表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

第3話

「まず、これを身に着けてください。資源採掘船(プラットフォーム)は多くのブロックに分かれおり、行き来するのに必要になります」


 渡されたのはIDタグ。VISITOR(来客)とある。


「これって通過時に記録されるの?」

「はい。ゲート通過時に記録されます。ID無しで通過を試みた場合は管理室(コントロールセンター)にアラームが出ます」

「なるほど。とりあえずブリトニーが行方不明となった場所を確認させてもらえるか?」

「わかりました。こちらです」


 ミランダが床を蹴り飛び上がり、アランも続き、俺も飛ぶ。無重力の中、流されるように移動する。

 そこは居住ブロックにある通路だった。ミランダの端末でセキュリティカメラ映像を確認する。


「再生します」


 映像右下のタイムスタンプによると四日。再生されて数秒後、画面奥から一人の女性が現れた。ウェーブのかかった黒い長髪。資料で見たブリトニーに間違いない。彼女はトートバッグを抱え画面手前の部屋に入っていく。少し早送りされて五分後、別の女性が入室。さらに30分後、後から来た女性が退室し、映像は停止された。


「後から入室した時にはすでにブリトニーの姿はなかったそうです」

「室内にカメラはないの?」


 ブリトニーが入っていったドアを叩きながらアランが問いかける。

 おい、その質問は駄目だ。


「中はシャワーエリアです。あるわけがないでしょう」


 クックック。二人目退室時の姿を見れば聞くまでもないだろう。あれはどう見ても風呂上りだ……おい、やめろ。そんな目で俺を見ても助けてはやれない。……わかった。


「えー、ミランダ、中を見てもいいだろうか?」

「構いません」


 シャワーエリアは水を扱うだけあって二枚のドアで阻まれていた。無重力化の水は恐ろしい。どこにでも入り込む。隙間なんてあったら大事だ。つまり人の出入りはこのドア以外にありえない。


「完全な密室じゃないか」


 アランは目を輝かしているが、もともと宇宙船という密室だ。全長二キロの密室が一室に変わっただけ。

「ミランダ、ブリトニーが所属していた研究開発部責任者の話を伺いたいが、許可してもらえるだろうか?」

「確認してきます。少々お待ちください」


 ミランダが離れた途端にアランがくっついてきた。


「でもどうするのさ、これじゃあ手掛かりなしだ」

「そうでもない。得られるものはあった。なんだその顔は? 少しは自分で考える癖をつけろ」

「んー殺されてバラバラにされて流された?」

「馬鹿か。どうやって五分でそれができる。恐らく、これは狂言だ」

「どういうことだい?」


 簡単な話だ。シャワーエリアの密室。セキュリティカメラの映像、IDタグによるゲート管理、そこまで厳重な環境で人を消すなんて不可能だ。協力者がいない限りは。

 わからないのは思惑。俺たちが呼ばれた理由は? 何のために行方不明を装った? わからない事だらけだ。


「理解はできたけど、どうするのさ?」

「情報を集めるしかないだろう。ほら、戻って来たぞ」

「お待たせしました。研究開発部長セルゲイ・マイスキーが協力します。ブリーフィングルームに向かいましょう」


 先行する二人を追う。何か掴めればいいが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ