プロローグ
コメント頂いていた、段落部分と三点リーダーの件、修正致しました。
確かにこちらの方が、読みやすいですね!
ありがとうございます!
俺の名前は〈佐藤 二郎〉(さとう じろう)。現在は引きこもり高校生をやっている。
原因は…後述しよう。
事の発端は、中学生1年生。俺は自分から何かをするわけではなかったし、地味な学生生活を過ごし、家に帰って勉強とゲームでもして暮らしていけばいいや、とかを考えている学生だった。
小学生の頃は、人並みに友達とゲームをしたり外で遊んだりもしたし、サッカーも少しやっていたが中学受験をきっかけに全く、付き合いは無くなった。
俺が受けたのは私立の中高付属の学校だった。
頭はそれなりに良かったし、高校受験がない分、ゲームに没頭できるってわけだ。特に夢とかはない。
しいて言うなら、まったりと暮らしたい、それだけだった。
そんな俺にも好きな人はいる。
「山口 咲」ちゃんだ。
小学校からの幼馴染で、家も徒歩3分くらいのご近所さんだ。
咲ちゃんは、いつも笑顔で俺に話しかけてくれる。
友達がいない今となっては、唯一の友達であり好きな人だ。
将来、この関係が続いていれば、ムフフな関係だって夢じゃないはずだ。なぁーんて妄想で胸がいっぱいだ。
さて、本題に戻ろう。
もう一度言うが、俺は自分から何かをやろうといった人間ではない。だから中学の入学式から、話しかけてきた奴なんて殆どいなかった。居たとしても、軽くあしらって終わりだ。俺は連日のゲームで寝不足気味なのだ。だから大抵の奴は、暴言を吐いて俺のもとから去っていく。俺のせいだから何の言うまい。
ただ咲ちゃんは違った。毎朝俺に話しかけてくるし、どんな対応をとっても友達でいてくれた、優しい、天使みたいだ。
俺が変わればいいのは分かっている、だけどゲームって面白いんだもの。
そんな日々が過ぎ去る中で、大事件が起きた。いや俺の中では大事件だった。
「気持ち悪い、地味な奴のどこがいいんだよっ!」
中学1年の夏の昼休み、そんな声が廊下から聞こえてきた。
言っていた奴は、この学年の権力者「後藤 まさき」。
言われていたのは…咲ちゃんだった。
俺のことだと悟った。
(俺のせいで……咲ちゃんが……責められてる!?)
そう思った瞬間、今まで何を言われても全く動じなかった筈の何かが俺の中で爆発した。
気が付いた瞬間、俺は全力疾走で走り、そのまま「後藤」に体当たりをしていた。
「はぁ……はぁ……やめろったらやめろっ、咲ちゃんを虐めるなっ!!」
声は震え、足はガクガク、ついでに太っていた俺は席から廊下まで走っただけで息が上がっていた。
それに止め方も……。
我ながらダサすぎる。ゲームだったらモブ中のモブ。キング・オブ・モブの称号が貰える程のダサさであった。
でも反省するのは今じゃない。
咲ちゃんの心配が先だ。
俺は振り返り、咲ちゃんに声をかけた。大丈夫?と。
咲ちゃんは泣きそうな顔になりながらこちらを見返している。
俺の胸で泣きな。どこかの映画で見たような、そんなキザなセリフを吐こうと考え、気を改める。
俺が言ったら引かれるだけだ。ただ、この後どんな声をかけるかが非常に重要である筈だ。
助けてくれてありがとう、あなたに惚れたわ。なんてことがあり得るからだ。
さあ、大事だぞ~。
―――パシンッ
乾いた音が、廊下で鳴り響いた。
発生地は俺の左頬。俺は殴られていた。なんで?
俺は夢が覚めたように咲ちゃんを見返した。
咲ちゃんの目は怒っていた。
原因がわからないまま、咲ちゃんは泣きながら他の女子に囲まれて廊下を走り去っていった。
そんな姿を俺は見えなくなるまで唖然としながら見ていた。
嫌われた?なんで?
その後「後藤」率いる、いじめっ子集団にボコボコにされた。
でもそんなこと気にならなかった。
咲ちゃんは、今何を思っているのだろう……そして何を考えているのだろう。
そんな歌詞の様なセリフが頭の中にずっと流れていた。
◆
次の日学校に行くと席はなかった。
いじめっ子代表の「後藤」がニマニマしながらこちらを見ていた。
でも怒る気力もない。咲ちゃんが先だ。
俺は咲ちゃんの席を見た。咲ちゃんは居なかった。学校を休んだみたいだった。
次の日も次の日も、またその次の日も学校を休んでいた。
俺の方はというと、日に日に虐めは酷くなり、トイレに行けばバケツ一杯の水を被せられ、体育の授業に行けば、倉庫で殴られ蹴られ……。
でも、そんなことよりも咲ちゃんの事が心配で、それどころではなかった。
行こうと思えば家に行くことだって出来た。けどその勇気が出なかった。
いつしか会うのが怖くなっていた。
ひと月が経ったころ、親伝いで咲ちゃんの行方が分かった。
親の仕事の関係で転居。
入学したばかりの咲ちゃんをどうするかで、家の中でひと悶着あったようだった。
結局、咲ちゃんも学校を変え、転校することになった。しかし急な事であったため学校への連絡も遅れ、咲ちゃんの方も学校の友人達に挨拶も出来ずに転校してしまった。
唯一の友で憧れだった咲ちゃんのいない学校、待っているのは虐めのみ。
そんな学校に嫌気が差した。
俺はその現実から、逃げるように家に引きこもりゲームの中の物語に縋る様になった。
親は、俺が虐められていたことを薄々感じていたようだ。それに咲ちゃんに惚れていたことも。
優しく、その現状を受け止めてくれた。
◆
3年が経ち、高校生になった。
俺はというと、まだ家の中で引きこもりをしている。
この頃は、もう咲ちゃんとか、どうでもよくなっていた。
俺には新しい恋が芽生えていた。
そう、画面の中でいつでも俺のことを考え、俺の指示に従てくれる、マイ・スイート・ハニー達に。
一夫多妻制は存在するのです!画面の中ではね。
すっかり家の中生活にも慣れ、というかむしろ敵がいないこの環境は、一番過ごしやすいということに気が付いてしまった。
そんな俺を見て、優しく受け止めてくれていた両親も俺に文句を言うようになってきた。
そんな両親に俺はいつものセリフを吐き捨てる。
「お前らは、俺の為に汗水流して働いてこいっ!この社畜どもがっ!」
我ながらひどい言葉だと思う。最低の息子だ。
そんなのは分かっているが、じゃあこれから何をしろと?中学の勉強もやってないやつが、楽園を知ってしまった今、外の世界に出て、敢えて辛い思いをしろと?
この生活に慣れてしまったのも、少なからず親が甘やかした結果だというのに?
そんなことを思いながら、過ごしていて、ちょうど2年が経った。
未だに家から出ない俺は、肥えた白豚みたいになっていた。年齢的には高校三年生、白い肌にもじゃもじゃの体毛、更に髭も生え、体重は130kgだ。
そして、遂に来年からは、『引きこもりニート』へとランクアップだ。
そんなバカげたことを考えながら過ごしていたある日、突如として大事件が起こった。人生二度目の大事件だった。
俺が部屋で自分の息子を、しばき上げて興奮していた時、親がノックもせずに部屋に入ってきた。
俺は恥ずかしさと悔しさで、親にいつもより激しく暴言を吐く筈だった。
そうこれは、事件だが大事件ではなかった。
親は、俺の脂汗と息子の先端から出た汗の臭いで、蒸し返しそうな部屋の臭いに顔を歪めながら、泣きそうな顔で俺に伝えた。
「咲ちゃん、亡くなったって。」
俺は頭の中で何が起きているか分からなくなったので、とりあえずナニをしまった。
え?咲ちゃんが……咲ちゃんが亡くなった?あの優しくて可愛くて、いつでも笑顔の咲ちゃんが?
今まで忘れようとしていた思い出が頭の中を巡る。
「葬儀は、咲ちゃんのご両親の地元の、隣町で明日行うらしい。あなたも明日くらいは、清潔にして正装に着替えて、出てきなさい。最後に一緒にお別れを言いに行きましょう。」
「はい……。」
そんな弱々しい言葉が素直に出てきた。
俺はその日、一人になった部屋で、ただ茫然としていた。
◆
次の日、俺は髭を剃り、髪を洗い清潔な恰好で家族と葬儀に参列すべく、家を出た。
あれだけ出歩くのを嫌がっていたことが嘘のように簡単に。
約5年ぶりの外だ、空気が美味しかった。
それが最初に出た感想だった。
隣町には車で移動する。
俺は後部座席に座り、親と久しぶりにちゃんと会話した。
その時俺は「楽しい」と感じた。
会話、外の空気、景色が輝いて見えた。
両親もその瞬間を楽しんで見えた。
父親なんて、運転しているのに後ろを向いて話しかけてきたりした。
そこには笑顔があった。俺も笑った。笑ったのなんていつぶりだろうか。
俺は、出来れば中学校で咲ちゃんを庇った、あの日からやり直したいと思った。
やり直して、ちゃんと生きたいと思った。
そう思った瞬間、俺は頭を打ち付けて、倒れていた。
薄れゆく意識の中、目の前には、血だらけの両親が倒れていた。
俺は、外なんて出なきゃよかった、と思った。
森山 春と申します。
書くのは、初めてですがファンタジーの世界に記憶を持ったまま行ったら、どんなことをして、何をやりたいか。私ならこうする!を書いてみます。
もし読んでみて、面白かったり、訂正してほしいところ、分からないところがありましたら、コメント下さい!コメントが励みになります!
これから、宜しくお願いします。