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そのご

 山小屋の近くではまだ激しかった雨であるが、離れるにつれてどんどん弱まっていった。

 やっぱり、あのやたら冷たそうな女の人は雨女で合っていたようである。

 雨が弱まると同時に雷の音もどんどん小さく遠くなって、三人はやっと一息ついた。

「つ、捕まらなくてよかったのにゃ」

「捕まってたら、あたし達は今頃あの袋の中だったのか」

「た、たぶん、そうだと、思ぅ」

 雨雲のせいでわからなかったのもあるが、あれからけっこう長い時間走っていたらしい。

 いつの間にか、太陽は赤味を帯び始めていた。

 三人は息を整えながら、ゆったりとした速度で歩き始める。

 今気付いたが、着物の裾や袖、それになにより足元が泥でぐちゃぐちゃになっていた。

 これもそれも、全部雨女のせいだ。今度会ったら、絶対に懲らしめて…………はできないなぁ。

 と、三人が雷様と雨女について、つらつらと文句を言っていた時である。

「あぶっ!」

 タマミドリが小さな悲鳴を上げたのである。

 途中で頑張って飲み込んだものの、ヒナノもシャオもしっかりと聞いていた。

 特に猫又であるヒナノの耳には、これ以上ないくらい、くっきりしっかりちゃっかりと。

「タマ、どうかしたのかにゃ」

 時々鋭い直感――野生の勘ともいう――を発揮するヒナノは、今のタマミドリの悲鳴からなにかを感じ取ったらしい。

 言葉がなぜか棒読みになっているのがその証拠だ。

 またそれに便乗するように、シャオもじぃ〰〰〰ってタマミドリの目を見つめてくる。

「じ、実はぁ……」

 ついに根負けしたタマミドリは、さっきの悲鳴の理由について話し始めた。

「地図、落としちゃったみたぃ」

 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 。

「タマ!」「なにやってるのかにゃ!」

 なんとも言えない沈黙が数秒流れた後、ヒナノとシャオは耳から入った情報をようやく理解したようだ。

 ひうっと縮こまるタマミドリであるが、落としてしまったものは仕方ない。

「たぶん、さっきの山小屋、だと、思うけどぉ」

 それを聞いたヒナノとシャオは、うっとさっき枝豆を食べた時のようなにがぁい顔になる。

 今からあそこに戻るのは時間がかかるし、もし戻ったとしてもさっきの二人がいたら、さらわれちゃうかもしれないのだから。そう考えると、やっぱり進むしかない。一応、方向は合ってるはずだから、このまま進めば宝のある場所の近くまでは行けるだろう。

 方針が決まった所で、一番元気の有り余っているシャオを先頭に、道なき道を歩き始めた。

「タマァ」

 歩き始めてすぐ、シャオは後ろのタマミドリを振り返った。

「なあにぃ?」

「あとどれくらいで着くんだ?」

「もうちょっとだと思うんだけどぉ」

 タマミドリの記憶が正しければ、もうそれほど遠くではないはずである。

 再び膝まで伸びてきた雑草をかき分けながら、三人は斜面をひたすら歩き続けた。

 すると突然、

「にゃ!」

 ヒナノの目がきらりと輝いた。

「ヒナノ?」「ヒナノちゃん、どうしたの?」

 が、ヒナノはそんな二人を無視して、斜面を一気に駆け下りた。

 そして、

「道だにゃあ!」

 下りきった所には、狭いながらも人間の手によってきちんと整備された、歩きやすい道に出たのだ。

「これって、私達が最初に通ってた道だよぉ!」

 道に出たタマミドリは、感涙にむせびながら鼻をすする。

 そうこの道こそが、三人が最初に歩いていた道なのである。

 川に立ち寄ったり、豆腐をいただいたり、雨女にさらわれそうになったり、地図を落としたり。色々なことがあって大変だったが、それも全部この近道のためであったのだ。

 こうなってしまえば、あとはこっちの物である。宝の目印となる場所は、この道の近くに非常にわかりやすい形であるのだから。

「よっしゃ、がぜんやる気が出てきたぜ!」

 シャオの目にも、体が溶けないのか心配になるくらい、熱い炎が灯る。

「うぉっしゃぁああああ! 二人ともあたしについてこい!」

 暴走超特急と化したシャオは、目に灯る炎を力に変えて、細い道を大爆走。

 もはやヒナノにも止めることはできない。

「シャオ待つのにゃ! 先頭は譲らないのにゃ!」

 さっきまでシャオが先頭だったのは、すっかり頭から消えているようである。

 ヒナノは自慢の足を生かして、シャオの追従を始めた。

「二人とも、待ってよぉ……!」

 二人のテンションの高さに唖然としていたタマミドリであるが、はっとなってとてとてと二人を追いかけ始める。

 その表情は、どことなく楽しそうであった。



     ●



 三人は頭をキョロキョロとせわしなく動かしながら、目印となる滝を探していた。

 あとちょっとで見つかると思うと、ここまで歩いてきた疲れなんてなんてことはない。

 ヒナノの目には大判小判、シャオの目には菓子の数々がそれぞれ浮かんでいる。それはまだ気が早いだろうとも思われるが、それだけ期待も大きいというわけだ。

「シャオ、タマ。しっかり探すのにゃ」

「わかってるぜ」

「ヒナノちゃんもちゃんと探してねぇ」

 それからもうちっとばかし歩いていると、遠くの方から――ザァァァァ……、という激しい水の音が聞こえきたのである。三人は互いの顔を見合わせ、わぁぁっと頬をゆるませた。

 ヒナノの耳がぴくぴくと動き、音の聞こえてくる方向を探し始める。

 きらりーんと、ヒナノの目が光った。

「こっちにゃ!」

 ヒナノは分かれ道の左側を指さすと、だーっと走り始める。

「おい、ヒナノ!」

「ま、待ってっよぉ……」

 シャオはともかく、タマミドリの方はすでにばてばてだ。

 見かねたシャオは、急ブレーキをかけてタマミドリの所まで逆走すると、背中の方を向けてしゃがみ、にやっと笑みを向ける。

「乗れって」

「……ありがとぉ」

 感極まったタマミドリは、嬉しくて涙が出そうなのをなんとか我慢して、満面の笑みを見せた。

 それからシャオの背中にぴたっとおぶさり、首に腕を回す。歩いたり走ったりして火照った体には、シャオの冷たさが心地いい。

「よっし、行くぜぇえ!」

 お客様を一人乗せた暴走特急シャオは、ヒナノを追って発車した。



 シャオがタマミドリを背負って走り始めてから数十メートル辺りで、二人はヒナノを発見した。思っていた以上に、近くにいたようである。

 だが、どうにも様子がおかしい。シャオほどではないにしろ、じっとしているのが苦手なヒナノが、動きを止めたまま食い入るようになにかを見つめているのである。

 タマミドリはシャオの背中から降りると、互いに首をかしげながらヒナノに近付いた。

「ヒナノ、どうしたんだ?」

「滝でも見つけたのぉ?」

 二人の問いかけにも、まるで反応がない。いったいどうなっているのだろうか。

 だがその疑問も、ヒナノの隣まで来ると解決した。

「おぉぉ……」

「きれぇ」

 二人の目に飛び込んできたのは、目印の滝である。

 ただ、それだけではない。

 滝壺から巻き上がる真っ白な水滴が銀幕を作りだし、七色に輝く虹の橋を映し出しているのである。

 それ以外にも、存在感を主張する滝を流れる水、圧倒的な力強さを感じる重厚な落下音。それらの全てが、三人の心をがっちりとつかんでいた。

「山の中にも、こんないいとこがあったんだにぁ」

「そうだなぁ。よくわかんねーけど、良いもん見れた気がするぜ」

「うん。なんかすっごく、いい気持ちになったねぇ」

 とまあ、しばし大自然の絶景に見とれていた三人であるが、ここでようやく本来の目的を思い出した。

「あ、お宝探さなきゃ」

「にゃっ! そうだったにゃ」

「早く降りようぜ」

 足元に注意しながら、急な岩場をゆっくりと下っていく三人。

 苔で滑りそうになったり、シャオが慌ててヒナノの尻尾を握ったり、タマミドリが下を見てちょっと怖くなったりしながら、三人はなんとか滝の下側にたどり着いた。

 それから、さっきまで自分達のいた場所を眺める。

「あたしら、さっきまであそこにいたのか」

「だにゃ」

「そうだねぇ」

 思っていた以上に高い。今見上げている滝の、すぐ隣にいたようだ。

 それを感慨深げに眺めた後、ついに宝探しの始まりである。

「それで、宝って、どの辺に、埋まってるん、だ!」

「タマ、わかるかにゃ?」

「そこまでは書いてなかったょ。それに、けっこう大雑把だった気もするしぃ」

 シャオがバッタを追いかけている間に、ヒナノとタマミドリは方針についてあれこれ話し始めた。

 適当に掘っても埒が開かないし、そもそも埋まっているのかもわからない。

 タマミドリはともかくとして、ヒナノもない頭を使って一生懸命考える。

 一生懸命考えていると、今度は別のものがすごぉく気になり始めた。

「なんだか、変なにおいがするにゃ」

「変なにおい?」

 タマミドリの問いに、ヒナノは鼻をつまみながらうんうんと首を振る。少し悩んだが、危なそうな雰囲気もないので、行ってみるよう。

「ヒナノちゃん、それどっち?」

「ん」

 ヒナノは滝の水が流れる下流の方を指差した。

 その方向へすたすたと進んでいくタマミドリ。ほどなくして、ヒナノの言っていたらしき鼻にツンとくる匂いが漂い始める。

『あれ、でもこれって……』

 覚えのある匂いに、タマミドリは更に歩みを進めた。

 すると、

「やっぱり……」

 水面からは、うっすらとだが白い煙が立ち上っている。

「これ、温泉だぁ」

 タマミドリはにこにこしながら、ヒナノとシャオの所に戻った。



「温泉だと!」「ほんとかにゃ!」

 タマミドリの話を聞いた二人の興奮度は、一気に最高潮まで達した。

 ただし、

「水風呂はあるのか?」「早く入りたいのにゃぁ」

 反応は正反対である。

「大丈夫だょ。ちゃんと見つけてきたから」

「タマー! やっぱりタマは最高だぜ!」

 シャオはタマミドリに抱きついて、冷たいほっぺをすりつけた。

 嫌がる仕草をするタマミドリだが、やっぱりどこか楽しそうである。

「じゃあ、行くのにゃ」

 先陣を切ったのはヒナノ。やっぱり匂いが苦手なのか、鼻をつまんでいる。

 それに続く形で、タマミドリを引っ張りながら、シャオもとてとてとヒナノについて行った。



「にゃはー」「おぉ……」

 タマミドリの予想通り、ヒナノとシャオは目をらんらんと輝かせながら、その光景に見入っていた。

 それから、下の方を見る。

 泥んこまみれになった足が、仲良く二本ずつ三人分並んでいた。

 互いに顔を見合わせ、にぃと笑う。三人の意見が一致したようである。

 と、いうわけで、

「あつっ」

「大丈夫? ヒナノちゃん」

「だ、大丈夫なのにゃ、たぶん」

 ヒナノとタマミドリは、一足先に温泉を堪能していた。と言っても、足だけであるが。

 だが、滝の水が混じって適度な熱さになったお湯は、とても気持ちがいい。

 今日みたいに寒い日には、もってこいだ。

「ふぅぅ、これであたしも入れるぜ」

 その隣では、シャオが水風呂とも言える水たまりに、両足をつけている。

「こ、氷……」

「ぶるぶる。見てるこっちが寒くなってくるのにゃ」

 ちなみに、シャオが足をつけている水たまりには、キンキンに冷えた氷が浮かんでいる。

 もちろん、雪ん子のシャオが作ったものだ。

「仕方ないだろ。あたし熱いの苦手なんだから」

 まあ、お湯なんか浸かった日には溶けちゃいますので。

「わ、わかってるから」

「そんな怒らなくてもいいのにゃ」

 三人は時折、気持ちよさげなため息をつきながら、当初の目的をあっという間に忘れて温泉を満喫していた。なんだか、足湯の気持ちよさに目覚めそうである。

 そのままお宝のことなんか忘れてまった〰〰りしていると、意外な人物が現れた。

「おぉ、昼間の三人でねえが」

「ヒナノさんとシャオさんとタマミドリさんですよ。タイゾウさん」

 小豆洗いのタイゾウさんと、豆腐小僧のヨサクが現れたのだ。

「あぁ、そうじゃったそうじゃった。にしても、うぬともおうとったとは、偶然もあるもんじゃのう」

「そうですねぇ」

 タイゾウさんとヨサクは三人の側まで歩いてくると、その隣に腰を下ろした。脇には手ぬぐい数枚と、なぜか風呂桶が。

 しかも、それだけではない。

「ヒ、ヒヨリ……。ここの湯が腰にいいと言うのは本当なのか……?」

「さぁ」

「なんじ、ぃぃぃいい!」

「安静になさってください。腰に障ります」

 なんと、あの怖い雷をいっぱい落とす雷様のおじいちゃんと、子供をさらっていく雨女のおばちゃんまで……。

 いったいぜんたい、にながどうなっているのだろうか。

「タイゾウさん、ご無沙汰しております。ヨサクも元気でしたか?」

「ヒヨリさんでねえがぁ。久しぶりですのう」

「今日は、雨は降らせないんですか」

「えぇ。お湯に入る時くらいは、ね」

 雨女――ヒヨリと言うらしい――は、タイゾウさんとヨサクに軽く会釈をすると、その隣にいる三人へと目をやった。

 間違いない。さっきの猫と、冷たいのと、よくわからないけどとろそうな三人である。

 ヒヨリはヒナノに話しかけようと近寄るのだが、

「さ、さらわないでにゃ!」

 と、なにやら本人の預かり知らぬ所で誤解されているらしい。

 ヒヨリは困った風に頭をポリポリと書きながら、三人を見下ろす。

 さっきまで緩みきっていた表情は、親に怒られる直前のように恐怖一色に染まっていた。

 このまま怖がらせているのも面白いが、それではかわいそうなのでここらで誤解を解いておこうか。

 ヒヨリは三人と目線を合わせるためにしゃがみ込むと、後ずさる三人に話しかけた。

「別に私、あなた達をさらったりとかしないから。だからそんなに怖がらなくても大丈夫ですよ」

 いつも一緒にいる雷様に話しかける時より、トーンを上げる。いつものしゃべり方だと、逆に怖がらせかねない。

「で、でも、雨女は子供をさらっうって。持ってる袋は、子供を入れるためだって……」

 それでも信用していないタマミドリは、知っていることをヒヨリに言い返す。

 ヒヨリは頭に手をやってため息をつくと、今度はタマミドリの目を見て話し始めた。

「私がさらうのは人間の子供だけで、妖怪やお前みたいな神様もどきは対象外ですよ」

「神様もどき……」

 それも、すんごぉく冷めた目で。

 神様もどきがよほどショックだったのか、いきなり地面に『の』の字を書き出すタマミドリ。

 それには構わず、ヒヨリは続ける。

「あと、『さらう』ってのも違いますから。迷子の子供を親の所に連れてってるだけですから」

 それを聞いた瞬間、三人は鳩が豆鉄砲を食らったような、間の抜けた顔になった。

 つまり、さらわれてたと思っていたのは、迷子の子を親の所に連れて行ってただけ?

「ヒヨリちゃんは、昔から優しいええ子じゃからなぁ。はっはっはっは」

 しかもタイゾウさんのお墨付きである。

 三人はなんだぁ、と緊張が切れてその場にへたり込んだ。

「さて、誤解の解けた所で、ちょっと聞きたいことがあるんですが……」

 と、そこで再びヒナノに目をやり、

「そこの猫さん、父親の名前ってヒュウガじゃないかしら?」

「にゃっ!?」

 ヒュウガという名前に反応し、さっきとは別の怖がる表情を見せるヒナノ。どうやら、ヒヨリの勘は間違ってなかったようである。

「ってことは、ヒナノっていうのはあなたですね」

「な、なんでヒナノの名前を知ってるのにゃ!?」

「毛並みがそっくりですから」

 と、ヒヨリはにっこり笑って見せる。色々な意味で。

 やはり、呼んでおいて正解だった。

 ヒヨリは神様とは別の方向に目配せすると、怪しい気配をぷんぷんさせてヒナノに語りかける。

「それで、ヒュウガ様が仰っておられたんですよ」

「な、なにを、かにゃ」

「『うちの娘がなにかしでかしたら呼んでください』って」

 満面の笑みのヒヨリに対して、ヒナノはまさに地獄の底へ突き落とされたような顔をしていた。

「ではヒュウガ様、後はお任せします」

「うむ。ご苦労だったヒヨリ殿」

 どこから現れたのか、いつの間にかヒヨリの隣には、ヒナノのお父さんであるヒュウガがいた。

 確かに毛の色や逆立ち具合なんかは、ヒナノと瓜二つと言ってもいいくらいにそっくりだ。

「ヒナノ、これはいったいどういうことだ? ヒヨリの話によれば、この地図はお前が落としていったらしいんだが」

 と、ヒュウガは例の宝の地図を出してみせる。

 どうして父ちゃんが、と思ったら、ヒヨリが渡したらしい。ヒナノと目があった瞬間、意地汚そうな笑いを浮かべていた。

「ヒナノ、どこを見ている?」

 よそ見していたのがバレてしまい、より高圧的な声がヒナノに突き刺さってきた。

 ヒナノは崩したままだった足を正座に切り替えて、まず最初にごめんなさいを言う。

 その間にヒュウガへの言い訳を考えなければ。あまり性能の高くないおつむを総動員し、最適な答えを導き出した。

「それで、なんでお前がこの地図を持っていた?」

「も、もらったのにゃ。人間から」

「お前がなぁ。なにか良いことでもしたのか?」

「おばあちゃんの荷物を持ってあげたのにゃ!」

 もちろん、口からでまかせである。

「そうか。父さんが聞いたのとはちょっと違うなぁ」

「えっと、どんな内容なのかにゃ?」

「昨日のサンマに続いて、今日は団子を盗んだそうだな」

 その一言にギクリとしたのは、ヒナノだけではない。シャオとタマミドリも完全に動きを止め、目の動きだけでヒナノのお父さんを見つめる。

「この地図はずっと昔、父さんが人間達にこの温泉の場所を記して渡した地図なんだが……」

「宝の地図じゃないのかにゃ!?」

 あ…………。言ってから口をふさぐが、もう遅い。

 人間からもらったなら、これがちゃんと温泉の地図だとわかっていなければおかしい。

 つまり、今の一言だけで、ヒナノが良からぬ方法で地図を入手したことが判明したのである。

「ヒナノ、どうしてこれが宝の地図だと思ったんだ?」

 もはや逃げられない。ヒナノの判断は速かった。

「逃げるのにゃ!」

 一瞬にして身をひるがえすと、今日一番の速さで駆け出した。

「待ってょ、ヒナノちゃん!」

「あたしを置いていくな!」

 ヒナノのお父さんの説教は、雷なんてめじゃない。

 タマミドリとシャオも一瞬遅れて、その場から逃げ出した。

「待たんか、悪ガキ共がぁああああ!」

 山奥の秘境温泉に、ヒュウガの声が響きわたる。



 これはむかしむかし、人と妖怪が共に在った頃の物語である




挿絵(By みてみん)

 そんなわけで、初めての人初めまして。久しぶりの人、お久しぶり。今回は学祭のサークル誌にのっけるのに、読みきりとして描いた初めての物になるわけですね。尺の関係で最後強引にまとめちゃいましたけど。最初から最後まで、本当に何も起きないお話です。ほんわかしたの、どうやら私には向かないみたいですね……。まあ、また今年も書くんですけど。そして最後のあの絵ですが、あれはリア友に描いていただきました。当初は私の部分の扉絵的なものだったんですが、なぜかサークル誌の表紙まで出世しちゃって、描いた本人もびっくりしてました。はい、どうでもいいですね。それでは、ご清読くださり、ありがとうございました。ご縁があったらまたお会いしましょう。

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