フィールドクッキング
野外料理
当初は、普通に昼食にお酒が付くだけだったのが、何故か本格的な宴会になっていた。
途中から、酒が蒸留酒に変わった。
これは美味い。
体感だがアルコール度数は30度前後。
味は苦みばしったブランデー風味。
まだ若く、まろやかさが無いがそれも良い。
最初の一口でむせかけたが、面白い味だと思う。
一口含み、舌で転がし、鼻で楽しむ。
一瞬アルコールが自己主張する。
甘みと苦味、少しの酸味、後味も悪くない。
若々しさを感じさせる、仄かに残る爽やかな香りも良い。
それに対するつまみは、犬肉の串焼きだ。
串に刺さった犬肉に齧り付く。
少し冷えてしまっているのが、かなり悲しい。
噛めば肉汁が染み出す。
生臭味がもったいない。
前歯で噛み千切り、犬歯で切り裂き、奥歯ですり潰す。
肉は食感を楽しみ、それに集中するのが美味しく食べるコツだと思う。
犬肉の串焼き自体は、食感がとても好きだ。
脂身が少なく、肉が程よく硬い。
本来は焼く為の肉ではないが、シチューやカレー用の牛肉を焼いたのに似ている。
シチューやカレー用の牛肉は安い。
また、脂身も少ない。
筋肉の塊なので硬い。
だが、それがいい。
確かに、焼くための牛肉の脂は美味い。
霜降りの蕩けそうな肉も良いと思う。
酪農家の肉の臭みを消すための努力は、俺の想像を超えるほどの苦行だ。
日本で売られている牛肉は、本当にレベルが高い。
だが、肉の本質は違うと思う。
肉が本当に美味い食べ方は、生か焼いただけの肉食べることだ。
それは人間の本能に刻まれている。
何故ならば、それが一番肉の味を味わえるからだ。
肉を煮るときは、肉の足らない味わいを補うための何かを継ぎ足すか、肉自体が料理の補佐に回るのかのどちらかだ。
今回の煮物向けの犬肉を串焼きで作った犬頭とは話が合いそうだ。
話が通じないのが本当に悲しい。
会話が出来れば、様々な情報交換と共に改善提案が出来るのだが。
決して不味いわけではない。
ただ、薄味の塩一筋の味付けは、最初は美味しく感じた。
だが、それだけでは流石に飽きる。
香辛料が欲しい。
汁物では気がつかなかったが、焼いた犬肉にはかなり血生臭さを感じた。
血抜きがうまくいかなかったか、殺す直前に急激な運動をさせたせいだろう。
コショウかニンニク、各種ハーブを効かせてやれば、多少の血生臭さも逆に味わいに変わるのだが・・・・・。
惜しいと思う。
真昼間から呑む酒は美味い。
それが大自然に包まれながら呑むというのは、実に風流じゃないか。
美味さが5割り増しになる。
因みに、俺の数少ない趣味の一つに、アウトドアクッキングがある。
キャンプ場や、火が使える公園に焚き火台や、ダッチオーブンと呼ばれる鋳物製の鉄鍋を持ち込んで、昼から酒盛りだ。
ダッチオーブンは勿論、ロッジ製。
このメーカーはダッチオーブン愛好家、ダッチャーならばこれしか使わないと言っても良いほどの老舗のメーカーだ。
ダッチオーブンは、一部例外はあるが鋳物だ。
鋳造によって作られる。
下手なメーカーの物を買うと、内部にすが入っていたり、目に見えないクラック、鍋と蓋が上手く合わないことがある。
ロッジはそれが無い。
何年も使えばわかるが、ロッジは良いのだ。
ノウハウが違う。
外見、機能は地味の一言に尽きるが、故に無駄が無い。
それが良い。
手入れが楽でさび難いステンレス製も良いが、それでも鋳物のロッジが良い。
ダッチオーブンは上手く使えば何十年も持つ。
親から子へ、孫に受け継がれていくダッチオーブンも珍しくないほどだ。
最初は銀色だった鉄鍋が、使えば使うほどに黒くなる。
黒くなればなるほどに、料理が失敗しなくなる。
勿論、本人が慣れてきたというのもある。
だが、鍋も使えば使う程、馴染むのだ。
そして、ダッチオーブンは黒くなったら一人前。
艶やかに黒光りするダッチオーブン、通称ブラックポットは、まさしく宝だ。
ダッチャーがよく言う、少し下品な冗談がある。
「嫁とピックアップトラックは貸せるが、ブラックポットは貸せない」
それくらいブラックポットは、本人には価値があるということだ。
ダッチオーブンは何でも出来る。
鉄鍋なので蒸す、焚く、煮る、揚げるは当たり前。
蓋を裏返せば、フライパンになる。
肉厚の鋳物は保温が凄い。
ステーキも絶妙な加減で焼ける。
重い蓋は圧力鍋効果をもたらし、火にかけておけば勝手に調理してくれる。
工夫次第では、燻製すらも出来る。
それは鍋の形をした万能調理器具といえるほどだ。
さて、そんなにわけで熱烈にダッチオーブンのことを思っている。
今、猛烈にダッチオーブンが使いたいのだ。
犬肉のオイルフォンデュー、犬肉の岩塩包み焼き、蒸し犬肉、犬の角煮等様々な創作犬肉メニューが脳内を埋め尽くす。
肉の臭みを消しつつ、旨味を味わえるメニューは幾らでもある。
別にダッチオーブンを使わなくても、幾らでも作れる。
犬肉の粘土包み焼き、犬肉シュハスコ、犬肉の木の葉包み焼き、犬肉の熱薫等、塩さえあれば何でも出来る。
調理器具と塩と香辛料が欲しい。
それさえあれば、満足な食生活が出来る。
何より、今満足できる!
ダッチオーブンの製作は無理だが、ちょっとした工夫で更に犬肉が美味くなる方法は幾らでも思いつく。
調理した犬頭に何とか伝えたい。
そうすれば、更に美味しい食事が食べれるはずだ。
ああ、言葉が通じればなあ。
泡盛呑みつつ、趣味のアウトドアクッキングを思い浮かべながら書きました。
ダッチオーブンでローストチキン作りたいです・・・・。
もっと暖かくならないかなあ。