第16話 門内での移動
和人くんなんの迷いも感じることなく、門に飛び込みます。
第16話
和人は神様に異世界への門を開いてもらい、入っていった。
門を潜るとそこは全てが七色に輝いたトンネル状の一本道で先が全く見えない場所だ。
この道では足がつかず空中で吸い込まれるようにどんどんと進んで行く。
(うわぁーーーーーーーーーーーーーーー)
突然のことに驚いている和人をさらに驚かす現象が起きた。
突如和人の体が歪んだ。
やがて歪みは増して体が溶け、持っていた荷物などは消えれてしまった。
(なんだ、うわぁーーーーーーーーーーーーーー嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ)
体が溶けてしまった。
(は!)
和人はしばらく気絶していた。
目が覚めた和人だが、なにも見えないし、なにも感じない。
先ほどまであった浮遊感もない。
当たり前だ体がないのだから。
何も見えない、真っ白な世界。
(な、な、な、なんだこりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー)
パニックになる和人、しかし和人を落ち着かせようとする存在がいる。
『マスター、マスター、しっかりしてください』
(え?え?トア?)
『はい、トアです』
(良かった!トアは無事だったんだな!)
『はい、マスターが無事なのは私が空間支配を使い、私がいる場所、マスターの魂核を守ったからです』
どうやら、トアは俺の中の魂核という所にいつもいるみたいだ。
(というかトア俺の身になにが起こったんだ)
『マスターが門の中に入った後、マスターの体が溶け出して消滅しました』
(体って、溶けたって、なんだよそれ、なんでそうなったんだ)
『マスターが気絶してからもこの魂核は進み続けています、それでわかったことなのですが…』
トアによると地球から異世界へ近づいて行くうちに謎のエネルギーがどんどん濃くなっていったとのこと。
濃度が上がっていくその謎のエネルギーに対して俺の体はどんどん溶けていったそうだ。
危険を感じ空間支配を使用、なんとか魂核を守ることに成功。
原因がこのエネルギーだと理解し、エネルギー保存庫を使用、エネルギーを変換せづそのまま収容、そして保存庫内に新たな部屋を作りその部屋に謎のエネルギーを入れて隔離してから分析・解析、思考加速、並列演算、完全記憶を使用した。
数多ある答えの中から導き出された結果。
この謎のエネルギーこそ地球に無くて異世界にある物。
〝魔力〟
ではないかと言う。
地球に無くて異世界にはある。
この言葉の通りで俺の体は地球の物だ、なので〝魔力〟に耐性が無いためあのような形で消滅したとのこと。
今、こうして生きている?のはエネルギー保存庫に魔力を収容して分析・解析で調べ上げ、耐性を獲得することができたそうだ。
(助けてくれてありがとな、トア)
『いえ、私がマスターを助けるのは当然です』
(しかし、今の説明で納得はしたのだが)
俺は今ものすっごい喪失感に襲われる。
10年間ずっと磨き続けた体が無くなってしまった。
これは予想外である。
いくら異世界に行けたとしても体がなかったら、今の半径5センチの玉(魂核)で過ごさなければならなくなる。
嫌だよーーーー。
『マスター、もう一つ報告することがあります』
(まさか!まだ何かあるのか?これ以上俺から奪わないでくれ)
『いえ、奪われることはありません、むしろ今、体が無いこの状態にとっては朗報かと』
(朗報!なになに)
『はい、外部からまた新たな何かが接触してきました』
(うっ、何か、でも朗報だから大丈夫だな)
『はい、大丈夫です、どうやら〝へその緒〟に限りなく近い物かと』
(へその緒?)
『そのへその緒を通して知ったことなのですが母親の中にある受精卵とこの魂核が繋がっているようです』
(受精卵?そのへその緒みたいなのが)
『はい、繋がっていることは間違いないかと、こうして情報も入手できましたので』
(それって、その受精卵が赤ちゃんになってその体が俺の新たな体になるってこと?)
『はい、私がこのへその緒を通して補助するので安心してください』
(トアがやるんだから何も不安はないんだけどさ)
30年間あの体だったのに、しかも最期の10年は
磨き上げて筋肉の形とかも良かったのに…
また、一からやり直しかよ。
それに…
(なぁ、トア)
『なんでしょうか』
(その受精卵が赤ちゃんになるまでずっとこのままなのか)
『はい』
(ああああああああああああああああたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああう!)
この10年間いつも必死で鍛えて、働き、睡眠もしっかりとる。
充実した日々を過ごしてきた。
だから、こんな何もできない状況が約10ヶ月も続くとわかり思わず叫ぶ。
『マスター、落ち着いてください』
(うるさくしてごめん)
『…マスターに提案があります』
(珍しいなトアからなにかを頼まれるのは図書館以来だな)
『はい、私が使用している能力共有を解除し、精神支配無効が解除されるので私がマスターに精神支配を使用、赤ちゃんが誕生する直前に解除すれば一瞬ですよ』
(おー!そんな使い方もあるのか、でもそれはしないよ)
『なぜでしょうか』
(トアだけが辛いじゃん、そんなのダメだよそれにトアの名前の意味を思い出せ)
『〝共に歩む〟ですね』
(そうだ!異世界に行く前に俺たちの仲をもっと深めようぜ)
『はい』
こうして和人は異世界へ転移ではなく転生で行くこととなった。
和人くんは転移ではなく転生することになります。