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トラッキング

追跡しデータを収集すること

 さて、予定が決まったところで行動に移る。

 

 犬頭の宿泊しているシェルター付近、湖から更に下流に歩いていく。しばらく歩き続ける。砂浜にて探していた物を見つける。


 蹄のあとだ。真ん中から左右に4本に分かれている。偶蹄目だ。鹿や牛、猪等がこれにあたる。何十頭もいるようだ、幾つか異なるサイズが見受けられる。水場に来ているということは草食動物の可能性が高い。肉食動物は獲物の体液から水分を摂取するので水分の摂取量が少なめだ。

 更に観察を続ける。足跡に明瞭な物と、不明瞭な物が見受けられた。一部は輪郭が崩れているのだ。体重が軽くて接地圧が低いから・・・・いや、違う。


 足跡を手で触れてみてわかった。湿り具合が違う。これは・・・・時間差であろう。

 

 何十頭もいると思ったのは勘違いかもしれない。これは、数頭が毎日通っているのだ。明瞭な足跡は湿り気をたたえていた。これはそれほど時間がたっていないことを現していないのだろうか?そして、今の時刻はまだ朝。数時間後には足跡、地面が抉れた後の水分は蒸発して乾く。それが風で輪郭が崩れて不明瞭になる。そう考えるのが順当であろう。事実、自分の足跡を触ると湿り気を感じた。明瞭なシカモドキの足跡と、俺の足跡の湿り具合はさほど差は無い。つまり、さほど時間はたっていないのかもしれない。


 つまり、暗いうちからここで待ち伏せしていれば狩れる可能性がある。狙撃ポイントは・・・・草をちぎり風向きを見る。風下にある木立の付近がいいだろう。距離は・・・・・概算500m。これくらい離れていれば、多少風向きが変わっていても匂いで気がつかれないはずだ。それに、木立の付近はここより高度が少し低い。つまり、朝の段階なら俺の匂いが温度で上に向かうことも無い・・・。まあ、この位置なら妥当なところだ。

 

 あとは・・・・・足跡をたどって、狙撃ポイント付近に向かっていないかを確かめるのと、出来ればフンが調べたい。何を食べているかを調べれば役に立つかもしれないのだ。


 しばらく足跡を追跡していると、木々の枝が折れたあと、くもの巣が破れたあと、様々な痕跡が見つかった。中には樹皮に傷跡が残っていた。これは角の痕だろうか?この生き物の武器のようだ。高さは俺の胸から顔面ほどだ。気をつけないといけない。


 また、樹皮には毛が何本も見つかった。このウッドランド迷彩風味の色はシカモドキに間違いない。いや、本当にこいつの毛皮は天然のギリ-スーツに使えるんじゃなかろうか。


 フンも見つけた。いや、良かった。フンの中には動物の毛らしき物や、昆虫類の外骨格片は一切見つからなかったのだ。砂らしきものや植物の繊維屑らしきもの等は見つかった。これでシカモドキは完全な草食動物だというのがわかった。調べたところ、主食は樹皮や木の芽、木の葉、草等のようだった。ただし、食べている量が尋常ではない。というよりも、フンの量が尋常ではなかった。正直、フンの量から何頭いるのか推測は全く出来なかった。


 それからしばらく追跡を続け、草原に出てきた。


 草原の各所にシカモドキの痕跡があった。寝転んだ跡、草を食べた跡、泥遊びした跡・・・・・。

 

 この様な草原も狩場に使えるかもしれない。トラップを仕掛けたいが、まあ無理なので諦める。何故なら・・・・・相変わらず犬頭が背後にいる。こいつらが引っかかりそうだ。


 正直、こう着いて来られては狩りどころの話ではない。俺が身を隠していても、こいつらが見つかる。最初の頃は微笑ましく思っていたが、そろそろいい加減鬱陶しい。


 当初は俺のことを警戒して監視しているように思っていたのだが、観察した結果違ったようだ。俺の行動を目で見て盗んでいるらしい。徐々にだが、犬頭の装備や行動に変化が見られるようになったのだ。真似されている。


 俺が普通に行動しているつもりだが、あちらにとっては新鮮に見えるものが多いのかもしれない。休憩中に荷物を下ろした際、肩をほぐしていたのを犬頭が真似していたのには思わず笑いがこみ上げてきた。いや、犬頭の軽装具合では肩がこるようには思えなかったのだ。こちらがシカモドキのフンを調べているのも真似されていた。何をしているのか理解されていればいいのだが・・・・。変な趣味の持ち主だと思われるのはたまらない。


 また、装備についての変化は短槍を所持方法に現れた。当初見たときは、手に持っていた。それが、いつの間にか革紐らしきもので肩から吊るすようになっていた。これは今俺がしている64式を肩から吊るしているのと同様だ。また、弾帯を真似したのだろうか、革紐をベルト代わりにして、それに小物をぶら下げる様が多く見受けられた。これも当初は見られなかった行動だ。


 そうかと思えば、一定距離から近づいてこない。こちらから近づこうとすれば一歩引くのだ。直接被害が無いから性質が悪い。追い払おうにも気兼ねするし、また戻ってきそうなのだ。どうすればいいだろう。顎をさすりながら考えていると真似された。勘弁してくれ。


 それにしても、犬頭も暇なのだろうか?こんな人数というか頭数がふらついている余裕があるようには思えないのだが・・・・。逆に考えると、それだけの頭数が俺の近くにいる、何かを目で盗むメリットがあるのだろう。それからするならば、もっとメリットになるようなものがあれば、それに注意がいくのではないか?そんな事を思いついた。


 A案 何か食料調達して、それを引き渡す。それを加工するのに人手をとらせる。

却下。そんな食料があれば俺が食う。

 

 B案 ばれない様に妨害工作をして、それの対処に人手をとらせる。

却下。友好関係は崩せない。そもそも犬頭のメリットにならない。


 C案 道具の製作技術の伝達。それの製作に人手をとらせる。

条件付採用。その様な都合のよいものがあるか?何より、犬頭にとってメリットに感じるような魅力的なものであるか?それを勘案せよ。


 脳内評議会の結果、C案を採用。現代知識の応用により、犬頭の生活を向上することに決定した。幾つか案はある。だが、それの大半はこちらのデメリットになるものだった。


 簡単に言うとだ。俺の知識で、この時代の技術レベルの道具の性能向上というと・・・・・武器の性能向上しか思い浮かばなかったのだ。それは、まずい。その矛先は俺に向く可能性があるからだ。


 正直、犬頭を信頼してはいなかった。今の関係は薄氷の上で向かい合っているようなものだ。こちらが犬頭にとって未知数の武器と能力を持っているのに対して、犬頭には数がある。そんな中でこちらが弱みを見せたらどうなるか・・・・。


 因みに、犬頭はまだ全てを俺に見せていないと思っている。何故なら、こんな狩猟も採取もあまり行っていない種族が100頭もの数でまとまっていること自体が異常だからだ。考えても見て欲しい、人間百人が森の中で食料を定期的に採ることが出来るだろうか?無理だ。山の恵みは数あれど、100人もの人数を満たすとなれば不可能ではないかと思う。


 つまり、何らかの手段で食料を調達しているか貯蔵している事になる。だが、犬頭達の軽装振りを見ると、貯蔵はしてないように見えた。また、全体的にある程度飢えているが、現状からすれば若干余裕があるようにも見える・・・。何というか、情報が足りない。そもそも、犬頭について何も知らないことに気がついた。


彼らのことも調べてみるべきだろう。現状の友好的な相互不干渉的な関係からの状態改善。その上で友好的な彼らとの相互理解、それが生きる上で重要なことになるに違いない。昼休憩がてら彼らの観察をしてみよう。座り込んで食事をしているだけなら、さほど警戒されないに違いない。


 それにしても、食事中も休めないとは、日が出てる間は本当に休む暇が無いな。そのうち、風呂でも作ってのんびりしよう。

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