表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

トリップ少女がやってきた(ヒサナ編)

 「ユイ様は大丈夫なのかしら?」

 目の前でリナーシャ様は心配そうにその顔を歪めている。

 そんな表情にこの場に存在するリナーシャ様以外の人間(侍女、護衛の騎士、暗部の人間含む全員リナーシャ様を慕う会のメンバー)はあの異世界からやってきた少女への好感度は益々下がったことだろう。

 リナーシャ様を慕う会の会長として、リナーシャ様がそんな憂いた表情を浮かべる元凶に良い思いは感じませんわ。私はリナーシャ様の笑顔が好きですの。人を穏やかな気持ちにさせる、日溜まりのような笑み。リナーシャ様は、まさしくこの国の太陽。リナーシャ様が微笑んでくれているだけで、皆が幸せな気分になれる。

 そういう方だからこそ、私はリナーシャ様が大好きで、リナーシャ様が笑ってくれるためならなんだってしてあげたいと思うのですわ。だってリナーシャ様が笑ってくだされば、とっても幸せな気持ちになれるんですもの。

 正直この国は陛下がいなくても上手く回ることでしょう。このルナベルク王国の核であり、太陽はリナーシャ様で、リナーシャ様の望む事が国の決定のようなものです。だってルナベルク王国の中核にいる者達はほとんどがリナーシャ様を慕う会のメンバーなのですから。

 「リナーシャ様は、本当に優しいですわね。あんな無礼な方にまで心を砕くなんて」

 「だって、ヒナサ様。ユイ様の元々生きていた世界ではユイ様の年頃の方はまだ子供なのではないかと思うんですわ。それにユイ様の周りにいる殿方は、ユイ様を甘やかして甘やかして、そしてユイ様のためになる指導をしていないように思えましたの」

 リナーシャ様は、人を見る目に優れている。人がどういう状況かを理解する能力ももっている。

 そんなリナーシャ様がいうのだから、ユイ様は本当にそういう方なのだろう。

 「確かに周りは甘いかもしれませんが、だからといってユイ様があのような態度をリナーシャ様にして良い理由にはなりませんわ」

 「……もう、どうしてルシアもヒナサ様もそんなことでそんなに怒ってるの? 私は気にしていないんだから」

 困ったように笑うリナーシャ様は、本当に優しい方だ。リナーシャ様が怒らないからこそ、私たちが変わりに憤慨するのだ。というか、リナーシャ様が気にしなくても気にしますわ。本当にご本人は気にしていないのでしょうけど。

 「それで、リナーシャ様はどのようにしたいんですの? 私としましてはあの方々を取り巻き共々どうなろうと知ったことではないのですけれども」

 「もう…皆さん過激なんですから。私はユイ様に貴族社会をきちんと理解してもらった上で、これからどうしたいのかを聞きたいですわ。もし平民として生きるにしても貴族として生きるにしてもあの方は常識を知りませんからきちんと教えて差し上げたいですわね」

 こういう方だからこそ、私たちはリナーシャ様のために行動したくなるのですわよね。リナーシャ様って基本的に平和主義者ですもの。戦争とかも嫌いで、人が争う事も嫌いで、本当に血が繋がっているのに争うのは嫌だって後宮をここまで平和に出来るのはリナーシャ様だけですわ。

 「そうですわね、あの方自身に決めてもらうのが一番でしょう」

 「ええ。そうですわ。是非後悔のない選択をしてほしいですもの」

 にこにこと笑うリナーシャ様の笑顔を見ていると本当に嬉しくなりますわ。ああ、とりあえずトリップ少女への対策を練るために『リナーシャ様を慕う会』の臨時会議を開かなければならないわ。だってトリップ少女は多くの殿方を魅了していますし、その全てが権力者という割と脅威な存在ですわ。

 私は正直少し不安なんですもの。あの、この世界の常識を全く知らないような少女がこれから何を起こすのか。私たちのリナーシャ様の笑顔を消すような存在になると言うなら、許しません。あの少女の取り巻きとかしている方々は、あの少女を否定する存在を許さないようですが、リナーシャ様を許さないなんて巫山戯た事を言う輩は私たちが逆に許しません。

 ああ、ダメですわ。リナーシャ様が大切でたまらなくて、リナーシャ様の笑顔を失わせる存在なんて許せなくて、私たちの平和な暮らしを脅かすかもしれない彼らの事が正直嫌いですわ。

 ダメですわね、もっと、もっと冷静にならなければ。

 ああ、やっぱり相談をしなければなりませんわ。これからどうするべきか。ルシアや陛下も暴走するかもしれませんし。これから『リナーシャ様を慕う会』の会長として色々決断をしなければなりませんわね。ああ、面倒ですわ。トリップ少女さんなんてこなくて良かったですのに。

 「ヒナサ様、どうしたんですの?」

 「……ふふ、何でもありませんわ」

 ぼーっとしていたらリナーシャ様に心配そうに問いかけられてしまった。それに対して、私は笑う。

 リナーシャ様。私たちの太陽。リナーシャ様を悲しませたくない。リナーシャ様の笑顔を曇らせたくない。




 ――そう、心から望むから私たち『リナーシャ様を慕う会』は、あの少女に対してもリナーシャ様が悲しまない対応をしてみせましょう。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ