episode1
魔法とは、常人には不可能な手法や結果を実現する力のことである。それ故に
魔法とは常人を傷つけるためにあってはならない。常人のみに全てを奉げるべし。
ヨハン・G・ファウスト――――
「魔法使いはもはや、この世に存在しないも同然だ」
薄暗い周囲に、10人ほどの人影が蒼白く光る大きなテーブルを取り囲むように座っていた。たった一人スーツをまとった男を除き、全員の目元が隠れており全く同じ衣をまとっていた。
「だが、巫女がいない今、我らに為す術はないぞ」
「‘あの日”から、魔法使いの数こそ増減しているらしいではないか」
「ただでさえ出生率が減ってきておる魔法使いだぞ?」
「ああ、100年前の戦争のせいでもあろう」
「いいや、‘世界の数々”が出来てからじゃぜよ、あの汚れた魔法使いどもが!」
「いや、あの方共は誰にも劣らん最高の魔法使いたちであった!馬鹿にするのも対外にせい!このおいぼれが!」
「ラグメルができてから碌なことなどない・・・」
「彼らを馬鹿にするというのか!?」
「静粛に。見苦しいぞ」
‘おいぼれ”の言い争いの中。淡々と静かな口調で男は言った。
「もはやラグメルは崩壊し始めている。巫女が不在の今、もう世界の数々は崩壊する運命にしかないのだろう。」
蒼白い机の上に両肘を置き顔の前で手を組む男は、変わらず静かな口調であった。
「そうだ、巫女は!?この大騒動だ・・・・‘視えて”いたはずだろう!」
机に向かい体を乗り出した人影が声を荒げたに対し、やはり男は冷静に言った。
「あぁ、視えていた。だがしかし・・・・公言しようとした矢先、声を荒げて口論し始めたのは何方だ。」
簡単に皮肉を並べた男の発言に対し、誰もが口を噤んだ。
「現段階で最も適任の5人、最強の魔法使い――――――――――」
「なっ・・・そのような輩をっ!?」
「何を考えておるのだ!!」
「全ては、巫女様のご意思であり・・・ラグメルの意思である・・・」
なおも騒ぎ続けるおいぼれを残し、スーツの男はその場を離れてゆく。
自動的に開いた扉を抜ける瞬間、対照的な光に照らされ薄暗く見えなかった男の容姿が見え始めた。橙の風になびいたように斜め上の後ろのほうに向いた髪と、縁のない眼鏡をかけたスーツの青年・・・・・
男の名はジョセフ・ライサー
唯一の巫女の姿を知る少数のうちの一人。
100年前の魔法戦争で魔法使い同士の戦争が起こった。人間までもを多く犠牲にした戦争であり、事態の収拾のため6人の魔法使いが‘誰もが容易に他の国に出入りできなくするため”に己の命を懸けて究極魔法を発動した。それにより、「国」という国境が消え去り、もともとの国々の国境は強い魔力で覆われ、「国」ではなくそれぞれの「世界」が出来上がった。その「世界」の集合体を「ラグメル」又は「世界の数々」と呼ばれる。
6人の魔法使いの思惑どうりに終戦はしたものの失った代価は大きく、6人の偉大なる魔法使い含む多くの魔法使いが失われ、おなじほどに人間も数を減らした。
100年前の魔法戦争から今に至るまで魔法使いは減少の傾向にあり、ヨハン・G・ファウスト氏が遺した、魔法使いは常人(人間)の発展に全てを奉げることにおいて実現されにくくなっていってしまっている




