監獄の中
王女誘拐の容疑で俺とアルベルトは監獄に入れられていた。
「アリスが王女って知ってたか?アルベルト」
「知るわけないだろ」
アルベルトは不機嫌そうに答える。
「そうなのか...」
それしか言えなかった。俺には気になることがもう一つあった。
「なぁ、ファントムってなんだ?」
「お前それもしらねぇのか。本当に記憶がないんだな」
「ごめん」
「謝ることはないさ。俺の父親だ。史上最悪の怪盗。つい最近、処刑されたんだ。その親族だから俺はいい存在じゃないんだ」
「ふーん、じゃ、何で討伐隊になったんだ?討伐隊って国の組織だろ?」
「父さんが探していた剣を俺が見つけたいんだ」
「剣?」
「あぁ。父さんはただの怪盗なんかじゃない!歴史の真実を求めていたんだ!だから、俺はそれを、剣を見つけて父さんにできなかったことをなしとげたいんだ。だからいろんなところへ動ける討伐隊へ志願した。いろいろ面倒なことにんると思ったけど、どうにかなると思ってた。でもいきなりこれだからなぁ」
「これから俺たち、どうなるんだろうなぁ...」
「王女誘拐だからなぁ。ランド国王の命令で死刑かな」
返す言葉がなかった。記憶をなくし、死刑になる。俺はどんな人生を送ってるのだろうか。
しばらく沈黙が続いた。この沈黙はとても長かった。
アリスは今頃何をしているのだろうか。
「なぁ」
アルベルトが話し出した。
「お前は何で討伐隊に入ったんだ?」
「俺は...」
何でだろう。特に理由はない。ただ一つあるとすれば
「俺を拾ってくれた人に勧められたんだ。そこに行けばお前を知ってる人物に出会えるかもしれないって」
「誰が拾ったんだ?」
「レオって知ってるか?」
「レオ!?討伐隊のエース戦士じゃん!」
「レオってそんなに強いの?」
「歴代討伐隊のなかでレオは二番目に強い」
「え?一番は?」
「お前...まぁ、仕方ない。歴代最強の戦士はトゥレイタ。通称、ゴールデンキング。彼は昔、魔王を倒してくれたんだ。今もどこかの地で任務をこなしているはずだよ。彼のおかげで世界の平和は保たれているんだ」
「討伐隊ってすごいんだな」
俺はそんなことを言いながら自分の受けてきた訓練を思い出していた。彼らもまたあの訓練を受けてきたのだろうと。
その時俺はあることを思い出した。
声だ。
「いますぐ出発して」
その声のせいだ。全部。あれはなんだった?
気になって仕方ない。あの声は俺にしか聞こえてないようだし。
「アルベルト」
「ん?」
「ここから出よう」
「は?おまえ...ここ。監獄だぞ?名のある犯罪者でも脱走は厳しいぞ?それをこんな俺たちが?」
「うるさい、俺たちはこんなとこで死ぬわけにはいかないだろ?俺たちには目的があるはずだ。目的は達成するしかないんだ。俺たちはその目的に向かってただひたすら走るしかないんだ」
「でもな..」
反発しようとしたアルベルトだが口を閉じた。
「そうだな、行くか」
そして俺たちは脱走することを決めた。