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そのに

 三人はタマミドリを先頭に、急な山道をゆっくりと歩いていた。かれこれ一時間くらい、ずうっと。

「タマ〰、まだかにゃ〰?」

「まだだよぉ」

「タマ〰、のどかわいたぜ」

「我慢してよぉ、シャオちゃん」

 なので、こんなやり取りもかれこれ十九回目である。

 子供の足では辛い山道である上に、景色は道の両側に深い森があるだけ。

 特に面白いことがあるわけでもないので、ヒナノとシャオはすでに疲れ切った顔をしていた。主に精神的な意味で。

 しかもシャオの言う通り、そろそろタマミドリものどが渇いてきた所である。

 ヒナノの勢いに任せてなんの用意もせずにやってきたことを、タマミドリは今頃になってようやく後悔していた。

 よくよく考えれば、シャオはもちろんのこと、ヒナノも宝探しの準備なんて考えているわけがないのに。

 タマミドリは自分のうかつさに、はぁぁ、と年に似合わない重たいため息をつくのだった。

「タマ〰、まだ着かないのかにゃ〰?」

 二〇回目の同じ質問が飛んできた。

「……まだまだだよぉ」

 そろそろ面倒になってきたので答えるのを止めようかと思ったが、そうするともっと面倒なことになるので答えねば。

 なぜなら、

「疲れた、足痛い、のど渇いた、休みたい〰〰!」

 シャオとそろって駄々をこねられては、宝探しどころではないからだ。

 ヒナノはヒナノで、相手にされないとすぐにぐずってしまうのである。なので、適当に相手をしてやらねばならない。

「シャオ、うるさいにゃ」

 まあ、適当に相手をしておけばシャオの相手をしてくれるのだが。

「だってえぇ、ずっと歩いてばっかでつまんない! あと、疲れたのはほんとだじぇ」

 シャオは両手を組んで、大きく伸びをしてみせる。

「……相変わらずなだらかだにゃあ」

 と、ヒナノが一言。それを聞いたシャオはきっとヒナノをにらみつけると、必死になって更に伸びをしてみせる。特に胸を強調するように。

「まったいらだにゃ」

 が、逆にジトーっとした目を向けられただけであった。

「だったらヒナノはどうなんだよ?」

 今度はシャオがさっきの仕返しとばかりに言い返す。言われたヒナノの方も、鋭い眼光でシャオをにらみ返した。

 二人の間で、パチパチと火花が散った。

「シ、シャオよりはあるにゃ」

 そう言って胸を張るヒナノであるが…………。まるで水平線のようにまったいらである。シャオ同様に。

「あたしと一緒だぜ」

「そ、そんなことないにゃ!」

 空気をいっぱいに吸い込んで更に胸をそらすが、やはり目に見えた変化はない。

「シャオよりヒナノの方が大きかったにゃ!」

「あたしの方がヒナノより大きかった!」

 二人ともぺったんこである。

「止めなよ二人ともぉ。大きな声出してたら、もっとのどがかわくんだからぁ」

 いい加減騒々しくなってきたのもあって、タマミドリは二人を止めに入った。

 ヒナノとシャオのことだから、不毛な言い争いになるのは目に見えている。それに、まだまだ宝探しを続けなければならないのだから、体力は少しでも温存しておかなければ。

「……タマの言う通りだにゃ」

「……もっと疲れたぜ」

 さっきまでの元気はどこへ行ったのやら、ヒナノもシャオもすっかり大人しくなった。しかも、張り合っていたせいでよけい疲れたとか。

 まったく自分から言いだしておいて、宝探しをする気があるのやらないのやら。

 と、その時、ヒナノの耳がピクピクと動いた。それから辺りをキョロキョロと見回し始める。

「ヒナノちゃん、どうかしたのぉ?」

 不審に思ったタマミドリが聞いてみると、

「なんか変な音と水の音がするにゃ。たぶん、川かにゃ?」

「水ぅううう!」

 シャオが元気になった。

「なあなあヒナノ、川はどこだ?」

 きらきらと輝く目で、シャオはヒナノを見つめた。どれくらい輝いているかと言うと、夜空のお星様くらいには。

 それからヒナノは、音のする方向を探して顔をキョロキョロ。

「あっちにゃ」

 それから数十秒後、ヒナノが指差したのは膝下まで雑草の茂った藪の方だった。見るからに暗くてじめじめしていて、不気味な感じである。

 人間だろうと妖怪だろうと、怖いものは怖い。現にタマミドリは……。

「ヒ、ヒナノちゃん。でも、そっちって道がないから止めた方がぁ」

 あまりの恐怖に顔が真っ青になっている。

「でも、みんなのどがかわいてるにゃ」

「そうだぜぇ、タマ。あたしなんて、もうカラカラで干からびそうなんだからな」

 怖くてどうしても行きたくないタマミドリは、必死になって考える。熟考すること十秒ちょっと、タマミドリの出した提案は、

「じゃあ、シャオちゃんを溶かしてできた水でも……」

 その場を凍り付かせるのに十分な威力を持っていた。

 それを聞いた瞬間、シャオはヒナノの後ろに素早く隠れ、かたかたと震えながら時々タマミドリの方をうかがう。

「……タマ、それはさすがにひどいにゃ」

 ヒナノからも非難の声。

「ご、ごめんシャオちゃん。ほんとは違うから、ちょっと言い過ぎちゃっただけで、私も一緒に行くからぁ……!」

 袖をわたわたと振りながら、シャオに謝るタマミドリ。

 それからのぞき込むように、シャオの目を見つめた。するとシャオも、潤んだ目でタマミドリの目を見つめ返す。

「ごめんなさい」

「……ていっ!」

 ヒナノの後ろから飛び出したシャオは、タマミドリめがけてとびかかり、

「ひゃっ!?」

「ぱっふーん」

 思いっきり抱きつき、ぷにぷにの冷たいほっぺたをタマミドリのほっぺたにすりすりとすりつける。

「も、もう。シャオちゃん、冷たいってばぁ」

「やっぱりタマは優しいぜぇ。……ヒナノと違って」

 最後の方は、ヒナノをちらりと盗み見ながらぼそぼそと。

 だが、それを聞き逃すヒナノの耳ではない。きっかりばっちりはっきり聞こえている。

「シャオ、今のはどういう意味かにゃ?」

 ヒナノはこめかみの辺りにぴきぴきと青筋を浮かべながら、笑顔でシャオに聞き返す。

「どういう意味って、そのまんまの意味だぜ」

「シャーオー!」

 さっきまでシャオをかばっていたのが一転、顔を真っ赤にして追いかけ始めるヒナノ。

 シャオはタマミドリで壁をつくりながら、ヒナノの手をかいくぐる。

「待つのにゃ、シャオ!」

「待てっ言われて待つやつなんていないぜ!」

「もぉ、二人ともぉ!」

 それからしばらくの間、ヒナノとシャオはタマミドリを中心に周囲をぐるぐると駆け回り、へとへとになってから後悔したのだった。



     ●



 心身ともに疲れ果てた三人の行き先は宝のありかではなく、ヒナノの聞こえるという川の方だ。ちなみに、ヒナノとシャオが主に“身”の方で、タマミドリが主に“心”の方である。

「あ、あの、それで、なんで私が先頭なのぉ!」

 三人が歩いているのは、雑草ばかりで道すらない緩やかな斜面だ。

 順番は前から、タマミドリ、ヒナノ、シャオの順である。タマミドリは自分が一番恐がりなのに、なぜ先頭を歩かされているのかが納得いかない。

「あたしを溶かすとか言った罰だぜ。しっかり反省しろー」

「そーだにゃー」

 ヒナノの援護射撃は無視するとして。シャオの一言に逆らえないタマミドリは、はうー、と悲哀のため息をもらし、がっくりとうつむくのだった。

 反抗するのをあきらめて、びくびく震えながら先に進んでいくと、



 ――――――――シャーカ、シャーカ……。



「ヒヒヒ、ヒナノちゃん、シャオちゃん!?」

 なんの音かよくわからない、気味の悪い音が聞こえてきた。

 いきなり恐怖が最高潮に達したタマミドリは、悲鳴すらあげられないままに、ヒナノとシャオの方を振り返る。助けを求めて。

 がしかし、世の中そんなに甘くはない。

「よし、タマ、進のにゃ!」

「なにかうまいもんあるかなぁ!」

 タマミドリを助けてくれる者は、この場にはいなかった。

 気を失いそうになるのを必死で押さえながら、タマミドリは雑草の中を前へ前へと進んで行く。

 シャーカ、シャーカという気味の悪い音もどんどん大きくなり、タマミドリの顔からはどんどん血の気が引いていった。だが、それと同時に川の流れる音も聞こえてきた。

「水の音だぜ!」「近いのにゃ!」「ち、ちょっと待ってぇ!!」

 ヒナノに背中を押され、どんどんと斜面を下っていくタマミドリ。

 すると木々のすき間から、待望の川が姿を表した。

「水だぁああああ!」「水だにゃあああ!」

 それを目にしたシャオとヒナノは、タマミドリを置いてけぼりにして突っ走る。

「んぐんっ、ぷは〰。全身に染みるぜぇ」

「ちろちろ、はぁぁ、生き返るにゃあ」

 のどがからからの二人は川縁につくやいなや、水面に顔をつけて直接水を飲み始めた。

 よっぽどのどが渇いていたようである。ヒナノはともかく、シャオは少し飲み過ぎかもしれない。

「二人とも、おいていかないでよぉ」

 ヒナノとシャオが満足したところで、ようやくタマミドリが追い付いてきた。

 息を荒くして駆け寄ると、二人の間にちょこんと座る。怖いのをずっと我慢していたのもあって、こちらもすっかりのどがからからである。

 いつも肌見離さず持っている湯呑(本体)に川の水をくむと、こくこくと飲み干した。

「ふぅぅ、おいしいですぅ」

 タマミドリの顔にも、満面の笑みが浮かび上がった。

「あれ、でもタマってお茶が出せなかったかにゃ?」

「あ、そういえば」

「だ、だって、熱いお茶飲むと、よけいにのどがかわくんだもん……!」

 そう言われてみて、二人は『熱いお茶』を想像してみると、

「やけどするにゃ」「溶けちゃうぜ」

 のどが渇くか渇かないか以前に、飲めないので想像できないことがわかった。

 ぬるま湯ていどなら平気だが、タマミドリが出せる湯気が沸き立つような熱さは無理である。

「と、とにかく! そういうことだから!」

 珍しいタマミドリの剣幕な表情に気圧され、二人ともそれ以上の追求はあきらめる。

 あれである。普段怒らない温厚な人(この場合は妖怪?)が怒ると、それはそれは恐ろしいという。

 タマミドリの怒っている所なんて、熱いお茶を飲むとよけいにのどが渇くかとより想像できない。まさしく、未知の領域だ。そんな前人未到の新境地を開拓するほど、ヒナノもシャオも勇者ではなかった。



 ――――――――シャーカ、シャーカ……。



 と、冷静になった所で再び例の音が聞こえてきた。しかも、さっきまでより音が大きい。

 そういえば、川の音と同じ方向から音がしていたような……。

 そして、

「うぬら、こげなとこになにしにきた?」

 とん、と肩に手を置かれたタマミドリは、そのまま目を回して倒れた。



     ●



「いやぁ、すまんかったのう。おどかす気はながったんじゃが」

 最初は驚いていたヒナノとシャオだったが、それもすぐになくなった。

 その相手というのが、いかにも人の良さそうな好々爺然とした顔をしていたからだ。

 髪の毛は頭頂部まで禿げ上がっていて、しわくちゃの顔からは柔和な笑みがこぼれていた。

 やせ細った手足は簡単に折れてしまいそうだが、それさえも温厚な雰囲気を形作るのに一役買っている。

「おじさん、名前なんて言うんだ?」

「シャオ、知らない人に名前を聞くときは、まず自分の好きなものを言うのにゃ」

「そうなのか? あたしが好きなのは、かき氷だぜ!」

 実に雪ん子らしい答えだ。

 と、そこへ、

「……ヒナノちゃん、それを言うなら名前だょ」

 さっきまで目を回してた倒れていたヒナノが帰ってきた。ただし、まだ気分が悪いらしく、顔が少し青い。

 ヒナノとシャオはタマミドリを気づかいながらも、反論を始めた。

「タマは甘いのにゃ。もしかしたら、好きなものがもらえるかもにゃのだから、言っておいた方がお得なのにゃ」

 自慢気にぺったんこな胸を大きく張るヒナノであるが、タマミドリの吹雪の如く冷たい視線が全身に突き刺さる。

 さすがに、自分でもちょっといたたまれなくなってきた所で、ふるふる振っていた尻尾がしゅんと動きを止め、耳をちょこんと伏せた。

 ヒナノが小さくなった所でタマミドリが二人の前に出て、コホンと咳払い。

「私はタマミドリと申します。初めまして」

 キリッと、後ろの二人にも早くしろと目で合図を送る。

 タマミドリの視線を浴びた二人は、気を付けの姿勢をとって、

「ヒナノだにゃ」

「あたしはシャオ」

 元気いっぱいの挨拶をする。

 ヒナノとシャオの、ほっほっほっと、いきなり現れたおじさんは笑みをこぼした。

「儂は小豆洗いのタイゾウじゃ。この通り、いつもここで小豆を洗っておる」

 確かに、脇にはいっぱいの小豆が入ったザルを抱えている。

 じっと見つめていると、なんだかあんこのを使ったお菓子を食べたくなってきた。

「じゃあ、あの音は」「小豆を洗ってた音なんだにゃ」「みたいですねぇ」

 音の正体がわかったことで、三人はようなくほっと胸をなで下ろした。

 うん、よくよく考えてみれば小豆を洗う音以外の何物でもないではないか。

 なぜわからなかったんだろうと、三人はそろって首をかしげるのだった。

「そんで、ぬしらはこんなとこへ何しに来たんじゃ? ここは道からだいぶ外れたとこじゃきに、妖怪もめったにこんのじゃが」

 タイゾウと名乗った小豆洗いは、首をひねりながら三人に聞いてきた。

「にゃっ!」「はっ!」「……あぁ」

 はっとなって、三人は大慌てで周囲を見回す。自分達ってどっから来たんだっけ?

 三人の前にはおいしい水の流れている川。後ろには小豆洗いのおじさんことタイゾウさん。残りは、木と雑草と木と木と雑草と木と……。

 同じような木と雑草ばっかりで埋め尽くされている。どの方向に行けばいいかどころか、自分達の来た方向すらわからないではないか。

 太陽も隠れているので方角もわからないし、羅針盤みたいなハイテク機器ももちろん持っていないし、それ以前に方角がわかっても意味がないことがわかって、三人は改めて真っ白になるのだった。

「タマ! ここってどこかにゃ!」

「わ、私に言われてもぉ」

「こんな時のタマだろ!」

「私って二人にとってなんなのぉ……!」

 ヒナノとシャオは腕を組んで、う〰んと頭をひねる。

 ・ ・ ・ !

「「難しいこと考える担当だにゃ(ぜ)!」」

 そろって同じ結論に到達したようだ。

「はぁぁ……」

 思っていたよりひどい答えに、重いため息が漏れる。

 困った時の神頼みとは言うが、タマミドリは湯呑の付藻神であって、できることと言えば熱いお茶を出すくことくらいだ。

 それなのに、普段から困ったことがあれば(特に頭を使うような)すぐに拝んでわがままを言ってばかりで、この二人といるといつも気苦労の耐えない。

 まあそのおかげで、精神的にはヒナノやシャオよりもちょっぴり大人だったりするのであるが。

「にゃ〰〰、タマ〰〰」

「なんとかしてくれよ」

 そんなわけでヒナノとシャオは、再びタマミドリに泣きつき始めた。

 なんだかんだで、人(一応神様だけど)の良いタマミドリは、目をぎゅうっとつむってうなる。

 すると、

「……ぁ」

 なんとも間の抜けた声が漏れた。

「思いついたのかにゃ?」

 ヒナノの問いに、こくんと頷いてみせる。

 だが、その表情は妙案にうかれているような明るいものではなく、なんで思いつかなかったんだろうという呆れの色が強い。

「さすがタマだぜ!」

 シャオちゃんは初めからなにも考えてなかったでしょ、と目で訴えてから、タマミドリは袖の内側からなにかを取り出した。

「タイゾウさん、ここってこの地図でいうとどの辺りなのでしょうか」

 そう、タマミドリが取り出したのは、当初の目的である宝のありかを示した地図である。

 宝の地図とは言ったものの、周囲の地形までけっこう詳しく書かれているので、十分に使えるだろう。それに、タイゾウさんはいつもここで小豆を洗っているようなので、周囲の地理にも詳しいはずである。

「ほぉぉ、ようでけた地図じゃなぁ。そうさなぁ、たぶんこの辺じゃろう」

 タマミドリの予想通り、タイゾウさんは地図の一点を指差した。

 そこまではよかったのだが、その一点と言うのが色々と問題で。

「遠いにゃ」「遠いな」「遠いですねぇ」

 と、いうわけだ。

 地図によれば、宝のある場所の近くまでは人間達の作った街道とかいう道が通っているのだが、これがまた遠い。すっっっご―――く、遠いのだ。

 最初はタマミドリの妙案に、盛り上がりを見せていたヒナノとシャオであるが、すでにテンションは地の底より低い。

 そばを通るだけで、がっかりな気持ちが伝染してしまいそうだ。

「タイゾウさん、私たちここに行きたいんですけど、やっぱりこの道に戻ってからの方がいいでしょうか?」

 タマミドリは続けてもう一つ質問した。

 タイゾウさんが指さした所から街道の方に指をするすると動かしてから、今度は地図の真ん中辺りに書かれた×印へと指を動かす。

 するとタイゾウさんは、小豆の入ったザルに手を突っ込みながら思案し始めた。それと同時に、小豆も洗い始める。

 再び、シャーカシャーカという小気味よい音が、鳥のさえずりと木々のこすれる音に混じって三人の耳に飛び込んできた。

 正体がわかってしまえば、さっきまで得体の知れなかったこの音も可愛いものである。むしろ心が落ち着くような気さえする。

 三人がそんな小豆の音に聞き入っていると、タイゾウさんはおもむろに口を開いた。

「そうさなぁ、直線行った方がええかもしれん。ぬしらの来た方向なら坂も緩いんじゃが、ここからこの道に戻ろうとしてもかなり急な道になるけえのう。ぬしらにはきついじゃろうて」

 タイゾウさんは難しい顔で、三人に説明してくれた。それを聞いて、シャオがはいはいと手を挙げる。

「あたし達の来た方がわかるのか?」

「あぁ。たぶん、この辺を通ってきたんじゃろ。ここはこの辺でも、傾斜のだいぶ緩いとこじゃけえのう」

 と、三人が通って来たであろう場所を、地図の上に指でなぞっていく。

 なるほど、この道をたどれば街道に戻れるだろうけど、やっぱりすんごい遠い。

 やはりここは、直接印の場所に行く方が得策だろう。

「なら、ここへはどっちの方に行けばいいのにゃ」

 更にヒナノも割り込んできて、×印を指さした。

「それなら、こっちの方じゃ」

 そう聞かれて、タイゾウさんは川の反対側を指さした。幸い、川幅の狭くなっている場所があるので、そこから飛び移れるはずである。

「まあ、他の妖怪もおるでの。ご迷惑はおかけせんようにな」

「わかってるのにゃ!」「大丈夫だぜ!」「あの、いざとなったら私が止めますから」

 三人三様の返ことに満足したらしいタイゾウさんは、再び大きく笑ってから三人を送り出す。

「なら、気を付けてのう」

 危なげなく飛び越えたヒナノとシャオは、着地の瞬間にのけぞって川に落ちそうになったタマミドリの手をなんとかつかんで助けた。

 三人はぶんぶんとタイゾウさんに手を振ってから、お宝を求めて再び歩き出すのだった。

「そうさなぁ。儂も久々に、あそこに行ってみようかのう」

 タイゾウさんは重い腰を上げると、洗い終わった小豆を片手に森の奥へと消えていった。

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