5 Tsathoggua
それは、どうにも巨大過ぎた。
大きいという表現すら矮小に過ぎる。
地下ピラミッドの入り口の更に地下。
そこは果てが見えない空洞で。
その果ての見えない空洞の床一面が『それ』だった。
あまりにも広大な空間に寝そべる、一匹の毛むくじゃらのナニカ。
「……トロル……おとぎ話の」
「そんな可愛いモノではありませんよ。居心地がいいのか、こうして別荘代わりに寝そべっているのです。何千年も」
ブヨブヨとした感触の足場。その巨体と比べればかなり短いが、それでも足首に絡みつく毛。
向かった先にはあきれるほど巨大な動物の顔らしき物があった。
兎のように尖った二枚の耳。クレバスかと思う口の中には、ギロチンの刃のような歯が無数に、しかも三重に並んでいる。
その頭だけでちょっとした山くらいある。
GGGGGGGGGAAAAAAAAA
地鳴りのようなイビキ。
「……ええ、そうです。タウィル・アト=ウムルの名代として、アザトースの曾孫。サイクラノーシュより来るものよ。貴方が塞いでいる扉に通して頂きたい」
「……ひっ!」
突然目の前の地面にぽっかりと穴が開いた。
普通の生き物ではありえない光景に震えが止まらない。
「怠惰な事です。さ、降りますよ。ええ、大丈夫です」
「大丈夫だって言っても……」
「戻りますか?」
「……行きます」
私はその穴に飛び降りる。
暗闇の中をゆっくりと落ちる。
やがて落ちているのか上がっているのかもわからなくなり、不意に明るくなったかと思うとそこに落ちた。
落ちた衝撃は無かった。
そこは岩壁で囲まれた小部屋。
壁には扉が一つだけ。
どこから私が来たのかもわからない。