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第4話 不審者

「…………」

「…………」

 会話が続かない。

 藍川に視線を動かして見ると、ぼけーっと周りの景色を眺めていた。私もなんとなく景色を見てみた。

 狭い道の左右は鬱蒼うっそうとした木々で覆われており、木漏れ日が差し込める。近くにあるのは古ぼけた神社と林ぐらいなもので人通りは少ない。道に落ちているのは小石だけ。至って当たり障りの無い景色だ。


「…………」

 ……こいつ、まだ何も喋らないでいやがるっ! まあ実際会ったばかりだし、話題が無いのは分かるが……よし、ここは私から話題を振ってみよう!

「ねえ、藍川の親って何の仕事してるの?」

「ん? あー……両親はいないよ。一人暮らし」

「…………あ、そうなんだ」


 ――気まずい、物凄く気まずい。主に私が。……軽い返事が返ってくるかなーとか思ったら何なのこの重い返事は。いや、本人は軽く言ってるけどさあ! 会話の中に間が多過ぎる! 点々! 三点リーダー!! どうすりゃいいのさこれは!!


「凪ちゃんの親は? 仕事」

「えっ! ……中一の時から二人とも、海外に出張中」

 意外にも藍川の方から話題を振ってきた。驚いてちょっと変な声が出た。

「へー。じゃあ家事とか一人で?」

「う、うん……。でも藍川も、同じような感じ……じゃないの?」

「僕は全然。コンビニ弁当とかしか食べてないしなー。凪ちゃんは凄いよ」

 ニコッと笑いかけられ、少しドキッとする。褒められると素直に嬉しいものだ。

「……じゃあ今度、何か料理作ってあげようか」

「本当? それ嬉しいな! 楽しみにしてる」

「ははっ、任せとけ!」


 大分気楽に話せるようになり、互いに笑い合った。

「部活何入る?」

「どうしよっかなー。僕は幽霊部員でいいかな」

「マジか。というか入んなきゃ駄目なの?」

 茜達と話したような、他愛も無い世間話などで談笑し、もう直ぐ狭い道も終わりかなという時に。

 私達の目の前で、パキッと音がした。


「ん?」

 まず私が前に目をやり、藍川もそれに続く。

 私の見たもの、いや、見た者は一人の男。全身が黒っぽい服で覆われていて、特徴の薄そうな顔は薄汚れていた。天然パーマのような茶髪は男にしては長く、パーマということを差し引いても異様にボサボサだった。薄く開いた唇からは細かく小さな早口言葉のようなものが漏れていて、目はギョロギョロと視点を定めていない。


「……浮浪者とか?」

 私は男に対して失礼だと思いつつも小声で言ってから、藍川の顔を見た。

 藍川の視線は男の一点に定まっている。そして、キツク引き締まった顔をしてニヤリと笑っていた。


「……というか、ある意味ヤバイ人かもね」

 藍川の視線の先、男の右手、


 そこには綺麗なナイフが握られていた。

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