Page.14 小さな魔術書使い
暗闇の中、フェアリスとなった真琴の身体がゆっくりと水底へ沈んでいく。
闇の奥底から、2つ3つの光の粒が泡のように空へと昇っていく。
──光に触れし無垢なる魂よ、我が問いに答えよ。
「えっ……?」
どこからともなく聞こえてきたその声に答えようにも、真琴は身体をうまく動かすことができない。
沈没していく船のように、闇の中で揺られながらゆっくりと沈んでゆく感覚が続く。
『旅立ちの日が訪れた。この日の為に汝が準備したことは?』
A.冒険に必要な知識や技能
B.ありったけの財産と武器
C.かけがえのない仲間達
声と共にメッセージと選択肢が書かれたウィンドウが真琴の前に表示される。
「え、えーっと……C! 一人だときっと辛いと思うから」
真琴がそう答えると、ウィンドウには次の質問が表示された。
『広大な砂漠の真ん中で仲間が倒れた。汝ならばどうする?』
A.共倒れ覚悟で一緒に連れていく
B.その場に仲間を休ませて、一人で村を探しに行く
C.仲間を完全に見捨てて逃げる
「ど、どれがいいんだろう? び、B……いやAかな?」
『怪しげな教会に汝と同じ姿の者が祈を捧げている……彼の者は何を祈っている?』
A.奇跡の力を授かるよう求めている
B.世界征服の誓いを立てている
C.家族の無事を祈願している
「世界征服は無しだからCかな? でも奇跡って何だろう……?」
『仲間と共にとても強い敵と戦っている。汝の判断で勝敗が決する……!』
A.武器を手に、最後の力を振り絞って戦い続ける!
B.後ろに下がって究極魔法の詠唱を始める!
C.戦闘は仲間に任せて回復と支援に徹する!
D.仲間を見捨てて逃げる!
「えとえと、C……? あ、ちょっとまって! Bにする!」
その後も、いくつかの心理テストのような質問が続き、真琴は1つ1つ正直に答え続けた。
………
……
…
──無垢なる魂よ……。
──汝の小さき身体には、穢れなき仲間を想う優しき魂が宿っているようだ……。
──汝ならば、我が願いに応えられるやも知れぬな……。
──よって汝には《慈星》の宿聖を与えよう。
*無垢なる魂に慈星の宿聖が刻まれた!
宿聖(慈星):自分以外のパーティメンバーの状態異常確率-3%
──さて、汝の降り立つ地が見えてきたようだ……。
──かの地より始まる壮大な旅の果てに
──汝が何を成し遂げ、何を見出すのか。
──我は静かに見届けようぞ……。
……………
…………
………
……
…
暗闇に微かな光が差し込んで、少しずつ、少しずつ明るくなっていく。
その光を辿ってふと見上げれば、見たことのない星々の光が、まるで宝石のように夜空を飾っていた。
「ふわぁ……」
光害の無い雪神島ですら見たことがない満点の星空が、とてもとても眩い。
その圧倒的な輝きに、真琴はしばし時を忘れて眺め続ける。
残念ながら木々の枝葉が星空を所々隠してしまっていて、全方位式のプラネタリウム……という訳には行かないものの、それでも真琴の家の庭から見える夜空よりも遥かに広大で開放的な大パノラマがそこにはあった。
ここは夜の森の中だろうか。
どこからともなく吹く風が草木を優しく揺らすと、葉と葉が擦れてサラサラとした音を立てる。
冷たい風が真琴の肌を優しく撫でると、真琴の髪を柔らかく解きほぐして絹布のように靡く。
とてもゲームの中とは思えないその繊細な感覚が真琴自身にリアルに伝わってくる。
周囲を見渡せば、図鑑では見たことがない幻想的で美しい大きな花々が、ぼんやりと鈍い光を放つ。
静かな闇夜に紛れて遠くからリンリンと虫が鳴き続けているのが聞こえる。
バサバサと不気味な音を立てて、コウモリが飛び去って行く。
どこからともなく吹いてくる風に身を委ねながら、真琴がすうっと息を吸い込むと、その空気は今までに嗅いだことのない花の匂いと、爽やかな森の匂いがした。
フォン!
突然前方から、いかにもゲーム的なデジタル音が聞こえると、小さな光が何かにぶつかって「ボウッ!」と勢いよく炎が燃え上がる。
フォン! フォン! フォン!
年老いた老妖精が持つ杖の先から更に3つの光が生み出されると、等間隔に備え付けられた4つの炬火にぶつかって次々火が灯された。
明々と燃え上がる炬火の炎が、真琴の前で整列している冒険者達を照らし出す。
3×3列に並ぶ9人組の集団が左と右に1グループずつ並んでいて、計18人の冒険者はまるで統率の取れた軍隊のよう。
様々な種族がここに集まっているのが見て取れるが、全員、剣や槍や杖といった何かしらの武具を携えており、すぐに敵が襲い掛かってきても即座に応戦できそうないで立ちである。
とはいえ、真琴からは後ろ姿しか見えないので、その面々が精強なベテランなのか、はたまた甘さの抜けない新人なのかまでは見分けがつかない。
『ユグリアへようこそ。皆、遠い所からよくぞ集まってくれました……』
背中に鮮やかな蝶の羽を生やした艶やかな妖精が、王座のような形をした大きな切り株に座っている。おそらくフェアリスの女王様か何かなんだろう。
その妖精女王の横には、先ほどの年老いたお爺さんみたいな姿をした老妖精が杖を片手に立っている。
『皆も知っている通り、今宵は我らフェアリスが100年に一度執り行う《神樹の儀》の日。かつて私達の祖先は神器を用いて冥王を封じました。貴方たちにはこれから冥王の部位を封じたという3カ所の霊峰へと向かってもらいます。そして、我らフェアリスが代々守護してきた聖王様の神器を霊峰の祭壇に捧げ、冥王の封印を修復せねばなりません』
艶やかな妖精女王は語り続ける。
『しかし、最近はスフィア各地でおかしな事が起きていると聞き及びます。情勢を考慮すると、もしかしたら封印は弱まっており、あまり時がないのかも知れません。そこであなた方には即座に3つのパーティを編成し、3手に分かれて各地の霊峰へと向かって頂きたく思います』
(えとえと、パーティ組むってことは、シールドナイトと、プリースト、それからウィザードを探せばいいんだよね……?)
ファミコム版のESⅢのクリア経験を生かして、頭の中でベストメンバーを構築する真琴。
『時が迫っています。早速パーティを編成してください』
「「「ははっ!」」」
真琴が一生懸命パーティ編成を考えていると、前に整列していた18人は事前に示し合わせていたかのように綺麗に6人ずつに分かれて、あっという間に3つのパーティが完成した。
「あっ……」
出遅れた真琴は焦る。
「あのあの、ボクとパー……」
『見かけない顔だな。こっちはもう6人揃った。他を当たってくれ……』
真琴が屈強そうなダルダン(巨人族)の戦士に話しかけようとした瞬間、向こうから勝手に真琴に話しかけてきた。
「あの、えと……」
『てやんでぃ! 昔からパーティは6人までって決まってんだ! 他所行け! 他所!』
「でもさっきまで9人で並んで……」
「てやんでぃ!」
「ひっ!」
槍を手にしたドラーグェン(竜人族)は威嚇するようにそう言うと、しっし! と真琴を遠ざけるジェスチャーをした。
「う~~理不尽だよ~~」
釈然としない真琴だったが、そういうものかと諦めると、今度は不機嫌そうなエルフィンの女性に話しかける。
「お姉さん、ボクとパーティ組み……」
『何? アンタもしかして事前に仲間も決めてなかったの? アタシらなんてこの日のために1年も前から準備してきたのよ! バカじゃないの?』
「そ、そうなんだ……」
その後も何人かに話しかけるものの、冷たくあしらわれる真琴。
自分だけ仲間外れにされた真琴は、オロオロしながら不安そうな表情を浮かべる。
それでも真琴は諦めずに、健気に誰かに話しかけてみたものの、やはり誰一人として真琴とパーティを組んでくれそうな人はいなかった。
………
……
…
「グスッ……」
仲間外れにされた真琴は悲しくなって、涙が零れ落ちてしまった。
今まで島の老人たちや留美先生に大事に大事に育てられた真琴には、他人から冷たくされた経験が一度もなく、このように仲間外れにされるなど思いも寄らなかったのである。
ゲーマーからすればよくあるイベント展開ではあるが、真琴がプレイしたことがあるゲームはファミコムのエターナルスフィアⅢのみ。
そのESⅢのストーリーでは、人々から「ゆうしゃさま!」「ゆうしゃさま!」等と頼られる事はあっても、冷たくされるイベントなんてものは無かったのだ。
その上、VRという仮想世界はゲームと呼ぶにはあまりにリアルで、たとえNPCと言えども、生の声ではっきりと否定されればそれなりに迫力があるのも災いした。
真っ当な人付き合いの経験がない真琴からすればその衝撃は計り知れず、まるで自己否定されたかのような気持ちになってしまうのも無理はなかった。
初めて味わう疎外感に狼狽える真琴。
足は震えだし、目の前にいるNPC全員がとても恐ろしく見えた。
それでも真琴は諦めず、もう一度勇気を出してヒューマ(人間族)の青年に話しかける。
「あ、あの、ボ、ボクとパーティ組んでくれませんか?」
『おやおや泣いているのかい? 仲間外れになって悲しかったんだね』
グスッ……。
NPCのヒューマの優しい言葉に、我慢していた涙があふれ出す。
「うわああああぁぁぁぁぁあん!」
『泣かないで。キミは悪くはないんだよ? けれど僕もパーティに入ってしまったから、こればっかりはどうすることもできないんだ。だから女王様に相談してはどうかな?』
「じょうおうさま?」
『ああ、あちらにいらっしゃるティターニア様がそうさ』
「分かりました。行ってみます……」
真琴は優しいヒューマの冒険者に言われた通り、ぐずりながらトボトボと妖精女王の元へ行く。
すると、先に女王の方から話しかけてきた。
『おや、見かけない子ですね……。名は何と言いましたか?』
「グスッ……名前……ですか?」
妖精女王が真琴にそう言うと、真琴の手元にぷかぷかと浮いた羊皮紙と羽ペンが現れた。
「わっ!」
『泣かないで……大丈夫ですよ。その紙にあなたの名前を書いて私に教えてください』
「はい……グスッ……」
”この世界でのあなたの名前を記入してください”
そう書かれたウィンドウが浮かびあがると、真琴はここで自分の名前を決めるのだと察した。
ぷかぷか浮いている羽ペンと羊皮紙に戸惑いつつも、真琴はそっと右手で羽ペンを手に取って、浮かんでいる羊皮紙にフルネームである『御堂 真琴』とお手本のような綺麗な字でスラスラと書きこんだ。
名前を書き終えた真琴は、涙を拭きながらそっと羽ペンを手放す。
『おや? この名前はあなたの真の名前ではありませんか……』
羊皮紙を見た妖精女王ティータニアの表情が真剣になる。
『よくお聞きなさい。この世界で真の名を他の者に知られることは危険極まりありません。誰にも知られないよう別の名前を名乗ったほうがいいでしょう』
”注意! 知らない人に実際の名前や住所や電話番号などの個人情報を聞かれても、絶対に教えてはいけません! 犯罪に巻き込まれる可能性があります”
強い警告を示す赤色のウィンドウがポップアップする。
「そ、そうなんだ。別の名前、別の名前……。えーっと……。グスッ……」
妖精女王が真琴の頭を優しく撫でると、真琴は少しずつ泣き止んでいく。
落ち着きを取り戻した真琴の頭の中には、かつて異なる名前を用いたことがある歴史上の偉人達が次々とリストアップされていく。
「ウーティス、厩戸皇子、ゴヤスレイ、単福、張禄、トム・リドル、長井新九郎、野口清作、松平元康、村田蔵六、和田小五郎、ラフカディオ・ハーン……。あ、ナイチンゲールも確かスミスって名乗ってたっけ……」
次から次へと頭の中に偉人達の名前が浮かぶものの、どうにもしっくりと来ない。
「あ、そうか」
大仰な偉人達の名前よりも、単純にエターナル・スフィアⅢに登場するキャラクター達のような、シンプルなカタカナ名の方が好きなのだと気づいた真琴。
「えーとえと、ボクは御堂真琴だから……」
『決まりましたか?』
「ミドっていうのはどう?」
『良い名ですね。ですがその名前を持つものはこの世界に33名いるようです……。本当にミドで良いですか?』
「あ、やっぱり別のにします! えーとえーと……あ、そうだ!」
自分の名前を閃いた真琴は、サラサラと羊皮紙に名前を書き込んだ。
『……なるほど、ミコトですか。良い名前ですね』
「はい! えと、ボクはみどう まことだからミコトにしてみました! えへへ……」
照れくさそうに言う真琴。
『そうですか。ミコトという名前を持つものは、この世界に193名いるようですね……。本当にミコトでよろしいですか?』
「おんなじ名前の人、そんなにいっぱいいるんだ……。でも、ボクもミコトでいいです!」
『分かりました。ではミコト、あなたには《神器の担い役》を任せるとしましょう』
「にないやく?」
『ええ。まずはこちらに来てください』
「はいっ!」
特別な役割を与えられるのかと思ったミコトは、さっきとは打って変わって嬉しそうにぴょこぴょこと妖精女王について行く。
そして王座の隣に備え付けられた即席の祭壇の前にやってくると、その祭壇には、立派な剣と、古びた本、飾り穴の開いた円盤状の陶器みたいなものが祭られていた。
『これがフェアリスが代々守り続けてきた神器です』
「わぁ、すごい……」
『これら3つの神器のうちの一つをあなたに託します。あなたはあちらにいるパーティの皆と協力しながら霊峰へと向かい、見事神器を捧げてくるのです』
「はいっ!」
『それではミコト、好きな神器を選びなさい』
ミコトは祭壇に近づくと3つの神器をじっと見つめた……。
覇星の剣:300年前に、武力を用いて邪王を征伐した覇王の剣。
銀星の璧:200年前に、富を分け与えて人々を救済したという豪商の玉璧。
始星の書:100年前に、魔術を用いて災害から国を救った古の学士の書。
「へー。これが璧なんだ。実物は始めて見たかも……」
璧とは、古代中国において宝物として用いられた玉器で、歴史上有名な璧と言えば、司馬遷著の「史記」に「和氏の璧」という逸話が記されており、「完璧」の語源ともなったものがある。
「璧も捨てがたいけど、やっぱり本がいいです!」
そう言うと、ミコトは始星の書を手に取った。
『それでいいですか?』
「はい! コレにします!」
*ミコトは《だいじなもの:始星の書》を手に入れた!
『フフッ……。フェアリスらしい選択ですね』
「え? どういうことですか?」
『神器の担い手となる者は、強さを求めるなら剣を、富を望むなら璧を、叡智を欲するなら書を取ると言われています』
「そうなんだ」
『魔法に長けたフェアリスの中でも、特に知を求めるあなたのジョブは《ブックマスター》が良いかもしれません』
「ジョブは分かるけど、ブックマスターってなんですか?」
『ブックマスターとは、ジョブの1つで、魔術書に記されたありとあらゆる魔法を使いこなす事ができるジョブです。使いこなせれば他のマジックキャスター職に引けを取ることはありません』
「す、すごい……」
『もちろん、他のジョブを希望されるならそちらにもなれますが、どうしますか?』
「ボク、ブックマスターがいいです!」
『分かりました。それではミコトは今からブックマスターです。偉大なる光の聖王よ、彼の者に力を!!』
ティターニアが魔法をかけるように腕を振り払うと、ミコトの身体の周りに星屑が舞う。
するとミコトの身体がズンッ! と重くなる感覚がした。
「わっ! 服が重くなった!?」
『おそらく、ジョブが変わった影響でステータスが変化したためでしょう』
─ミコト─
種族 :フェアリス
ジョブ:ブックマスター
HP :8/8
MP :84/84
TP :0
力 :1
素早さ:3
体力 :1
器用さ:2
知性 :5
精神 :4
魅力 :4
限界重量:7
「あ、体力が1しかないよー」
『先ほどよりも体力が落ちたせいでしょうね。服の重さ自体は変わってませんから』
「そっかぁー。でも魔法使いだからしょうがないよね」
『それではこちらの魔術書を与えましょう』
「やった!」
*ミコトは『ポテブック』を手に入れた!
「お、重い……」
『まずはこの本を使いこなせるよう精進するといいでしょう』
「がんばります!」
ずっしりとしたポテブックを両手一杯に手に取り、ジャガイモのイラストが描かれた表紙を見つめていると、アイテムの解説がパッと表示された。
*-----------------------------*
ポテブック(魔術書) 重量3 総ページ数:5/8 Lv1~
ポテシュート 5ページ
Free 3ページ
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「何でジャガイモなんだろ?」
エターナル・スフィアシリーズでは度々初期装備に「ポテ」の名前を冠した武器が登場する。
エターナル・スフィアⅢでは「ポテソード」と「ポテナイフ」、「ポテシールド」「ポテアーマー」「ポテヘルム」などが登場したが、いずれも性能は最弱である。
ちなみに昔のゲームには取扱い説明書が付属しており、説明書には武器や防具のイラストが多数掲載されているのが普通であった。
その中にポテシリーズの武器防具のイラストも掲載されていたが、あからさまに弱そうなイモ臭いデザインの装備群だった。
「あーポテって、potatoのことだったんだ!」
取り扱い説明書を読んでいないミコトは、ファミコム版のエターナル・スフィアⅢに登場するポテシリーズが、何のことか分からずにいたが、漸くその疑問が瓦解した。
「そっかー! そういうことかー……あ! ってことは、これ、最初の武器?」
『武器と言えば武器ですが、槌や杖のような殴りつける用途には向いていませんよ?』
エターナル・スフィアⅢでは、ゲストキャラクターの学者がパーティに参戦したときに、ガシュガシュ殴りつけていたけれど、この重さだと真似できそうにない。
「そうだよね、すっごく重たいもん、コレ」
ともあれ、この本もポテソードと同じく最初の武器だと気づいたミコトは、じゃがいもの絵が描かれた表紙をめくってパラパラと中身を読んでみる。
ポテブックの1ページにはシンプルな三角形の魔法陣が1ページ丸ごと使って描かれており、そして2ページ目から5ページ目までは、見たこともない文字で埋め尽くされていた。
「うぅ、読めない……。これが読めないと魔法が使えないのですか?」
『ブックマスターであれば、魔術書を手に持っていれば、いつでも魔法が使えます』
「そっか。でも6ページ以降は白紙になってるけど……これはメモ欄?」
『魔法屋に行けば、空いたページに好きな魔法を書いてもらえます。つまり、使える魔法の種類が増やすことができます』
「すっごーい!」
『今回は特別に、私自ら、空いたページに魔法を書き込んであげましょう』
「え? いいの!? やったー!」
『ふふふっ、では次の中から1つだけ好きな魔法を選んで下さい』
ポテヒール(土) 必要ページ数:3 必要Lv1~
味方1人のHP回復。魔術書:ポテブック専用魔法。
ポテシュート(土) 必要ページ数:3 必要Lv1~
ポテシュートに加筆。威力上昇。魔術書:ポテブック専用魔法。
ストーン(土) 必要ページ数:3 必要Lv1~
敵単体に土属性ダメージ。
チャージスペル(氷) 必要ページ数:33 必要Lv26~
次に使用する同じ魔術書に記された魔法を強化。
「チャージスペル……は無理だよね?」
『ええ、このようにページ数が足りないものは加筆できません』
「じゃあポテシュートを選んだら、ポテヒールは書き込めなくなっちゃうんだ」
『そうです。Freeのページが残り3ページなので、どちらか1つしか書き込めません』
「なるほどー。じゃあじゃあ、ポテヒールがいいです!」
『では、ポテブックにポテヒールを加筆しましょう!』
「お願いします!!」
ティターニアが指をパチンと鳴らすと、ミコトの持っている本が輝き、空いていたページに新たに魔法陣と謎の文字が書き加えられた。
*-----------------------------*
ポテブック(魔術書) 重量3 総ページ数:8/8 Lv1~
ポテシュート 5ページ
ポテヒール 3ページ
*-----------------------------*
『これで、その本1冊で回復魔法と攻撃魔法が両方使えるようになりました』
「すごーい!」
『ですが魔術書は1冊1冊がそれなりに重いので、よくよく考えて用いるのですよ』
「そっかー。色んな本を持ち歩くと大変だもんね」
『ええ。……ではミコト、これで旅の準備は整いました。時間がありません。すぐにあちらのパーティと共に出立なさい……』
「はい!」
元気よく返事をしたものの、向こうに待機しているパーティを見てミコトは怖気づく。
それでもミコトは、さっき慰めてくれたヒューマの青年がいるパーティへ恐る恐る近づいた。
『やぁ、準備は出来たようだね』
「あ、はい! ばっちしです!」
『では行こうか。君の事は僕達が守るから、君は神器《始星の書》を守ることに専念してほしい』
「が、がんばります!」
ミコトは用意された幌馬車に一人乗り込むと、6人パーティの冒険者達がその幌馬車の周りに展開した形で動き出した……。




