プロローグ1
見切り発車で投稿してみました。
もはや何番煎じか分かりませんが、こんなVRMMOでもお読み頂けたら幸いです!
「よし……よし!届いてた!……よし、夢じゃない!」
年末が近づく12月初旬の金曜の夜、急いで職場から帰宅した黒井翔平は、1人自分の部屋でガッツポーズを繰り返した。
横では家で飼っているシャム混じりの猫のシロ(命名は妹)が鬱陶しそうにベッドの上で欠伸をしていた。
ウキウキと箱を開けて、数本のコードが付いたヘッドギアを取り出し、説明書を読みながら電源などを設定していく。自然と鼻歌が出てしまうくらいには上機嫌だ。
彼が浮かれて弄っているのは、この度遂に発売されたヘッドギア型フルダイブシステムのゲーム機器。海外ではいくつかのゲーム会社が開発に成功していたが、今回の物は日本で老舗のゲーム会社が発売した、国内初のフルダイブシステム機だった。
社名:BrainStorming Inc.
ヘッドギア型フルダイブVR機:BSVR ver.3.01f
価格:約32万
社名はBSと略称され、機器はBSVRと呼ばれている。
過去には別のゲーム会社も開発に名乗りを上げて励んだが、気付くとひっそりと事業を撤退していた。仕方なく海外のゲームで遊んではいるものの、サポートは日本語メインで対応していないし、感性の違いもあってそこそこの人気程度に収まっていた。
そこに来て漸く老舗メーカーからの突然の発売宣言に、国内は争奪戦が勃発した。予約開始から瞬殺、追加予約もあったがこちらは予約なのに抽選。発売日直前に入荷数を確認して、それから当選者へと通知が送られて支払いを行う流れである。
黒井翔平の手元には"2台"のBSVRの箱が並んでいた。
今はその内の1台の設定をしている最中だ。
彼は予約開始直後の争奪戦には敗れたものの、その後の抽選予約には2つも当選したのだ。正確には、3つの抽選予約のうち1つは外れた。
しかし、初期ロットが20万台で、抽選予約はその半分とされているのだから、十分な勝ち組である。溜めておいたボーナスは簡単に消し飛んだがそれは些細な問題だ。
「えーっと、何々……ダイブ中は―――
ダイブ中は四肢の感覚はすべて脳よりシャットアウトされるが、触られたり揺すられる、尿意や体調不良などの変化が起きた際には即座に本人に通知される。
ヘッドギアにはカメラが付いており、ダイブ中は自身の状況をいつでも確認できる。付属の専用カメラを部屋に設置することで部屋の様子も確認できる。専用カメラはヘッドギアごとに受信登録されているため、他人に盗聴される心配はない、っと。
なるほど。じゃあこのカメラを部屋が映るように設置しておけばいいのか。トイレの時も知らせてもらえるなら大丈夫だろうけど、飯もトイレも先に済ませた方がいいな。あ、風呂もいっとこう」
設定の終わったヘッドギアをベッドに投げて、着替えを準備してから晩飯と風呂を済ませるために1階へと駆け下りて行った。
黒井翔平はゲーム仲間にはクロと呼ばれている。ハンドルネームもクロにしたため、今ではこっちの方が呼ばれ慣れてしまったくらいだ。
クロは高校の時のクラスメイトと格闘ゲームをしたり、MMORPGをいくつか遊んでいる時に知り合ったネット友人達とアクションゲームやFPSなど、そこそこゲームを渡り歩いていた。
社会人になってからは学生ほど時間は取れなくなってしまったが、それでもゲームを遊び続けている。VRゲーム機で短い時間ながらも格闘ゲームをモーションキャプチャーカメラを使って自身の体で遊んだりもした。
今回のBSVRもそんなゲーム仲間と話題に上げていたゲームがある。
近年、ゲームソフトはダウンロード販売のみになって久しいが、今日手に入れたBSVRには同時発売の専用ゲームがいくつかある。その中で一番の話題は、BSVRに最初から入っている1つゲームだ。
それが "Next Fantasy Life"
略称はNFL。内容は名前の通りファンタジー世界へのフルダイブご招待だ。剣と魔法があり、自由にその世界を生きてみましょうというVRMMORPGだ。
海外ゲームでも似たようなものがあるが、どうしても日本語対応されていない世界に不便さを感じてしまい、国内ではあまり人気がなかった。会話も文字も全てが日本語変換出来ないので仕方ない。そして大抵の人はロボットや車、戦闘機といった操縦シミュレート的なゲームを遊ぶ程度だった。
ところが、今回のNFLはPVを見る限りは綺麗なグラフィックと自然な表情や動作を見せるNPC、そして全国数ヶ所で行われた試遊会に参加した者達が五感で楽しめると興奮し、それが拡散されれば当然期待が高まった。
機器が高額である事と、多少のグロ表現や痛覚設定があるために15歳未満は遊べないので小さい子がいないとなれば、そういったグロ嗜好を持つ者もまた期待していたようだ。
しかもこのゲームはフルダイブシステムのテストも兼ねているので、基本料金は無料な上に元々BSVRが国内販売のみなので、海外の感性に振り回される事はない。
ただ無料だと企業としては少しでも売り上げを出さないといけないので、キャラの作り直しは手間がかかる理由で有料(5000円)にしたとぶっちゃけていた。今後も戦闘を有利に進めたりバランスを崩すような課金は一切しないと言っていたので、作り直したい人は課金すればいいだけの話だ。因みに、IDはBSVRごとに決められているので完全固定だ。
そして別のMMORPGをしていたクロ達ゲーム仲間の5人も、
"よし、オレ達もやるぞ!"
"ああ、抽選に賭けるぜ。俺は3つ行く"
"わたくしも用意しますわ"
"僕は1つしか賭けられないよ……当たるといいなぁ"
"遠距離武器もあるのよね?なら私も申し込んでみるわ"
"あたし、そういう運ないんだけど"
抽選に申し込むには、転売や空申し込みを抑えるために完全先払いになっていた。当然落選したら返金されるが、例えカード支払いでも3か月前の予約では引き落としされてしまうので、結局お金を用意しておかなければ成り立たない。
社会人2年生のクロは数か月は目標額を溜めて、ボーナスも必要分きっちりと残して抽選に挑んだ。実家暮らし様様である。
結果として、5人中1人落選で4人が当選、クロはダブル当選。
今日無事に2つ届いたので、1つを落選したやつに譲る話をするつもりだ。
「やっぱり俺も大学行けばよかったなぁ……いやでも、自分で金を稼いだからこそ誰にも文句を言われないで済んでるってのは大きいか」
晩飯を終えて湯船に浸かったクロがひとりごちる。
無事購入出来た人達は、15時のサービス開始と共に遊んでいるはずだ。
スタートダッシュに乗り遅れたと思うと、ゲーマーとして少し悔しい。
「よし!この土日は仕事休みだからこれから遊びまくってやるぜ!」
――ザバァ――
勢いよく風呂から上がって部屋に戻ったクロ。
だが、そこで見たものはまったく予想だにしない光景だった。
「うそだろ……?何やってんだシロぉ!?!?!?」
そこには、ベッドに放っていたヘッドギアの中に頭を入れた飼い猫のシロがいた。
ヘッドギアには起動中を示す緑のランプが点灯してる。
つまりこれは、あれだ、
【俺氏、飼い猫にヘッドギアを奪われフルダイブされていた件】
……
…………
笑えねぇよッ!!!!!!!!
設定もまとまっていない状態での投稿なので、近いうちに数話投稿してからどうにか出来そうと思えたら不定期投稿する予定です。
ど、どうでしょうかね……