ダブルテイク
デフコン4(ダブルテイク)
準備態勢。
合衆国およびその同盟国を当事者とする紛争の発生を予想し、これに備える態勢
デフコン
Defense Readiness Condition (防衛準備態勢)の略。
アメリカにおいて、国防総省が作成している戦争への軍の準備態勢を示す指針のこと。
1~5までの5段階に分けて設定されており、危機的状況に近いほど数字が小さくなる。
22年12月3日 装備品補足改定
最近の携帯は高性能だ。
あっという間に絶望させてくれた。
電波感度無し、GPS感度無し、ラジオ感度無し、ワンセグ感度無し。
電子コンパスと気圧は計れた。念のため、遠距離射撃に必要な気圧だけは覚えておく。腕時計とも合致しているので、携帯は壊れていない。
この射撃場は市街地からかなり近い。それがどうしてこのような事になるのか・・・。パラージジャミング(電波妨害)位しか有り得ない。だが、不可能だ。このレベルの出力と電波帯域は容易に行えるものではない。
純粋に、電波発信源が消えたと考えたほうが良い。
つまり、非現実的ではあるのだが、ここは今までいたY県ではない。下手すれば、日本、地球ではない。GPSが使えないのが一番それを表している。
状況をまとめてみる。
現在地不明、天候は良好、時刻も不明、心身ともに健康、食料は無し、水分は事故が起こった際の傷口洗浄用に水筒が幾つか、医療用具は少しある。
・・・・・・そして、武器弾薬は豊富。銃はMINIMI(5.56mm機関銃MINIMI)と、64式(64式7.62mm小銃)と、9mm機関けん銃と、9mmけん銃だが小隊を編成できる数がある。弾薬にいたっては合計10万発は軽くある。
銃に装備するアクセサリーの類も官給品、私物を含めれば多種多様。小は薬きょう受け(薬きょうを回収するための袋)から、NVG(ナイトビジョンゴーグル、暗視装置)の類が大量にある。電池が切れれば無用の長物になるのが大半だが。
個人装備も豊富だ。大半が私物だが米軍正式採用のプレートアーマー(セラミックのプレートを入っている防弾装備)からエルボー、ニーパッドやけん銃用レッグホルスター等、多岐に渡る。
私物がここまである理由は簡単だ。
今回、弾薬消費の作業員に志願したのが全員趣味が高じて入隊したか、いつの間にか趣味になった人間だったからだ。
当然、指揮官の幹部も趣味人。密かに全員に好きなアイテムを思う存分持って来いと事前に言われていた。その結果がこれだ。
そういえば、標的代わりに炭酸水のペットボトルとか、某国の独裁者の写真とか、不倫して別れた妻の写真や、頭部を模した風船や胴体を模した古着もあったのを思いだした。
ペットボトルは貴重な水分なので回収しておこう。
写真については・・・・着火剤位になるかもしれない。
風船と称して、コンドーム持ち込んだ馬鹿もいたがこの際逆にありがたい。耐久度が物凄いので簡易水筒に使える。余裕で水が2リットル入る。故意で穴を開けられてないかは神のみぞ知る。まあ、穴が開いていても銃の銃口カバーにはなる。
古着については、廃品(耐用年数、あるいは更新により不要になった官給品)の作業服が大半だ。物によってはまだ着れる。下着は無いが。
それと、銃の清掃用に各種油脂と工具、ウェス(布切れ)もある。銃の性能はこいつによる。これらが無くなった時が死ぬときだ。工具の中には折りたたみのナイフやマルチツールプライヤーもある。これらは非常に助かる。サバイバルの必須アイテムだ。
最後に住処になる屋内射撃場。風雨もしのげる上に、射撃中に地面敷くための毛布や、薬きょうを受ける網、折りたたみ椅子にテーブルもある。射撃場内は明かりが無いが、それ以外は絶好の条件といえる。
正直、恵まれている。衣食住の内、食以外は当面何とかできるのだ。
サバイバルの基本の水分はかなりある。食料は銃で狩れば何とかなるかもしれない。
生き残れる。
来るかどうかはわからないが救援が来るまで何とかなるかもしれない。希望が沸き起こる。
安心して地面にへたり込んだ。
だが、安堵のため息をつき目を開けた先には、木に刻まれた、まだ新しい4本の傷跡。高さは俺の身長よりかなり高い。
アラスカのグリズリークラスでもいるのだろうか、ここは。
銃があって本当に良かった。