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そのいち

 むかしむかしある所に、妖怪と人間が共に暮らす村があった。その村では猫又は守り神として崇められており、またその猫又も村を守っていたそうな。

 そんな村からほど近い山の中に、二つの小さな人影があった。

 年齢は五歳くらい。一見するとただの女の子のように見えなくもないのだが、よく見るとどこかがおかしい。

「二人とも、お待たせにゃ」

 そこへ山奥の方から、同じくらいの年の女の子がやって来た。肉球模様の可愛らしい着物を着ている。

 だが、やっぱりこの子もちょっとおかしい。具体的に言うと頭のてっぺんあたりが。髪と同じ茶色い毛の、まるで猫のような耳がちょこんと生えているのだ。更に、同じ色をした尻尾が二本、腰の辺りから伸びている。

「遅いぞぉ、ヒナノ!」

「ヒナノちゃん、おはよぉ」

 真っ白い着物に青い目と髪をした女の子は仁王立ちで不機嫌そうに、それに遅れて湯呑柄の着物の女の子はほんわかと朝のあいさつ。

 ヒナノと呼ばれた女の子は大きく手を振って駆け寄ると、二人の前でしゅたっと立ち止まった。

「実は、父ちゃんに怒られてて。ごめんにゃあ、シャオ、タマ」

「ヒナノ、今度はどんな悪いことしたんだ♪」

 目をらんらんと輝かせて聞くのは、白い着物の女の子。雪ん子のシャオだ。

「シャオちゃん、その言い方はちょっと……」

 そんなシャオをやんわりとさとすのが、湯呑柄の着物を着た女の子。名前はタマミドリ。二人からは略してタマと呼ばれている。湯呑の付喪神なので、これでも一応神様だったりする。

「えっと、近所のおばちゃんが焼いてた魚が美味しそうでツイ」

「ほ、本当に悪いことしてたんだ」

 てへっと舌を出すヒナノに、タマはちょっと苦笑い。

 せっかくヒナノの味方をしようと思っていたのに、台無しになってしまった。

 ――――きゅるるう〰〰〰。

 するとどこからか、腹の鳴る音が聞こえてきた。

 シャオとタマが、音が聞こえて来た方を振り返ると、

「お魚の話してたから、急にお腹がすいてきたのにゃ」

 頬を赤らめながら恥ずかしそうに猫耳を伏せたヒナノが、お腹に手を当てていた。

「ヒナノちゃんのお腹の虫は、今日も元気だね」

「おなかの虫? それってどんな虫なんだ?」

「シャオ、お願いだからそれ以上言わないで欲しいにゃ」

 涙がこみ上げてくるヒナノを見ながら、シャオは小首を傾げていた。



     ●



 三人はお腹(主にヒナノの)を満たすべく、近くの村までやって来ていた。

 季節は秋も終盤にさしかかり、今日も肌寒い天気である。そのせいか、村からは温かそうな食べ物の匂いが、あちこちからから漂ってくる。

 よだれがたら〰っと垂れているのに気付きヒナノがゴシゴシと口元をぬぐっていると、今度はどこからともなく砂糖醤油の甘くて美味しい匂いが。

 口から垂れるよだれと共に、ヒナノの目がキラリーンと光った。

 そんなわけで、

「こらガキ共! どこ行きやがった!」

 雲一つない快晴の下、団子屋の主人の大きな怒号がとびかっていた。

 小さな団子泥棒たちの姿を見失った店主は、とぼとぼとため息混じりに店の中へと消えて行く。

 すると、その団子屋の屋根の上からひょっこりと頭が三つ現れ、下の方を盗み見た。

「行ったかにゃ?」「行ったみたいだぜ」「行ったみたいですね」

 ヒナノ、シャオ、タマの三人は、手に入れた――くすねてきた――ばかりのみたらし団子を食べ始める。

「ここの団子、おいしぃからにゃあ」

 とか言いながら、一番最初に真ん中のヒナノが串にかぶりついた。

 はんにゃ〰とゆるみきった表情からも、どれくらいおいしいのかよくわかる。

「主人には悪いが、ただでいただかせてもらうぜ」

 それに続いて、ヒナノの右にいるシャオもだんごを一口。温かいのが苦手なので、息を吹きかけてカチコチに凍らせる。

 とても美味しそうには見えないが、本人はそうでもないようだ。

「二人とも、あとでちゃんと謝るですよ」

 と言っているのが、ヒナノの左にいるタマミドリ。

 しかもどこから持ってきたのか、団子の串を器用に持ちながら、湯呑に入ったあったかい緑茶をすすっている。

「タマ、ヒナノも欲しいのにゃ!」

「一人ばっかりずるいぜ!」

 と、それを隣で見ていたヒナノとシャオは抗議の声を上げる。

「でも、ヒナノちゃんは猫舌だし、シャオちゃんは雪ん子だから、あっついお茶飲んだら溶けちゃうでしょ」

 うぐぅ、とくぐもった声を上げる、ヒナノとシャオ。だがそこはそれ、他人の物が無性に欲しくなるお年頃の二人が納得するはずもなく。ほっぺたぷくぅ〰っと膨らませて反撃開始。

「ならば、冷たいお茶を要求するのにゃ!」

「無理だよぉ。私、あったかいお茶しかだせないもん」

 タマミドリは、ヒナノの要求を華麗にスルーしながら、ようやく一つ目の団子をぱくり。

 ほっぺたおちちゃうです〰な表情であむあむと口を動かした。

「それでもタマばっかりずるい! そのお茶をよこせー!」

 と、我慢できなくなったシャオはヒナノを飛び越え、向こう側にいるタマミドリに飛びついた。

 ※ここは屋根の上です。

「シ、シャオちゃん、危な、ひゃぁっ!」

 飛びつかれた拍子に思いっきり湯呑を振ってしまい、透明な緑色の液体がきれいな放物線を描いて飛び出す。タマミドリのお茶は因果応報とでも言うべきか、そのままシャオの頭に降り注いだ。

 火傷するほど熱くはないのだが、雪ん子のシャオはと言えば、

「あっち〰〰〰!」

 頭を抱えてわめきながら、ゴロゴロと転がり始める。しかもせっかくくすねてきた団子まで、どこかへ消えてしまっていた。

 ※くどいようですが、ここは屋根の上です。

「見〰つけた」

 三人の前には、鬼のような顔をした団子屋の主人がいた。



      ●



「はぁぁ、せっかくのお団子が……」

「いてて、なにも殴ることないじゃねえか」

「痛いですぅ」

 頭の上に仲良くこぶを作った三人は、仲良く山道を歩いていた。

 シャオが屋根の上で盛大に暴れたせいであっさり見つかった三人は、団子屋の主人に愛の鉄拳をちょうだいしたのだった。

 しかも食べかけの団子は没収され、お腹も空いて踏んだり蹴ったりである。

「シャオが屋根の上で暴れたからにゃ」

「だって、タマがお茶くれないから」

「シャオちゃん、熱いのはだめだと思うんだけどぉ」

 しかもおまけにありがた〰いお説教を延々と聞かされ、気分は最悪である。

「まあ、元々はヒナノちゃんがお腹すいてたからなんだけどねぇ」

 と、タマミドリは横目でちらりと盗み見る。

 自分のことを言われたヒナノは、気まずいそうに指と尻尾をもじもじさせた。

「そうだぜ! 全部ヒナノが悪い!」

 チャンスを見つけたシャオは、責任を全部ヒナノに押しつけようと反撃にでる。

「違うのにゃ! 悪いのはシャオだにゃ!」

 だが、直接的な原因を作ったのはシャオであるので、ヒナノも退くわけにはいかない。

 せっかくのお団子を没収されたのは、シャオのせいなのだから。

「ヒナノだ!」

「シャオだにゃ!」

「ヒナノ!」

「シャオ!」

 と、その時、ヒナノの耳がピクリと動いた。

「誰かこっちに来るにゃ」

「隠れるぜ!」

 さっきまでの口喧嘩はどこへやら、ヒナノとシャオはそろって近くの茂みに身を隠した。

「ま、待ってよ〰!」

 二人に遅れて、タマミドリも茂みの中へと身を隠す。

 それから待つこと三〇秒ほど、人間の男がやって来た。中肉中背の二人組で、手には古ぼけた紙のようなものを持っている。

「タマ、あれなんだと思うかにゃ?」

 ヒナノは二人組を指差してタマミドリに聞いてみた。間違っても、シャオに聞くようなことはしない。

 タマミドリはじぃ〰〰っと二人組の持っている紙切れを見つめる。

「地図、みたいだよぉ?」

 それもどうやら、この辺りのもののようだ。

「ちーず?」

「違うにゃシャオ、地図にゃ。きっと宝の地図に違いないにゃ!」

「なに!」

 そう断言するヒナノのおめめには、すでに大判小判が浮かんでいる。

 ヒナノの中では、あれはすでに“宝の地図”と決まっているようだ。

「でもヒナノちゃん、ただの地図かもしれないよぉ?」

「うぐぅ……」

「あ、そっか」

 タマミドリの至極まっとうな意見に、ぐぅの音を上げるヒナノ。さっきまで一緒にうかれていたシャオまでも、タマミドリの言葉にはうんうんと首を縦に振った。

「な、なら、もうちょっと付いて行ってみるにゃ」

 かくして、ヒナノ、シャオ、タマミドリの三人による小さな追跡隊が結成されたのだった。



 三人――特にヒナノは耳をそばだてて、二人組の男の会話を聞いた。

『まさかこんなもんがあったなんて。爺さまと婆さまには感謝せにゃなるめぇ』

『んだんだ。こいつは村の宝になんべ』

「やっぱり宝の地図だにゃ!」

 ――――ヒナノ、復活。『宝』という単語を聞いた瞬間、曇っていた瞳を輝かせながらシャオとタマミドリの方に振り向いた。それはもうお日様と同じくらい、らんらんに光っている。

「そ、そうみたいだねぇ」

 あまりのテンションの上がり具合に、ちょっぴりたじたじなタマミドリ。

 でも、お宝には興味しんしんである。

「『たから』ってうまいのか?」

 その隣では、シャオが見当違いのことを考えていた。

「違うょシャオちゃん。お宝っていうのはね、お金とか宝石みたいな貴重なものだよぉ」

「つまり、食べ物じゃないにゃ」

 ――――シャオの目が、死んだ魚みたいになった。

「宝って、食べられないのか……」

 地面に膝をついてひれ伏し、全身全霊でがっかりのポーズ。あまりのがっかりように、シャオのまわりだけ空気が違って見える。

 このまま放って置くのもかわいそうなので、すかさずヒナノが助け船を出した。

「大丈夫だにゃ。お宝があれば、おいしいものなんていっぱい買えるにゃ」

「それってホントなのか? お団子いくつくらいなんだ?」

「甘いにゃ、シャオ。お団子なんてぇ、お店ごと買えるのにゃぁあああ!」

「な、なんだってぇえええ!」

 まあ、お店ごと買えるかどうかはさておき、シャオはお宝がどういうものかを理解したようだ。

 がぜんテンションの上がったシャオは、後ろを振り返ると勢いよく駆け出す。

「シャオちゃん!」

「どこに行くのかにゃ!」

 ヒナノとタマミドリは、大慌てでシャオを呼び止める。

 シャオはきききーと砂煙を上げながら急ブレーキをかけると、全速力で二人の所まで帰ってきた。

「なんだよ二人とも。早く宝探しに行こうぜ!」

 ………………………………………………………………………………………………。

 長い沈黙の後、ヒナノとタマミドリは互いに目を合わせると、はぁぁ、と心底呆れかえったようなため息をついた。

「じゃあ、宝ってどこにあるのかにゃ?」

 ………………………………………………………………………………………………。

「おぉ!!」

 ようやく状況を理解したらしい。

「シャオちゃん、いったいどこに行くつもりだったのぉ?」

「う〰〰〰ん、あたしどこに行くつもりだったんだ?」

 シャオはてへへ〰と笑いながら、頭をぽりぽりとかいた。

「シャオ、タマ。あの地図をなんとしてでも入手するのにゃ。えいえいおー!」

「おー!」

 ヒナノは手のひらをぐーにして、元気よく振り上げた。それに続いて、シャオもぐーの手を振り上げる。

「お、おー……」

 タマミドリも、恥ずかしがりながら小さくぐーの手を振り上げた。



     ●



「あ、あの! お茶はいかがでしょうか!!」

 ちょっぴり人見知りのタマミドリは、うつむきながらも頑張って熱々の緑茶の入った湯呑を差し出した。

 二人組の男はそれを横目に見ながらも、

「そういえば、今年の出来はどうだったべか?」

「今年も豊作だべ。お天道さんにゃ、感謝せにゃなるめぇよ」

「はっはっはっ、ちげえねえだ」

 華麗にスルーされた。



 タマミドリ【付喪神(湯呑)】

 特技:おいしいお茶を勧めること。以上。



「うっ、うぅぅ……。失敗しましたぁ」

 しゅんとした雰囲気をまとって、目をうるうるさせたタマミドリが帰ってきた。

「ってぇ、地図を奪う相手にお茶を勧めてどうする気かにゃぁああああ!」

「そうだぜ! あたし達にはくれなかったのに、見損なったぜ!」

「だってぇ、私これくらいしかできないから、お茶をすすめるしかぁ。それに、お茶の味には自信があったのにぃ」

 帰って早々怒られて、泣き出したい気分である。しかも自慢のお茶まで無視されて、悲しさ絶賛増量中だ。

「よし、次はあたしが行くぜ」

 シャオは仁王立ちで腕組みしながら、自信満々に告げた。



「おい人間。その地図をよこせ!」

 先回りしたシャオは手を出すと、単刀直入に物申した。

 いきなり小さな子供に訳のわからないことを言われた二人組の男は、しばし遠い目でシャオを見つめていたが、再び歩き始める。

「あれ?」

 てっきり怖がって地図を渡してくれるものだと思っていたのだが、二人は何事もなかったのようにシャオの横を通り過ぎた。

 通り過ぎた所でようやく我に返ったシャオは、はっとなって追撃を開始する。

「こらー、無視するなー! あたしは妖怪だぞ! 雪ん子だぞ! 怒らせたら氷付けにしちゃうんだぞー!」

 と、両手の人差し指を立てて頭にやり、ガオーと威嚇。鬼の角のつもりらしいが、雪ん子はどこへ行った。

 それを聞いてなにを勘違いしたのか、二人組の片方はシャオの目の前まで歩いてくると、懐の小さな袋から黒光りする甘い匂いのする物を取り出した。

「お嬢ちゃん、かりんとうあげるから、家さけえんな」

「うん!」

 シャオはかりんとうを入手した。



 シャオ【雪ん子】

 特技?:全身が冷たい。



「えへへ、かりんとうもらったぜ!」

 ビシッ。ヒナノのハタキを後頭部にくらい、前のめりに倒れた。

「お菓子もらってどうするんだにゃ! もらうのは地図の方だにゃ!」

「ぬぁっ!?」

 今更ながら、ようやく自分が失敗したことに気付いたようである。

「おのれ人間めぇ、こんな恐ろしい罠をしかけてくるとは……」

「そんな罠にかかるのはシャオくらいだにゃ」

「えっと、それよりも、罠ですらないと思うんだけどぉ」

 現実をつきつけられたシャオ、平身低頭姿勢でまたがっかり。

「らってぇ、かりんとうおいじそうらったがらぁ〰、ぐずんっ」

 半泣きで花をすすりながら、顔を上げる。涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を、タマミドリがぬぐってやった。

「仕方ないにゃ。こうなったら、ヒナノがあの宝の地図をとってくるのにゃ」

 ヒナノは二人の無念を晴らすべく、両腕をぶんぶん振り回しながら駆け出した。



「さあ、おとなしく宝の地図を渡すのにゃ!」

 二人組の男は互いに顔を見合わせると、またかぁ、といった風に顔をしかめた。

 二人はヒナノのそばまで歩み寄ると、

「ほら、かりんとうやるけ、家さけえんな」

 小袋からかりんとうを一本取り出して、ヒナノの目線に合わせて膝を折った。

 瞬間、ヒナノの目がぱぁっと明るくなったのだが、はっとなって頭をふるふると振るう。

 これではシャオの二の舞になってしまう。自分は二人と違って、やればできる子なのを見せてやらねば。

 ヒナノは、しゅたっと後方にジャンプすると、二人組をにらみつける。

「ヒナノは猫又にゃ。おとなしくその地図を渡さにゃければ、おじさんたち二人とも食べちゃうのにゃ!」

 耳と二本ある尻尾をピーンと立て、両腕をにゃーと突き出し、荒ぶるヒナノのポーズ。大きく開けたお口からは、八重歯ちょこんとのぞいている。

 ヒナノとしては、ものすごぉぉぉく、真剣にやっているのだが、二人組にとってはただの子供のお遊びとしか映っていない。

 耳も尻尾もあるが、おもちゃかなにかだろう。そう思ってすたすたとヒナノの横を足早に通り過ぎようとした。

 が、その時だ。

「ヒナノをぉ……」

 堪忍袋のぷっつんしたヒナノは、髪の毛を逆立てながら二人組を飛び越えるように大きくジャンプし、

「無視するにゃぁああああああああ!」

 どんっと、四つん這いになって着地し、二人組を見下ろしたのである。

 すると、

「ひゃあっ!?」

「ね、猫神さまじゃあ……!!」

 ※猫神とは、この辺り一帯の土地を守護している、猫の姿をした神様のことである。

「おとなしく地図を渡すのにゃあ」

 さっきまで小さな女の子だった姿が一変。家の一階分は有にある大きさの、茶毛の猫又へと変身したのだ。

 そんなヒナノの生暖かい吐息を全身に浴びた二人組はと言えば、

「ははぁ、猫神さまとは露知らず、とんだ粗相をぉ」

「ど、どうかお許しを。この地図は差し上げますので」

 地図をヒナノの前に差し出すと、たった今まで歩いてきた道のりを一目散に引き返していった。



 ヒナノ【猫又】

 特技:化けること、だけ。



 二人組の姿が完全に見えなくなった所で、近くに隠れていたシャオとタマミドリが出てきた。とてとてと小走りでヒナノの前まで駆け寄ると、タマミドリは足元に置かれた地図へと手を伸ばした。

 あちこちが黄ばんでいて、紙もよれよれになっているが、なんとか読めそうだ。

「やったじゃねえか、ヒナノ」

「ふっふっふー、シャオやタマと一緒にしてもらっちゃ困るのにゃ」

 すると突然、大きくなったヒナノがどんどん小さくなっていくではないか。まるで、空気の抜ける風船そのものである。

 そしてようやく元の大きさになった頃には、すっかり小さな女の子の姿に戻っていた。

 腰に手を当て胸を張り、はっはっはーと高笑い。二人にできなかったことを自分一人でやってのけたのが、とても嬉しいようだ。

 とは言ったものの、

「でも、ただ単に化けてるだけだから、力とかは全然強くなってないんだけどねぇ」

「タマ、それは言わないで欲しいにゃ」

 単なる張りぼてだったりするわけである。実際、反撃されれば逃げ出していたのはヒナノの方だったであろう。

 なにはともあれこれで地図は手に入れた。あとは、お宝を探すだけだ。

「それじゃあさっそく、お宝探しに出発なのにゃ!」「うまいもん、お店ごと買ってやるぜ!」「お宝ぁ、あるといいなぁ」

 三人三様、それぞれの思いをこぼしながら、三人は金銀財宝を夢見て地図の印が付いた場所へと向かった。

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