遠くから
届いてと願った君へと思いは
いつの間にか心の奥底へとしまわれてしまったけれど
それはとても温かく、切ない記憶
だから、目を閉じれば浮かぶ君の姿に
小さく微笑みながらも
それを忘れようと思っていた
けれど、また君と出会ったとき
久しぶりだった
本当に久しぶりで、信じられなかった
だからだろうか
心が浮き立った
君を忘れようとしていたはずなのに
君を探してしまっていた
声をかけたかった
話したかった
もっと近くに寄りたかった
見て、もらいたかった
けれど、その思いに背を向けて
遠くからそっと見た
辛かった
近くにいるあの子が憎かった
けれど、それは当然のことと受け止めていた
「ずるいよ」
口からこぼれた響きは誰にも拾われず
「こっち、向いて」
口からこぼれた願いは決して届かず
もう、離れなければいけないとわかっているのに
もう、想ってなんかいけないとわかっているのに
止まらない心
一体、どうすればいい……
シリーズとなった『君』への三作目です。
もし何か感じてくださったのならば、そちらのほうも読んでくださると嬉しいです。