第16話・未来の私と過去の私(1)
あの時は――
お母さんの仕事が休みで。
みんなで、お出かけしたんだ。
ーお兄ちゃん!!
ーなんだよ、風花。はしゃぎすぎだぞ。
お兄ちゃんは、この時9歳。
9歳にしては、めっちゃ冷静だった。
ー風花と凪ちゃん、シートベルトした?
ーはーーい!
ーお兄ちゃん!しりとりしよ!りんご!
ーご……ゴミムシ。
ーし!しまうま!
この時は、ずっとしりとりしてたんだ。
ー凪と風花、仲良しねー!
ずっとしりとりしてるじゃん。
お母さんの笑顔。
……好きな笑顔だ。
ーもう着くわよ!遊園地!!
ーわーーい!わーい!
この時の私は。
みんなと遊園地に行けて。
すごく嬉しくて――
ずっと、はしゃいでた。
「入場料ください」
……ん?
あ、私?
幽霊じゃないの?
「あ、あぁ……いくらですか?」
900円か。
あれ、ポケットに入ってる。
「楽しんで行ってらっしゃいませー!」
ーきゃぁぁぁ!!
……あぁ。
思い出した。
私、この時。
ジェットコースターが怖くて、大泣きしたんだった。
お兄ちゃんは――
お化け屋敷が怖かったらしくて。
お母さんは、ずっと笑ってた。
この時は。
本当に楽しくて。
あっという間に、時間が過ぎていった。
「あっ。風花ちゃん」
声。
知らないはずなのに。
なぜか、懐かしい。
「お姉さんと、約束してほしいことがあるの」
「……約束?」
「お兄ちゃんは――」
一瞬、間が空く。
「死んでも、守ってほしいなーって思う!」
笑顔。
でも――
どこか、違和感があった。
「よろしくね」
(……誰)
この時。
私は――
誰と、約束したんだっけ。
「……あれ」
違和感が、広がる。
この約束。
「……これって」
ゆっくり、気づく。
「私が……私に?」
記憶が、揺れる。
何かが――
繋がりかけている。




