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トリップ少女がやってきた(カイン編)

こちらの更新は気づけば久しぶりになりました。待っていてくれる方いるのかなと思いますが、投稿します。

カインは宰相様のお名前です。

 ―――私はユイ様に貴族社会をきちんと理解してもらった上で、これからどうしたいのかを聞きたいですわ。もし平民として生きるにしても貴族として生きるにしてもあの方は常識を知りませんからきちんと教えて差し上げたいですわね。

 ヒナサ様が聞いたリナーシャ様の望みはそれのようだ。正直あれだけ無礼な真似をした平民の少女などどうとでもする力がリナーシャ様にはあるし、自分の立場もきちんと理解もせずに愚かな真似をしている少女の取り巻きに対して行動を起こすことも出来る。リナーシャ様を慕うものは、自国、他国含めて驚くほどの数が居る。それも権力者が多いのもあり、リナーシャ様が願えばある程度の事はかなえられる。

 「お父様、あの方々はどのようにしますか?」

 「リナーシャ様の望みは、あの少女に貴族社会を理解してもらったうえで、選択を与える事です。だから、まずはこの世界の常識を叩き込み、現状がどれだけ歪な状況であるのかを教える事が第一でしょうね」

 娘のチカと私は話していた。

 リナーシャ様の望みは出来るだけ叶えたいというのが私たちの総意なのです。尤も、常識を理解した上でもリナーシャ様に突っかかるようでしたら、どうにか対処をしなければならないが。

 「それが一番なのは理解しておりますわ。それよりも……陛下とルシア殿下に注意を払っていた方がいいのではないかと正直考えております」

 「……もう既に勢いに任せて行動しないように見てもらっている」

 「……あのお二人は『リナーシャ様を慕う会』を知りませんし、リナーシャ様を大好きですから二人そろったら何かしでかしそうですものね」

 リカの言葉を聞きながら、それはその通りだと考える。

 陛下は……、基本的に冷静な方で、君主としては有能だ。でもリナーシャ様の事は本当に特別大切に思っているのだ。意地を張って八年距離を置いていたが、やはり陛下が本当の意味で愛している女性はリナーシャ様だ。

 そしてルシア殿下は……、殿下を知るものからは心配になるほどに母親であるリナーシャ様に傾倒している。将来結婚をするのならリナーシャ様のような方が良いと言い張り、自身の母親のリナーシャ様をまるで女神か何かのように思っている。こちらも基本的には冷静だが、リナーシャ様の事となると別だ。

 その二人が勢いに任せて行動する可能性がないとは言えない。特にルシア殿下。あの異世界から来た少女との会見の時に誰よりも恐ろしい顔を浮かべていた。

 リナーシャ様の望みをかなえるためにも、勢いのままに行動をされたら困るのだ。相手をつぶすだけなら簡単だが、リナーシャ様の望む選択肢を与えて生かすというのは色々試行錯誤が必要になる。

 あとは、あの少女の取り巻きと化している者たちは他国の王族・貴族といった権力者ばかりだ。少女の甘い言葉に救われただの、現に現れた女神だの言っているらしいが、正直頭が沸いているのではないだろうかと思ってならない。

 たった一人の少女によって、これだけ色々な影響を及ぼしているのも驚きだ。

 「お父様、取り巻きの男性たちに関しては、各国に話は通してあるのですか?」

 「ああ、そのことなのだが、寧ろどうにかしてくれという書状が来ているよ。あのもの達が、ルナベルク王国にやってきたのは決して偶然ではないようでね、面倒事を我が国に押し付けてきたともいえる。ただそれで断られたくなかったようで、書状は先日の会見直後に渡された」

 「そうなのですか。やはり、リナーシャ様がいるからでしょうか」

 「リナーシャ様なら何とか出来るのではないかという期待を込めて書状を送ってきたようだ。あの少女に魅了されているものが王宮にも増えてきて収拾がつかなくなっている国もあるようで、我が国ならリナーシャ様という存在が居るからこそそのような状況にはならないだろうという事だ。各国に借りを作れるといった点では悪い話でもない」

 「各国の望みは静粛ですか、更生ですか」

 「どちらでも構わないようだ。たった一人の少女のために国を傾けようとする王など害意にしかならない。そもそも、リナーシャ様の第一の望みはあの少女の事で、取り巻きの事は現状何も明言はしていない」

 「でも、リナーシャ様なら、周りの不幸は嫌がるはずですから、なるべくぎりぎりまでは静粛ではなく、更生の方向で持っていくべきでしょうね」

 「そうだが、少なくとも王に関してはこの国で騒いでいる間に王位は王子へ譲られるのではないかと思う」

 「……まともな人たちが今一生懸命国で頑張っておられるのですね」

 そもそも、少女に付き従いたいからという理由で王や王子、貴族が他国に滞在するというのも馬鹿げている話だ。王とは、外交で他国を訪れたりはもちろんするが、基本的に多忙な存在だ。中には王位だけを持っていて権力はないようなそんな王もいるが、実権を持つ王は忙しいものだ。だというのにそれを放棄している。まだ子供の取り巻きは良いとして、王などといった大人で多忙なはずの存在が何をしているんだ? と頭を疑うのは当然だろう。

 政務はまともな人間が一心にこなしているらしく、王がこの国で騒いでいる間に王位継承が行われる事だろう。寧ろ好きにやってくれだの、返さなくていいだのそんなことまで書いているよっぽど迷惑を被ったのであろうと同情するような書状まであった。まぁ、少女の取り巻きになっているものなどいらないので返すが。

 「まずは、引き離しを行う。取り巻き達を少女に近づけさせないようにする。そして取り巻き達に関しては、自分の立場を理解してもらうのが一番でしょう。少女はまだこの世界の事を知らず、現状が当たり前と思い込んでいるという可能性がありますが、取り巻きのもの達に関してはそうではありませんから、遠慮なくビシバシいかせてもらいましょう」

 相手が王だとか、王子だとか、貴族だとか……、正直書状がなかろうがあろうが、どうにでも出来るのだ。

 書状がなかったとしても私たちは、彼らをどうにかしただろう。それだけ彼らの言動は目に余るものがある。例え、それで戦争が勃発しようとしたとしても、その前に対処しようとすれば出来る。幸い、今回の取り巻き達の国には、リナーシャ様の伝手がある。最悪どうにでも出来る。

 


 そんなことを思いながら、あの馬鹿達をどうしてくれようかと考えている私は、リナーシャ様にあのような態度をされてなんだかんだで怒っているのだ。





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