表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/16

An army marches on its stomach

「軍隊は胃袋で動く」とはナポレオンの至言




22年12月08日、誤字修正。誤字の原因は飲酒。駄目人間ですみません。生きていてすみません。

念のため、射撃場の屋上に上って周囲の状態を見ておいた。特に今回は低地の方角が一番の重要事項。

で、観察の結果わかったのは、周囲に人工物は一切無い。煙すらも無かった。

視界内には湖のようなものも無し。ポツリポツリと小山があるが、高度500m以上らしき山は無し。高低差はあれど平地だ。それと、射撃場も少し高度が高い。

射撃場の屋上から撃つ場合は、その高度差を考えないと標的に当たらない。

高度差がある射撃は少し計算がいるのだ。

射撃場の周囲は森に囲まれているが、視界内には草原等も多く見かけられた。

動物も多い。草食動物の群れらしきものが草原をのんびりと歩いているのを何度も見かけた。双眼鏡で確認した限りでは角が生えていない鹿のようだった。色彩が少しおかしかったが。周囲に合わせたのか微妙に緑と黒の迷彩だった。正直、食欲がわかないが、あれなら一匹で数日は余裕で食いつなげるだろう。

鹿肉を食べるのは初めてだ。串焼きはさぞ美味しいだろう。燻製を作ってもいいし、皮は天然の迷彩効果を発揮しそうだ。

・・・・・問題は、安全に食べれるかどうかだが。毒を持っていたら洒落にならない。唯一の安心材料は、警告するような派手な色彩を持っていないことだ。毒を持っている生き物は毒を使う以前に、警告するような派手な色彩で威嚇している場合が多い。あの鹿モドキは迷彩なので、そうでない可能性がある。

まあ、発見できたのは全て64式の有効射程範囲外だったので今回は撃たなかった。スコープなら十分狙えたが、ダットサイトでは難しい。当てれることは当てれるが、致命的な部位に当てれそうも無かったのだ。

手持ちの弾薬は全て軍用の弾薬だ。狩猟用のものではない。人間相手には有効だが、野生動物に対しては不明だ。

人間に比べて野生動物の生命力は尋常に無い。

致命的部位に当たらなかった鹿を1昼夜追いかけてようやく捕捉できた等の話はいくらでも聞く。それに、致命的部位は大体が毛、皮膚、脂肪、筋肉と天然のボディーアーマーで守られている。熊などは頭骨でけん銃弾くらいは弾いたりする。

色々と考えて、野生動物を狩る際は、習性や生態をよく調べてから行おうと思う。

草食動物だと思って狩ったら、肉食動物で狩る側から狩られる側になるなんて事になったら笑えない。

考えることが多くて、つい脱線してしまう。

目的は低地を探すことだった。

一番それらしい方角は西、高度が低くなっているのと、森の中に一部ぽっかりと開けて植生が変わっている空間が出来ている。双眼鏡をのぞくと反射した。小さいながら湖がある。距離は概算で4km。下流には距離があるが、大きな湖がある。概算12km。魚もいるかもしれない。薬きょう回収用の網で投網も出来るかもしれない。

湖から直接水を汲むのは、あまりよろしくないがそれより上流の小川なら直接飲んでも問題ない位に清潔な水が手に入る可能性がある。

湖まで到達するのに目標になるような地形地物を探す。あった。岩山がある。この方角には他に岩山は無い。あの方向に歩いていれば湖に到達する。その他にも細々した特長的な地形を記憶していく。

クローバーリーフパターンで捜索は明日だ。

今日は水の確保と湖の状況確認が最優先だ。


そして、喜び勇んで出発してから暫く、前人未到の森を舐めていたのを後悔した俺がいた。

歩きなれていない道なき道もそうだが、敵はまだまだいた。

一歩間違えれば遭難する。水はともかく食料の調達がめどが立たない。そして、一番の問題は、生き残れるのか、生き残っても意味はあるのか。地味に精神的なプレッシャーがキツイ。

そして、歩き始めて30分後、方位を確認しようと立ち止まった際に微妙な物音が聞こえた。

少し高めで、耳慣れぬ小さな音。持続的に聞こえる。肩からつるした64式を手にとり安全装置を解除する。

・・・・・・・・・いた。

正面、3mの位置に蛇がいる。威嚇しているようだ。

危ないところだった。そのまま進んでいたら噛まれていただろう。

毒を持ってる種類だったら、血清も無い今の状態だったら死んでいるだろう。

また、敵が増えた。

それからは、枯れ木で地面を探りつつ音を立てて進んでいく。本来臆病な生き物の蛇に自分から逃げてもらおうというわけだ。

また、蛇がいるのは地面だけじゃない。木の上にもいるかもしれない。常に周囲に目を向けなければならない。当然、歩く速度は落ちる。

だが、それが返って良かったかもしれない。

周囲を観察する余裕が出来た。

そして、それを見つけた。

ブドウのような果物だ。ブドウのように実っているが、色は鮮やかな赤。蟻のような虫が実にまとわり付いている。こいつの名前はブドウにしておこう。

観察を続ける。

実に鳥のついばんだ様な跡もある。地面を見ると鳥の糞もある・・・。周囲に鳥等の死骸は無い。

また、このブドウの木みたいな代物は周囲に群生しているらしかった。

・・・・・・・金の鉱脈を見つけたかもしれない。

ただ、油断は禁物だ。

手袋を外し、ブドウの実を一つ手に取る。瑞々しくて美味そうだ。

ほんの少し指先に力を込め、果汁を絞り手の甲に一滴落とし暫く待つ。

赤い綺麗な果汁を水筒の水で洗い流し、皮膚の状態を入念に確認する。異常なし。

続いて、果汁を舌先に少しつける。

舌は繊細な感覚器官だ。異常があれば一瞬で感知する。少量の苦味、渋味ですら感知でき、毒の種類によっては一瞬で痺れたり、痛みを覚える。

・・・・・・・・・異常なし。唯一気になるのは異常なほどの甘みだ。正直、尋常に無く美味い。空腹だからなおさらだ。

そして聊か緊張しながら、実自体を口に含む。

口内の粘膜も一切異常を感知しない。

・・・・・・・・そして、美味い。水分を大量に含みつつ、この糖度は素晴らしい。明日一切身体に異常が無ければ、このブドウは主食の一つになるだろう。

余裕が出来たら、酒つくりに挑戦しても良い。夢が広がる。

ただし、まだ油断は出来ない。3個ほど食べるが、それ以上は食べない。これ以降は消化と吸収が終っても身体に異常が出なかったとわかってからだ。

最低でも、8時間は様子を見たい。

名残惜しいが、湖から帰り道に採って夕食にいただこう。

果糖のおかげだろうか、心理的なものだろうか。急に元気がわいてくる。

何より、酒が造れる可能性が出てきたのはデカイ。あの糖度なら良い線いけるのではないのだろうか。最初は失敗の連続だろう。試行錯誤で徐々にワインモドキに、次はブランデーモドキだ。

焚き火で焼いた肉とブランデーモドキはさぞ合うだろう。野趣あふれる天然素材の集まりだ。燻製も良い。湖で魚が獲れるなら、そいつの燻製も合いそうだ。人生楽しまなければ損だ。どうせ明日も知れない人生だ。明るく楽しく生きてやる。

そうそう、サバイバルの基本で、生き残るのには「心の強さ」「知識」「道具」の順番で重要だそうだ。

・・・・・・・・色々と食い意地が張っていて、新しい食材に目が無い俺は意外に適任かもしれない。

「美味い奴に会いに行く」

それが俺のモットーだ。

それは、色々と環境が変わったこの地でも変わらない。

「生き残る」

それは大前提でもう一つ付け加えよう。

「生きる楽しみを味わおう」

人はパンだけで生きるのではないと言った人間も過去にはいた。

生きて、何も考えずに飢えを満たすだけの人生は止めようというやつだったか?忘れたが。

だが、現状は食にも命がけの状態だ。

美味さよりも、エネルギーや栄養が優先する。

それでも、楽しみは必要だ。美味しいものが食べたい。

どうせ明日も知れない人生だ。張り詰めてても仕方が無い。精々、鼓動が止まる瞬間までは楽しく生きてやろう。

そう思って周囲を改めてみる。

木陰から差し込む日の光がきれいだった。空気が美味しい。人の手が入っていない木々も見事な造形美だ。何処からとも無く聞こえる楽しげな鳥の声を聞くと嬉しくなる。世界はこんなにも情報に満ち溢れてて、美しかったとは・・・・。

楽しまなければ損だ。一秒でも長く生きれば、それだけ楽しめる。

さあ、歩こう、生きる為に、楽しむ為に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ