いって、師匠も言ってたじゃないか。力の使い方は分からねえけどさ!
俺は前に出た。一歩ずつ、青色に近づく。
「次はお前か?」
目の前まで来た俺に、青色がそう聞いてきた。俺は軽くうなずく。
「なら……」
「あああ! ちょっと待て!」
「何だ?」
何だじゃねえよ。気が早すぎるだろ。このバカちんが。
「話し合おう!」
俺のとっさに出た言葉がそれだった。
「話?」
「そうだ。戦ってお互い傷ついても虚しいだけだ。ここは話し合って解決しよう!」
青色は高らかに笑った。
「お前もエスパーらしいな」
何で分かるの? 怖いわ。この子。
「冥途の土産に私の一番得意な超能力を教えてやろう」
そう言った青色の体の周りを、何かが渦巻き、取り巻いた気がした。
「肉体強化だ」
俺は突然殴られた。それも顔面を右ストレートで。めちゃくちゃ痛いじゃねえか!
ホント……怖いわ! この子!
四に続く
ありがとうございました!
続きは1日か、2日後には上げたいです!
引き続きよろしくお願いします!