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トリップ少女がやってきた(ドルガ編)

 私は、ルナベルク王国の第二王子であるドルガ・ルナベルク。側妃であるチカ・ルナベルクとの間に生まれた王子である。

 私は目の前でわめいている、同じ王侯貴族だと考えたくもないような連中を前に呆れて仕方がありません。

 「ユイをどうする気だ!」

 「俺にこんなことをしていいと思っているのか!」

 「ユイは私の光なのだ」

 王だったり、王子だったり、大貴族だったりする連中が揃いも揃って異世界から来た存在に執着するとは……。というか、婚約者や妃が居る身でそちらを片づけずに求愛している意味が分からない。

 根回しも何もせずに異世界の少女を妃に迎え入れても破綻する未来しか見えないのは、私だけなのだろうか……いや、私だけではないはずだ。そんな当たりまえのことを、目の前の連中は分からないとでもいうのだろうか。

 リナーシャ様は穏便にすませてほしいと願った。あの異世界から来た少女には何の罪もないからと。それは、目の前のアホ共に対して穏便にすまして欲しいという願いではない。

 このアホ共は、自分たちが優位だとなぜか信じ切っているらしいが、客観的に考えてもリナーシャ様を敵に回して優位に立てるわけがない。大体この連中の国にもリナーシャ様信者はいるし、リナーシャ様にあんな無礼な真似しといとただですむと思っているのがおかしい。

 王が取り巻きとかしている国に関しては、さっさと王位を次代継承するために動いているようだし。多分、この連中は帰っても居場所はない。異世界の少女を恋焦がれた結果、全てを失うことになりつつある。これから改心したら別だが、改心するのだろうか。

 というか、こっちは兄上と父上が暴走しそうで抑えるので大変なのだ。あのマザコン兄上と王としては有能なのにちょっと馬鹿な父上はリナーシャ様が大好きで、『リナーシャ様を慕う会』がリナーシャ様の願いを叶えようとしているのに、暴走して邪魔をしてきそうなのだ。

 本当に……困ったものだ。

 「貴方たちこそ、このルナベルク王国で好き勝手にしてよいとお考えなのでしょうか。それは我が国もなめられたものです。あのような礼儀も知らない少女を国王陛下と王妃殿下の前に出すなどと、その時点で無礼なのはわかりませんか」

 「なっ、貴様ユイは——」

 「……貴様などと、貴方に言われる筋合いはありません。あの少女がどうという話ではありません。問題なのは貴方方です。貴方たちが王侯貴族としての在り方を間違えているのが問題です」

 「なっ!!」

 「それになっ!しか言えないのですか。私が言いたいのはですね。貴方たちが如何に王侯貴族としてありえないことをやっているのかです。異世界から来た少女に恋焦がれることは勝手にしてください。私共にとって正直どうでもいいことです。しかし、恋焦がれたからと立場を放棄して傍にいる? それはありえません。そこまでしたいというのならば、立場を全て捨てるべきです。捨てて平民として少女に恋焦がれればいいではないですか」

 はぁ、とため息交じりに告げてしまう。

 私だって好きな少女と共にいることを望んでいる。私は第二王子だから王太子ではなく、将来的に王位を継いで後宮を作る必要はない。でももし私が王太子であったならその立場を捨てるだろうと思う。好きな女だけを愛したいならそのぐらいしろと思う。

 兄上はリナーシャ様以外はどうでもいいと思っていて、後宮を作っても女におぼれることもなさそうでその点は王に向いているとは思う。……後宮に入った女性は気の毒だが。

 異世界から来た少女を迎えたいならそれなりに準備をしなければならない。準備もせずに自分がやらなければならないことを放置して、立場だけ持ったまま権力を振りかざしているから無様なのだ。そもそも、見た限りおそらく異世界の少女と恋人として思いをかわせているものは目の前にいなさそうだし。

 それでいて全員異世界の少女を妻にする気とか、順序というものがあるだろう。というか、この連中、まさかライバルがいなければ無理やりでも異世界から落ちた幼気な少女を妻にするつもりだったのだろうか。ドン引きである。

 王侯貴族は権力を持つものだ。しかし、それは何をしてもいいというわけではない。そんな当たりまえのことが目の前の連中には分からないのだろうか。

 「俺は王だぞ!!」

 「私に向かって第二王子ごときが!」

 目の前でそんな風にきゃんきゃん吠える連中に、私はため息を吐いた。

 「改心する気がないなら貴方たちは破滅するだけですよ? というか、本当に関心する気がないなら始末しますよ? 貴方の国からは許可があるのです。始末してでもいいから暴走を止めてくれという嘆願書が」

 「なっ!」

 本当になっ!しか言えないのだろうか。現状リナーシャ様が嫌がるから無駄な殺生はする気はないけれど、そういう嘆願書が来ているのは事実である。そんな目で側近に見られていることをこの連中は自覚すべきだと思う。



 私はそんなことを考えながら目の前で呆然とした顔をするアホ共を前に溜息を吐いた。







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