6 銀の扉
「この扉が、向こうとこちらを繋ぐもの。ここを通れば、貴女の望む場所に行く事ができるわ」
微かに銀色に輝くその扉には、取っ手もドアノブも無い。
押すのか引くのかもわからない。
ただ、そこにある物が扉だとわかるだけ。
触ってみる。
思っていた以上に重い。こんな扉なのに、まるで大きな岩みたいなイメージ。
「そうね。この扉は大きな岩でもある。鍵が無ければ開けられないし、無理に開けようとすれば恐ろしい事になる」
「鍵? 鍵はあるんですかっ!」
「ええ。貴女が持っているわ。無期限のパスポートをね」
「……そういえばギルマンくんがそんな事を言ってたけど……私そんな物持ってません」
「いいえ。貴女は持っている。だから、貴女が願いを込めてその扉に触れれば、扉は簡単に開くわ」
言われた通りに扉に手を触れると、果たして扉はまるで溶けるように消える。
「……でも、これだけは忘れないで。無期限パスポートは遊園地の外に出てしまったら使えない。魔法は解けてしまうもの。ここに戻る事はできないわ。タウィル・アト=ウムルの慈悲も、その先には存在しない」
踏み出した私の背中にかけられた言葉。
それを理解する時間も、理解できる知恵も私には無かった。