第17話 はじめての〇〇
今回、長くなりました
あれから9ヶ月と数週間たった。
トアの補助のおかげなのか赤ちゃん…俺の体はスクスクと育っている。
性別もわかった。男だった!良かったーー
『私はマスターがかわいい女の子になってもいいと思います』
トアともだいぶ打ち解けた。
(いやいやいや、マジでそれだけは無い、体を失っただけでなく、〝息子〟まで無くなって女になったら一生独身だな)
『マスターには可愛い、というものがなかったです、なので私は可愛い、を求めます』
(いやいや、30歳のムキムキ男性を捕まえて何が可愛いだ、それにこの赤ちゃんも男なので将来はムキムキだな!)
『反対です、この体は可愛い、を鍛えて男の娘にしましょう』
(トア、そんなことをどこでってインターネットを完全記憶で全て読み取ったんだもんな知ってて当然か、後、そんなものにはならん)
『マスターはケチです』
父親と母親の遺伝子情報が例え母親が多くても男なのだからそんなに可愛くわならないだろうと和人は安心している。
(それにしてもその体、筋肉の形はいいんだろうな)
『前世の筋肉よりいい形してますよ』
(ちょっと待て、今なんて言った)
『だ・か・ら、前世よりも…』
(俺の鍛え上げた筋肉をバカにするな)
『マスターが何故そこまで怒こっているのか理解し難いですね、私はマスターの質問に答えるため、比較対象を出してわかりやすく説明しただけですが』
(前世の体は出すな、あの体は限りなく完成形に近づいていたんだぞ)
『それはマスターの思い上がりですね』
(なんだと)
『私が最適な補助をしていればもっと完成形というものに近づいていたでしょう、そして、どうやらマスターはポージングの中でもアブドミナルアンドサイが一番自身に合っていると思っているようですが、実はサイドチェスト がマスターの前の体には合っていたんですよ』
(なんだってーーーーーーーーーーーーー)
『マスターは何も知らないようですね、自分の体なのに』
(…)
何も言えない和人。
トアとの勝負で和人は黒星しか取ったことがない。
トアがこんなに変わったのは割合をいじったからである割合は機械を20パーセントで娘を80パーセントである。
どうやら娘の割合をあげると感情も豊かになるようだ、対して機械の割合をあげると棒読みになって聞き取りずらかった。
だから、娘の方を100パーセントにしようとしたのだが、ある程度機械の方も必要みたいなので、今のこの形に落ち着いた。
だが、感情が豊かになったお陰で話しなどでいつも和人は負け続けている。
『マスター、明日か明後日には生まれますよ』
(やっとか、この生活もあとちょっとで終わるんだな)
この生活は最悪だった。
体を動かしたいのに体が無いのでムカムカして、ストレスでおかしくなるのではないかと思うぐらいだ。
しかし、トアによってストレスを感じたその瞬間、神速の速さでどこかへ行ってしまうのだ。
多分、エネルギー保存庫にでも行っているのだろう。
そう、エネルギー保存庫である!
今いるこの場所には大量の魔力があり、その魔力をこの9ヶ月と数週間ずっと収容し続けていたのである。
エネルギー保存庫は収容量が無限なのでいくら収容してもいいのだが、この場所の魔力が減った気がしないのだ。
トアも上機嫌である。
トアはエネルギー保存庫からエネルギーを取り出して活動している。
なのでいくら合ってもいいのだ。
まぁ、トアが活動するのに必要なエネルギーは俺の感情なんかをエネルギーに変換するくらいで足りるようだ。
少なすぎだろって思うだろうがこれもエネルギーの変換効率が上がったため、保管庫に収容する時には結構な量になるらしい。
『たしかにこの生活に飽き飽きしていることも理解しています、ですがそれもあと少しですし、今日からテンションを上げて行きましょう♪』
(はいはい)
『あー、私のような可愛い美少女の提案をそのようにあしらう、そのような態度しか取れないから、マスターはモテないんですよ』
(う、うるさいぞ!それにトアが美少女?面白い冗談だな)
『マスター、ひどいです!』
(だいたい、トアは体が無いんだから美少女な訳ないだろ、あっ!でも声だけはいいと思う)
『お褒め頂き嬉しゅうございます、ではマスターに私のお顔とお身体を見せてあげてもよろしくてよ』
(いきなりどうした)
『完全記憶の中にあったものを採用しました、ですが、顔と体は本当にあるんですよ』
(どうやって見せるんだ)
その瞬間である、今まで何も見えなかった真っ白な場所に突如スクリーンが現れた。
『いかがですか、マスター!この完成された美の結晶!多くの男性が二度見いや三度見てしまうであろうこのパーフェクトボディは』
俺は驚いて固まってしまう。
たしかにトアはどこからどう見ても美少女だ。
だがそんな事はどうでもいい。
なぜなら俺の前には〝スクリーン〟があるからだ。
この9ヶ月と数週間、ずっと何もない真っ白な場所にいた。
しかしだ、このスクリーンを使えばトアの完全記憶からズルだが映画やANIMEを見ることができたのではないだろうか?
それなのにボケ〜っとしながら永遠にトアと話し続けていた。
怒りが湧いてきた。
あっ!すぐにエネルギー保存庫にもってかれた!
クソ!あっ!また。
はぁー。
(トア、これどうやったんだ)
『はい、この体は私が作り出した自信作です、これからずっとこれで行こうかなって思ってます』
(違う、このスクリーンだよ)
『このスクリーンは今現在もこの魂核は空間支配の範囲内ですのでこのくらいのことは余裕で、できます』
(だったら早くやってくれよ、そしたらトアの完全記憶からいろんな映画やアニメを映し出して二人で見る事だってできただろうに)
『そうですね、申し訳ありません』
(いや、謝らなくていいよ、それに可愛かったよ、トア)
『ありがとうございます♪、いやーこの体を作るために何体作ったかわかりますか』
(何体だよ)
『∞です』
(は?いやいや多いとか通り越してんじゃん、∞ってそんなに頑張ってたのかよ)
『はい、マスターに可愛いと言ってもらいたくて1秒間頑張りました』
(早すぎだろ!)
『そこは能力を使いましたから』
(能力を使わなくてもトアはすごいから使ったらチートだな)
『当然です、マスターも責めて能力を使ってない時の私くらいにはなってもらわないとダメですよ』
(それでも難易度が高いな)
そのレベルまで行くのも和人では難しい。
だが、トアがいるのでいずれそのレベルまでたどり着くだろう。
次の日
(お!)
『どうされましたか、マスター』
(トアが昨日言ってたじゃないか、明日か明後日に生まれるって、だから1日経ったから今日、転生してもおかしくないだろ)
『はい、確かにマスターに言いましたが何事にも誤差というものがあります』
(いやいや、トアがミスることなんて滅多に…というかないだろ)
『いえ、私だってミスをすることはありますし、出産とは赤ちゃんだけの事情で成り立っているわけではないので誤差が発生する可能性は充分にあります』
トアによると赤ちゃんは健康そのもの、なんの問題もないがもし母親の方に何かがあれば転生すらできないかもって冗談も言われた。ハハハハハここまできてまさかの門内で終了とかありえない。
(転生か…実感がわかない)
『実感がわかないマスターのためにいい情報を教えましょう』
(何を教えてくれるんだ)
『転生先です』
(な!それマジ)
『はい、この心核は今赤ちゃんと繋がっていますそしてその赤ちゃんは母親と繋がっています、そこから情報を入手しました』
(素晴らしい!流石です!トア様)
『それでは発表します』
(早く教えてくれ)
『10、9、8、7、…』
(早くしてよ)
『6、5ってマスター邪魔しないでください、このカウントは必要なものなのです』
(う、うん)
『4、3、2、1、おめでとうございます!マスターは、な、な、なんと貴族に転生します』
(は、なんだそれ)
『貴族ですよ、マスターは偉い人になっちゃいます』
(嫌だ)
『嫌だと言われましても』
(他の転生先はないのか)
『ありますですがそちらは平民ですよ』
(平民でいいじゃないか!貴族だと堅苦しそうだし、自由がなさそうだろ)
和人の中では貴族とは義務などによって自由に生活すらできない者達だと記憶されていた。
それに対して平民なら地球の時のように鍛えることができて、義務もないので自由、最高だ!
『今現在この心核には2つののへその緒が付いています』
(1つは貴族、もう1つが平民ってことか)
『はい、確かにマスターの言う通りで貴族に転生した場合い、マスターがやりたいと思っている冒険などにいく自由はないかもしれません』
(だろ、だったら俺は平民でいいよ)
『ですが、鍛えるというのでしたら貴族のほうがいいでしょう、整った環境などが約束されてますから』
(確かに)
『それにマスターは勘違いをしています、平民は自由なんて思っているみたいですがむしろ貴族が自由で平民は自由なんてものはあまりありません』
(なんでだ)
『貴族は裕福です、ですので子供は働かずに英才教育を受け優秀になり国のためにより良い職に付き、いい暮らしができます、しかし平民は若いうちから働きます、そうしなければ暮して行けないからです』
(…)
和人の考えはとても甘い考えだ。
平民だから自由、貴族だから自由じゃない。
逆である。
平民だから自由じゃない、貴族だから自由。
これが和人がいく異世界の現状だ。
『わかりましたか、だから私はマスターには貴族をおススメするのです』
(理由はわかったでも働くくらい俺はいいと思っている)
『マスターならそういうと思いました、ですが貴族と平民ここまでの差があるのには理由があります』
『マスター行く異世界には魔力があります、その魔力は異世界の人々は皆持っているそうです、ですが量が違います』
(量ってそんなに重要なのか)
『この2つを比べた結果、貴族達は圧倒的に量が多いです、私は分析・解析で完全記憶からゲームのステータスというものを採用してまとめてみました、それを見てもらえればわかるでしょう』
そい言ったあと、スクリーンに情報が映し出された。
魔力量は皆、平均20歳を超えると増えにくくなる。
このステータスはそれぞれの階級の0歳から20歳までに魔力量がどれくらい増えるのかを表示されている。
しかし、いくら魔力量を増やす修練をするにしてもだいたい5歳くらいからなので本来の平均はもう少し低い。
王族・貴族・豪商
王族
魔力量 800000
伸び代 1ヶ月間で平均3000
公爵
魔力量 700000
伸び代 1ヶ月間で平均2900
侯爵・辺境伯
魔力量 600000
伸び代 1ヶ月間で平均2500
伯爵
魔力量 500000
伸び代 1ヶ月間で平均2000
子爵
魔力量 400000
伸び代 1ヶ月間で平均1700
男爵
魔力量 300000
伸び代 1ヶ月間で平均1300
豪商
魔力量 50000〜150000
伸び代 1ヶ月間の平均200〜600
説明、豪商たちは魔力量と伸び代、共にバラバラなので成功している人は皆、魔力量は平民以上貴族以下くらい無くてはやっていけない。
そして
平民
魔力量 12000
伸び代 1ヶ月間の平均50
『個人差はあれどだいたいこのようになっています、理解しましたかマスター、これだけの差があるのです』
(確かにここで平民を選ぶのは…)
『昔の記憶を見る限りマスターは魔法が使いたいのではないのですか、でしたら貴族に転生した方がいいでしょう』
『それに貴族の家と平民の家でのお腹の中にいる赤ちゃんに対するお世話に使用する魔法での性能にも差があります、似たような魔法なのですが魔法陣の情報量が明らかに違います』
(なんで魔法陣の情報量が違うんだ)
『この世界では皆、量は違えど魔力を所有しているのでしょう、そのため誰もが魔法を使えます、しかし魔法を作ることはとても難しいようです、ですので貴族などは一族だけで開発、それを秘匿、そうして貴族と平民の力の差をより大きくして反乱などを抑えているのでしょう』
(そうなんだ)
『…マスターはなにをそんなに悩んでいるのですか』
(確かこうやってみたらよくわかった、でも平民でも俺なら…)
『マスターの考えは甘いです、マスターは前世で随分と楽をしていました』
(そんなことはない!)
『はっきり申しますがマスターは前世の30年間、自己中心的行動が目立ちます』
(…)
『生まれてから15年間は両親に甘やかされたため勉強などは最低限、趣味などに時間を割いてます、それから5年間は酷いです!ある程度バイトをしていたのは素晴らしいですがそれ以外がダメです、マスターの友達などは努力しているのにマスターは家の中でずっと遊んでいただけ』
(…)
『そして、そこから10年間、都合のいい時だけお手伝いさせてもらい、お手伝いなのにお金をもらったり、ある程度のお金があるのにジムに無料でずっと通ったり、とても自己中心的行動です、さらに最後の家族となんて言っていた大切なお爺様に食事、洗濯、買い物などを任せて、結局お爺様が動けなくなる約9年間ずっと楽をしていただけのマスターが平民としてやっていけるとは私は思えません!』
(うるさい!黙れ!所詮、お前はどこまで行っても補助しか出来ないんだから、ただ俺の言いなりになっていればいいんだよ!)
この日、俺とトアは初めて喧嘩をした。
よろしくお願いします