抗う者
思いつきです
「この実験が成功すれば、君は人間では無くなる」
花山博士が注射器の空気を抜きながら言う。
「このメシア細胞は天使の核と人間の癌細胞から造られた」
俺の身体は、高速具で固定されていて身動き一つ出来ない
「ひとたび君の体内に入れば急速に細胞を作り変える。今、君の形をしている細胞は一月もすれば無くなるだろう」
花山博士がそのキツネのような瞳で俺の顔を覗き込む
「いいんだね?」
「えぇ、どうぞ」
既に同意のサインはしたんだ。
この拒絶反応に伴う暴走対策の拘束椅子にだって自ら腰掛けた。
だとすればこの問答に意味はない。
あるとすれば、この男の優しさか、同情か。
「いい加減、窮屈なんですよ、この椅子。早く済ませて下さい」
花山博士は俺の言葉に満足したと言わんばかりに笑った
「この実験は既に4回失敗している。適合者なんているのか、実は僕も半信半疑だったりする」
おいおい…
「まぁ、君なら何となく大丈夫な気がするよ」
そう言いながら博士は俺の腕に注射を打った
……っ痛ぅ
針がぶっといのか、結構痛い。
俺は唯一動く眼球を動かし、身体にそれが入っている様子を眺めていた。
「 おめでとう、これで君は化け物の仲間入りだ」
博士のその言葉がヤケに印象的だった