表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋愛SLG「ラブ・フォーチュン」の主人公に憑依した人たちの話

学園は婚活会場ではない。そう考えていた時期が私にもありました

作者: 水城
掲載日:2026/05/18

「ラブ・フォーチュン」の選択肢は結構影響がある。自分に対する好感度の上下はもちろん、NPC同士の好感度に影響を与えるからだ。普通は自分が有利になるように選択肢を選ぶのが普通である。だが、何となくカップルをたくさん作りたいと考えるゲーマーがこのシステムを活用するとどんなことになるのか。今回は仲人ENDについて語るとしよう。

 聖フィールズ学園のクラブ連の建物。所謂平民中心のクラブが集まる日本的に言えばクラブ長屋の集まりの一角。


「淑女の集い」という一見さんには何の活動をやっているのか全く不明なクラブがある。


 構成員は5名と一応クラブの存続自体は認められている。過去に遡るとマナーを学ぶ平民と貴族の交流の場という時期もあった。これも表向きの話で実際のところは、思春期の女性が抱える悩みをうまく解消する相談所であり、利用は予約制で利用者は相談内容によって金銭だったり、お菓子だったりを差し出して駄弁るというのが本来の趣旨であった。そう私ことアルマがたまたまこのクラブにスカウトされるまでは。


「私エンデバー男爵家のナイトハルト様をお慕いしていますの」


 なるほど……殿下ではなくナイトハルトさんを。


「お友達からそのリューリアさんに相談したら上手く行ったと聞きまして」


 そのお友達がどなたを指しているかは存じません。自分はこの部屋を出たら難しいことは忘れることにしている。リューリアという名もこのアルバイトの為の源氏名みたいなものですし。だけど困ったな。


「お話は伺いました。ちなみにお嬢様とナイトハルト様は直接お話したことは」


 お嬢様は残念そうに首を横に振る。


「残念ながら。学生の間は配慮されるとはいえ、貴族の女性が婚約者や親戚でもない異性に話しかけるのはその」


 確かに破廉恥な側面はありますものね。噂されると恥ずかしいことになるかもしれませんし。


 縁さえできれば何とかなるのだが、今回は難しいか。前回無事に結ばれたキャシーちゃんとグレアムさんは平民同士だったから割と楽だったんだけどなあ。というか私が後押し必要な雰囲気全くなかったんですよね。本当にちょっと背中を押しただけ。


「私、浅学ながらお嬢様のお家のことはあまり理解しておりません。学生時代の良い思い出と割り切って清い交際をされたいのか、将来を見据えた結婚に結び付けたいのか、思いをお伝えして心を軽くしたいのか。それによって助言内容と、相談料が変わります」


 こういうのは、一度に片づけた方が良いと思うのだ。よって「ウエディングプランナー」として次にやるべき仕事は上司への相談である。


------------------------------------


 聖フィールズ学園の学園長室は東館の3階にある。部屋としてはそれ程大きくはないのだが、そこはやはり貴族も通う学園の長が座する場所なので調度品が凄いのだ。もっとも今自分が学園長と茶を飲んでいるのは学園長室の奥にある本当の意味でのプライベートルーム、狭くてあまりきれいではないのだが、落ち着くのはこっちである。


「アルマちゃんや、確かに聖フィールズ学園の学園生活が縁で結ばれたという話は枚挙にいとまがないがの。決して婚活会場ではないのじゃよ」


「とは言いますが、キノ・シータ先生立ち合いの下というか偶然いたところで結ばれたカップルは永遠に幸せになれるという伝説があります。男性はともかく女性はそういうのに憧れるものです。私が平民の学生に調査した結果、やっぱり結婚は別として恋愛には憧れて学園の扉を潜る決意をしたという中流層は結構いるのです」


 なおキノ・シータ先生はこの職について30年だが未だに独身である。恋愛運吸われているのではないかという制作スタッフの悪意を私は疑っている。


「確認を取るが、後で問題にならんかの」


「参加者の方々には一筆書いて頂きますし、貴族ゾーンと平民ゾーンは混ざらないようにいたします。それに在学して半年ですけど、6組のカップルを作った実績がありますので、培ったコネを使って何とかしますよ」


「世が世なら名仲人として名を残しそうじゃな」


 誉められて悪い気はしないけど、趣味で男女関係の云々はしたくないと思ったりする所存です。そうあくまでビジネスの範疇で男女の幸せを模索するような立場でないとやってられませんよ。


「学園長のイスというのは永遠に座り続けたいものではないのじゃが、スキャンダルの責任を取らされて放逐されるのはさすがに困るのでな。何、さじ加減を間違えなければうちは何をしても概ね許されるというのは伝統じゃからな」


 つまり押すなよ。絶対に押すなよの精神で取り組めということですね。不肖アルマ、見事に踊ってみますよ。この貴族社会という名の地雷原の上を優雅に。


「ガーデンパーティを開きましょう。OGのアリアナ様が面白そうだから一枚噛ませろと別邸の庭を貸して下さることになったわ」


 現淑女の集いの部長であらせられるカーラ先輩(婚約者あり)がそう宣った。


「先輩、言い出しっぺの私が言うのもなんですが、提案したの一昨日の夕方でしたわよね」


「そうね、その日の晩に王都内のOG会メンバーに祭りやるんですけどご協力いただけ頂けませんか(意訳)とお手紙を出したら昨日の夜に招集が掛かって説明したらそういう流れに」


 何というかアグレッシブなOGだな。


「暇人ですかその方々」


「王都に在中している貴族の婦人、日々忙しい商家の夫人、仕事に熱中しながら白馬の王子様を求めているロマンチスト(行き遅れ)。立場は色々だけど刺激が欲しいのよ。新しい料理や芸術でもよいけど、後輩を自分に見立てて恋愛もどきを楽しみたい。そんなタイミングであなたからの提案という名の波が来たから、乗り遅れたくないこの波にという感じで凄いわ」


 自分も含めて暇人というのはロクなことをしない。


「あとお手紙を出していないはずの名誉会長から打合せの結果を報告しなさいと今朝登城の使いが来たのには正直怖かったわ。私的ではなくクラブ活動の一環の呼び出しなので制服で済んだけど、再来年はあなたが担当するのだから次の顔合わせには参加しなさい」


 なんという面倒なというか、名誉会長王妃様なんですか。


「今は深くは考えなくてもいいわよ。必要かなという情報は王室に上げるけど、普段は本当に与太話で呼ばれるだけだし。


 平民の私が恐れ多いといいますか。


「あなたが始めたお祭りなんだからあなたが責任とるのは当たり前でしょ。尻ぬぐいはしてあげるから一緒に堕ちるのよ。身分でうるさいのなら私の家の猶子にしてあげるから」


 カーラ先輩(ご実家は辺境伯家)、目がいっちゃってるのは怖いです。


------------------------------------


 卒業式開催一か月前。そろそろ木々の緑が少しずつ色を失い赤や黄色に変わり始めた頃のこと。私ことアルマはマザーティティの焼き菓子を持ち込んで学園長と茶を飲んでいた。紅茶系も悪くはないが、そろそろ緑茶が飲みたいので知己を得た王太子殿下の婚約者であらせられるアナスタシア様のご実家を通じて取り寄せてもらっているところである。


「アルマちゃん、確かに儂は学園は婚活会場ではないと以前言ったがの」


「確かに仰いましたね。私もその辺は反省いたしました。学生には学生なりのお付き合いがございますものね」


 まさかカップルが増えて、恋愛禁止とまではいかないが、勉強しろよお前らという事態になるのは想定外でした。ですが同じ時代に出会い結ばれたのも何かの縁と申しますか。


「アルマちゃんが恋愛にうつつを抜かさないので成績が良いのは歓迎すべきことなのじゃが……それで今回の提案は」


「家事手伝い、あるいは行儀見習いという名目で高等遊民できるお嬢様ならまだしも、多くの方は仕事に出る訳でして。そんな学生カップル、特に平民におすすめなのが、卒業式が終わったら隣接する会場で結婚式を挙げるプランです。思い出の場所で一生の誓いをする。合同婚なら共通の学友がいれば一回で済んで掛かる費用もとてもリーズナブル。恩師も同じ会場にいますので馬車代を包む必要もないのも嬉しいですよね」


「一応確認するが、これ来年もやるんじゃなかろうか? 来年はアルマちゃんがまたやるとして、アルマちゃん卒業したら誰がこの事業を引き継ぐんじゃ」


 それは考えてなかったなあ。


「多分成功するとは思うのじゃ。卒業パーティの業者を通じて食事もそれ程心配しておらんし、婚礼用の貸衣装も婚姻のメインシーズンからちょっとズレているから比較的安くできる。というか淑女の集いのOGがその辺は協力するじゃろ。だけど物事には中心人物が必要での。アルマちゃんが卒業した後は誰がそれをやるのか。アルマちゃんは実利半分、趣味半分でやっておるが、その事業に手を出したいのはたくさんいると思う。何せフィールズの卒業生は有能だからの。アルマちゃんは何事もなければ2年後には好きな道が選べるよ。実際はお局様たちからの引き合いじゃろうけどね」


 それは非情に嫌な未来ですね。


「婚約すればそういうのは無くなるがの。望めば儂の籍を貸すから伯爵くらいまではいけるじゃろ」


 正直そこまでしてもらうのは気が重い。ちなみに今年卒業するカーラ先輩的には身分貸しはまだ有効らしい。


「縁というのは大事じゃ。正直に言えば、王太子の婚約者を君に変えてもいいくらいのコネクションじゃ。ただ王妃はある程度の水準があれば務まるが、君はアナスタシア嬢とも仲が良いので、将来の側近として登用されるのが無難じゃろうな」


 いやまあ、まあまあのお得意さんですからねアナスタシア様。やれ王太子は女性心が分かってないやら、自分のことは愛してないやら。マリッジブルーのお嬢さんの面倒みるのも仕事の内ですから色々アドバイスをしている内に懐いてしまわれた。


「婚姻というのは中々自分の意思を押し通すのは難しいものです。最初に躓くと女というのは死ぬまで口に出すか心の中でつぶやくかは別としてネチネチ言います。それは身分の上下関係ないんですよ残念ながら。だから身分なくそういう手伝いができる仕事を作るしかないですね」


 こうして私の第一目標は前世と同じくウエディングプランナーと相成ったわけである。


 これが十数年後、結婚式場リューリアの支配人となるアルマの物語である。なお彼女が結婚できたかは神のみぞ知る。


仲人END

クリア実績の中では計画性が問われるエンディングの1つ。条件としてアルマの立ち合いの元でカップリングを50組成立させる。カップリングの立ち合いは休日パートを除く、学園パートの放課後のみ可能で1ターン1組まで。80ターンしか学園パートがない本作としては好感度管理が非常に難しい。手っ取り早いのがグループイベントコンボによる好感度同時上げだが、その為にはアルマ自身の能力値を上げなければなければならない。実績解除だけを目的とした場合は、お手軽ステータス上げイベントを踏むのが良い。後は試行回数だ。何とか貴族の婚約者なしの人間を見つけてくっ付けろ。いやマジでそういうルートなのである。動物のつがいを作れば大幅に手間が省けるというバグだが仕様だか正直自信がない方法が編み出されるまでは。


以下登場人物

アルマ

変人指数は低い。真っ当な恋愛観と真っ当な社交技術を兼ね備えたお貴族様の前に出しても大丈夫なタイプである。マザーティティの焼き菓子を好む。マザーティティは前回出てきたティティさんの実家が出資している菓子店 


学園長

学園によくいる好々爺。このエピソードではそうであるとしか。


カーラ先輩

割と普通の貴族の御令嬢。伝統あるクラブの代表を務めるが、鉄火場を務められそうな後輩を見付け、親に頼んで猶子にしようかと目論んでいる。


OG会

身分問わず女傑の集まり。名誉会長は王妃様で、数年後にはアナスタシア様が代わりに名誉会長に就任する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ