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テリトリー

縄張り

 縄張り行動というものがある。ある一定のエリアに入らせないようにし、独り占めすることだ。

野生動物においての縄張り行動には2つの意味がある。

1つ目は子孫繁栄。繁殖のための巣の近くに近づけさせないということだ。

2つ目は食料確保。食糧確保するためのエリアに入らせないということだ。

これらの行動は野生動物だけ行うものではない。

人間だって同様な行いをする。

家、つまり不動産の所有等は人間にとっての縄張り行動だろう。


 で、何故今このようなことを考えていると・・・・。

犬頭から熱烈歓迎されているからだ。


 普通に考えてみよう。

他種族、おまけに面識もほとんど無いような存在は排他的になるのではなかろうか?

おまけに言葉が通じず意志の疎通も行えないような状態では。


 具体的に言おう。犬頭の村と言うべきか、仮住まいのシェルターの中心で、俺は犬頭達と食事していた。もちろん、自分から進んでここに来たわけではない。


 数分前、犬頭のことを少し観察しつつ、村から外れた川辺に座り込んで食事をしようとしていた。

で、座り込んでいい加減食い飽きてきた果物を食べていると、色々と顔なじみになった小柄な犬頭が近づいてくるのに気がついた。

今まで犬頭は積極的にこちらに関わってこなかったがどういうことだろうか?


 その犬頭はこちらに話し?かけてきたが、当然理解は出来ない。

因みに、当初は犬猫が鳴いているだけに聞こえたのだが、良く聞けば何らかの言語のようだった。

正直驚いた。


 犬頭は色々と話しかけてきたが、俺は首をかしげて理解できない旨を示した。

何度も話しかけられたが、ついに諦めたようだ。

少し申し訳なく思う。

 

 そして、犬頭は俺が持っている果物に気がついたのか、じっと見てきた。

まだまだストックはあるので犬頭に一つ渡してみる。犬頭はおっかなびっくりその果物を受け取った。


 恐る恐るといった感じで果物を口に運ぼうとする横で、俺は如何にも美味しそうに食べる。

それを見て安心したのであろう、犬頭は一口かじりついた。


 ・・・・・今更だが、犬頭って雑食だったんだな。

そういえば、犬焼肉ぐらいしか食べている記憶が無い。


 さて、そんな事を考えながら犬頭のことを観察していると、果物を嬉しそうに食べていた。

犬頭は感情が表情に表れやすい。

むしろ、身体全体で表す。

耳、尻尾、表情、その他諸々を観察していると飽きない。

可愛いと思う。

 

 それにしても、正直何故そこまで嬉しそうなのかわからない。

普通に森に実っていた物なんだが。

まあ、喜んでもらえたようで何よりだ。

それに気を良くしたというわけではないが、果物を幾つかリュックの中から取り出し犬頭に渡した。

尻尾の振り具合と良い、物凄い喜んでいた。


 で、その後に犬頭に引っ張られるまま、村の中心に連れてこられて今にいたる。

何かの動物の皮を座布団代わりに俺はくつろいでいた。

小柄の犬頭は俺に慣れたのか、やたらくっついてくる。

嫌がるといけないので、頭頂部の耳に触らないように撫でてやると心地良さそうだった。

何というか癒される。

犬頭の頭を撫でながら、少しこの村のことを思い返してみた。

最悪、逃走する際のルートを考えないといけない。


村の構造はこんな感じになっている。

村は恐らく水害対策なのだろうか、湖のほとりから少し離れた位置にある。

今は大丈夫だが、増水時や雪解けの季節などは危ないのかもしれない。

そのような時は注意しなければいけないと肝に銘じる。

 

 忘れてはいけない。

犬頭は外見は人からかけ離れてはいるが、かなりの知性を持っている。

道具の使い方、何らかの言語を持っていることからするならば人間に匹敵する。

つまり、犬頭達の行動、動作を見て盗めば生存する可能性は飛躍的に高まる。

野外生活の経験は明らかに犬頭のほうが積んでいる。

犬頭の一見謎に思える行動も、全て経験則に基づいたものに違いない。

 

 改めて村を観察する。

村は綺麗な円状に広がっていた。

これはどのような意味があるのだろうか?犬頭の慣習なのか本当に綺麗な円なのだ。


 村の中心には、キャンプファイアーのような巨大な焚き火の跡、その周りは集会場のような雰囲気だ。


 夜にはここで皆で語らいあうのだろうか。

それから少し離れてインディアンが使っていたような簡易型のテント群が円周上に並んでいる。

更にその外周には小規模な焚き火が並んでいた。

こちらはまだ火がついていた。

煮炊き用の火と照明用の火は別なのかもしれない。

つまり、中心の巨大な焚き火がメインの明かりで、外周の焚き火がサブの明かり兼、火種、調理、その他多目的な使い方をされているようだ。

それを効率よく使うための円状の村なのだろう。


 その他にも、色々と見方を変えると工夫が見られた。

一見無秩序に置かれている物も、効率重視で置かれているのがわかる。

各テントがそれぞれ役割を持っていて、それが関連しているグループで分かれている。

良く見れば、テントにはそれぞれの役割によって飾りがついていた。

色彩ではなく形状で区別しているのは、夜のことを考えているのだろうか?

 

 例えば、一つのテントを例にとる。

テントの屋根には逆三角形の灰色の毛皮で作った看板が掛かっていた。

このテントは育児用のテントのようだ。

大き目のテントだが、周囲に焚き火は無い。

周囲で小柄な犬頭や、犬みたいに四足歩行で歩いてる小さな犬頭がいた。

それを見守る何頭かの犬頭の行動は母性を感じさせた。

犬頭は村全体で誰の子供かを区別しないでまとめて育児しているようだ。

村自体が家族なのかもしれない。


 それと、忘れてはいけない物が一つあった。

畑だ。


 最初見たときは畑だと思わなかった。

犬頭は昨日ここに村を作ったのを覚えている。

それが、もう作物を収穫しているのはおかしい。

だから、それが畑に最初は見えなかったのだ。

精々、畑を作る前段階で開拓している最中だと思っていた。

根菜類なのか、やせ細った緑色のニンジンのような作物を手際よく収穫していくのは、まるで草むしりのようだった。

それが、等間隔で法則性をもって生えていなければ、本当に雑草にしか見えなかっただろう。

また、収穫直後に種を蒔いた瞬間から芽が出ているのを見たときは驚いた。

本当にこの世界は色々とおかしい。

だからこそ面白い。


 気がつけば、犬頭が目の前の焚き火跡を中心にゾロゾロ集まって座り込み始めた。

概算で村全体集まっている気がする。

次はどんな面白い物が見れるのだろう?

楽しみだ。

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