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第1章:ステージ1 ストリカ村(夜) 後編

「さっき焼いた邪教徒の魂……『ソウル』を手に入れたメポ! ソウルがあればいろんなことができるメポ!」

「いろんなこと? 例えばどんなことができるんだ、メッポル?」


 逸る気持ちを抑えきれない。僕は身の内に溢れる力に興奮していた。


「そうメポね……例えば……空を飛ぶこと! この『ソウル』を使って、まずは上空に上がるメポ!」


 メッポルの言葉に従って、僕はストリカ村を見下ろす位置へと浮遊する。

 それが当たり前である、と確信することで、身体は重力の軛を簡単に離れ、ふわりと宙に浮いた。


「ここからなら、好きなところを焼けるメポ……まずは風上! 風上に『白の炎』を配置するメポ!」

「『白の炎よ』!」


 手を翳す。先ほどまでとは桁の違う範囲を、白の炎が舐め尽くす。

 村人が慌てて飛び出して、水桶の水をかけているが、炎はまったく消える気配がない。


「はは、すごいなメッポル! まるで消えないぞ、僕の炎は!」

「その調子メポ! 白の炎は一端ついたらなかなか消えることはないメポ……燃え広がった赤い炎は、水をかけられると消されてしまうメポ。要所要所に、白の炎を配置して、効率的に焼くメポ!」

「了解ィ!」


 メッポルの的確なアドバイスどおり、僕は村を守る門にして、村と外をつなぐ唯一の出入口を白の炎で燃やした。

 門に殺到していた村人たちは、蜘蛛の子を散らすように門から離れる。


「何人か邪教徒が焼けたようメポ……『ソウル』は村を焼いている最中にもどんどん手に入るメポ! 手に入れた『ソウル』の使いドコロを考えるのは大事メポ! 例えば」


 メッポルはそう言うと、後ろを振り返る。

 つられて後ろを見れば、そこには弓を番える村人の姿があった。

 放たれる矢が風を切る音。しかし。


「『炎渦ファイアスパウト』」


 メッポルが呪文を詠唱すると、炎の竜巻が空に浮く僕らを包み、飛来する矢を全て灼き消した。


「ミニマップを見るのを忘れてはいけないメポ! ミニマップで点滅する赤の光点は、こちらを攻撃してきているメポ。赤の光点が点滅したら要注意! メポ!」

「ははッ、この渦巻きがあれば、無敵なんだろ、メッポル!」

「そうはいっても、ソウルの無駄遣いは禁物メポよ……? なにより、ほら!」


 メッポルは炎の渦を止め、村の端を指さす。


「囲いをハシゴで抜けようとしている村人がいるメポ! ミニマップは上下に対応していないメポ……だから、ああいう動きを察知するためにも、視界の確保は重要メポ!」

「どうすればいい、メッポル!」

「おまかせあれッ! ソウルをもらうメポよ……『火球ボーライド』!」


 メッポルの詠唱に合わせて、僕の中から熱があふれだす。

 炎は球体を形どり、矢を放ってきた村人と、ハシゴで囲いを抜けようとする村人へ飛んでいった。

 火球が命中すると同時に、爆発が起きる。命中した村人のみならず、周りの村人にも火が燃え移る。


「こうして直接、攻撃することもできるメポ! だけど、一発にたくさんを巻き込まないと、1ソウルで1ソウルを手に入れることになってしまって、無駄メポ……」

「なるほど、効率的に動かないといけないんだな」

「それに、ほら! 今の爆発で囲いに穴があいちゃったメポ!」

「馬鹿! 駄メッポル! あれじゃあ村人が堀に飛び込んじまうじゃないか!」


 僕の危惧したとおり、村人たちは、開いた壁の穴から村の外周を流れる堀の中に次々に飛び込んでいく。


「こんな時のために……『大魔法』があるメポよ」

「『大魔法』? どんな力なんだ、メッポル!?」


 僕は興奮してメッポルに尋ねる。


「『大魔法』は文字通り、ものすごく強力な効果をもった魔法メポ……それゆえに、払う代償も大きいメポ」

「いい! なんでも払うから、早く使わせてくれ!」

「『なんでも払う』……くくッ、ショウ、君はやっぱり最高メポ! 契約に基づき、異界の魂の一欠を捧げよう!」


 メッポルの宣言と共に、僕の中の何かが焼けて失われたような気がした。

 分からない。失ってしまったものが、どんなものだったかなんて、知ることは出来ない。

 それよりも。

 身を焦がし、天地を灼き尽くすような熱量が、身体の内から溢れだす感触に、僕は興奮を抑えられなかった。


「これは『課金アイテム』みたいなものメポ。ショウの魂自体を燃料に燃える炎、それが『大魔法』なんだメポ!」

「御託はいい! メッポル! 早くしないと村人が!」

「まったく……それじゃいくメポよ~『五行相剋異説ディシーヴハーモニクス水生火フレイムアクア』」


 メッポルの声が世界に響き渡り、周囲の物理法則を改竄してゆく。

 村人たちが飛び込んだ堀の水が全て……一瞬で炎に変わった。

 ソウルとなった村人たちは、光となって僕の元へ集ってくる。

 ミニマップを眺めてみれば、赤い光点はゼロ。村人たちは全て、焼けて落ちたようだった。

 僕は自分の身を抱きしめる。震えが止まらなかったから。


「はは、ははは……! なんだそれ、なんだよこれ! 圧倒的すぎるじゃないか、メッポル! なんで初めからこれを使わなかったんだ! すごすぎる! こんなの……こんな力があれば、村を焼くことなんて簡単すぎるじゃないか!」

「そうメポ! これがショウの手に入れた『力』なんだメポ!」

「焼こう、メッポル……もっと村を焼こう!」

「ふふ! ショウ……君は最高のパートナーメポ! けどその前に」


 ミニマップに赤い光点が灯った。ものすごいスピードで、こちらに向かってくる。


「ボス戦メポね……ステージ1 ストリカ村。ボスは黒の女神の戦士、アリュアスだメポ」

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