小話8 他国のトリップ少女の噂。
「リナーシャ様、お聞きになりましたか」
「ん? 何を?」
「他国に異世界より落ちてきた少女が居るらしいのです」
その言葉にリナーシャは驚いたように目を見開いた。
異世界というのは、非現実的なものであるが実際にこの世界には時々異世界から迷い込んでくる人間が居ることをリナーシャは知っていた。
実際には見たことがなかったため、実際に居るんだという驚きにリナーシャは驚いていた。
「へぇ、そうなの?」
「はい。この世界の常識を知らないので、間違いはないと思います。それに珍しい黒眼黒髪の少女だそうで、ザナーシュの王が熱をあげていると聞きました。
侍女の言葉にリナーシャは特に興味がなさそうにへぇ、と呟いている。
「他にも商会のトップや貴族、ザナーシュ以外の国の王族とも接触していると聞きました。国をあげてのパーティーにも連れていっているようなのでこの国にも来るかもしれません」
「そうなの? おもてなしにしてあげなきゃいけないわね」
にこにこと笑っているリナーシャを見ながら侍女も笑うのだった。
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オマケ:会話文のみ リナーシャ様を慕う会のメンバーがただ喋っているだけ
「凄いですね。異世界から来た女の子」
「そうね。色々な男を落として回っていて、多くの人間に慕われているのでしょう?」
「…それはいいが、いくつかの国の王がそろって一人の女に執着しているというのは危険ではないか?」
「純粋で出会った人を味方につける性格のようですからね」
「……この国に来た時あの陛下が落とされたりしないよな?」
「大丈夫だと思われますよ?」
「そうです。陛下は20年近くずっとリナーシャ様一筋ですし」
「ヘタレだけど、リナーシャ様への思いだけは本物ですから」
「というより、その子って16歳なのでしょう? その子に惚れている中に30代後半まで居るのですけれども…」
「………今年39になるアクサブの王は18歳の王子が居ますよね。妃は確か、全部貴族とかで、女に興味なくて定期的に義務として通う以外してなかったはずなのですが」
「それが子供に落とされるものなのですかね? びっくりしました」
「ザナーシュの王は23歳ですが、確か婚約者がいますよね。あの国はうちの国とは違って、王だろうと妃は一人と決まっておりますが…」
「でも婚約者の方が熱をあげてるだけで、ザナーシュの王は興味ないはずですわ。この前ザナーシュの知り合いに教えてもらいましたわ。国のためにもなるし、王妃としてはいいが、女としては惹かれないと確かいっていたはずですわ」
「婚約解消でもするつもりなのでしょうか…」
「女遊びをしていたミナベスの王子もやられているようですね。あの人は女遊びが激しくて何人の女が泣かされたことかわからなかったものですが…」
「あの王子って王が甘やかしているからって気にいった女を襲ったり好き勝手でしたものね。…ルシア様がそんなにならなくてよかったですわね」
「マザコンなのが欠点ですけど、ルシア様はそれ以外はまぁ、いいですものね」
「貴族連中も結構その異世界の方に惚れていらっしゃるらしいのですし…」
「国の王族や貴族が、その子に執着するのは問題ではなくて?」
「狙われる恐れもありますね」
「……そんな事になったらきっと優しいリナーシャ様は悲しみますよね」
「その子を巡って戦争とか起こる可能性もあるのでは?」
「……それもリナーシャ様が悲しみそうです」
「その異世界の方の護衛でもしますか?」
「あとはやっぱり情報収集をやるべきですわね」
「それはそうですわ」
「戦争勃発と、異世界の方が酷い目にあうのをどうにか回避しましょう」
「そうですね。この国にその方が来た場合、リナーシャ様と仲良くなるかもしれませんし…」
「ルシア様は絶対に落ちなさそうだから問題ないな」
「ルシア様の理想はリナーシャ様ですものね。そんな方きっと他に居ませんわ」
「他の王子達や貴族はわかりませんね」
「でも落ちても、大抵の人間にはリナーシャ様に迷惑になる行為をしないようにといっておけばアピールはしても問題行動は起こさないんではなくて?」
「恋は自由ですけれども、執着しすぎて問題が起こるのは困りますものね。その時はわたくし達も動くべきですわ」
「それにしても異世界の方は少なからず今も大変でしょうね。女性陣からの嫉妬で大変な目にあってる恐れもありますわ」
「後宮の女の嫉妬は恐ろしいものですからね」
「この国の後宮は平和ですけど」
「リナーシャ様のお力は素晴らしいのです」
「まぁ、私達がやるべきことは戦争回避と、異世界の方の安全確保とリナーシャ様への安全確保ですね!」
「ええ。リナーシャ様は私達が守るのです」
「『リナーシャ様を慕う会』の名にかけて、リナーシャ様に平和をもたらしましょう」
「ええ」
「はい」
つい、トリップ少女的なのを思いついてしまい…、ちょっと出してしまったという。




