黒猫の威嚇
ガチャッ
少し重たい屋上の扉を開いた。
夏とはいえ冷たい風が私の身体を通り過ぎていく。
威嚇した目と困惑した目が
私を捉えていた。
「なんすか?」
「ハルカとはどんな関係だ?」
「知らない」
昔に会ったと言っていたが私は覚えてない。
「えっと…結構昔なので…その、お、覚えてなくて…い、です…」
「って本人が言ってますが?」
てか、どこで気づいたんだろう?
「どこで黒猫だと思ったの?」
「…匂い、です。さっき、会ったとき、ちょっと匂い、しました。食堂で、雰囲気と、匂い、確信、しまし、た。」
お前は犬か!!!
「珍しかったんだよ。人に興味を示さなかったハルカがお前になついたのが」
「あっそ」
興味無さげに呟くと藤原は嫌そうな顔をした。
「……その顔」
私は堪らず声を出した。
「あ?」
「威嚇すんのも、毛嫌うのもいいけど、嫌なら話しかけないで。近寄らないで。関わらないで」
「は?」
少し目を見開いて
「なにいってんだ」って顔の藤原。
「自分で言うのもだけど僕、見た目女らしいから、女嫌いなら関わらない方がいいんじゃない?」
なんでそれを知ってるんだ、って顔してるけど見たらわかるだろ。
「ハルカ…だっけ?ハルカに気を使ったりしないでさ、ハルカと気が合えば仲良くしてくし、別に無理して合わせる必要もないでしょ?常に側にいなきゃダメな関係でもないだろう?」
まぁ、ハルカとも仲良くするつもりないけど。
「ふっおもしれーな、お前。気に入った」
「気に入られても困るんだけど。」
気にいられたくない。
信じてなんか欲しくない。
人間はいつか裏切るのだから。
出来ない約束なんてしたくない。