第13話・初めて繋がるピース
凛も、ここに住むことになった。
「花那、最近大丈夫か?ずっとうなされてるけど」
「……大丈夫」
小さく返ってくる声。
でも、その様子は明らかに普通じゃない。
ここしばらく、事件は起きていない。
あのクリスマスの日――
遊園地で見つかったのが2人。
女児の遺体と、行方不明の子供。
その後。
近所で見つかった遺体が2人。
花織と、ほぼ同じ時期に死んだとされている。
「……これで、合うはずなんだけどな」
小さく呟く。
ピースは、埋まっている。
でも――
「足りねぇ」
クリスマスの日。
もう一人、いるはずなんだ。
帰り道で見た、黒いバラの花びら。
あれが、頭から離れない。
ピンポーン。
「……誰だ?」
インターホンが鳴る。
ドアを開ける。
そこにいたのは――
「あの時の警察官……」
見覚えのある顔。
「あの、すみません」
少しだけ申し訳なさそうに言う。
「警察は……やめました」
「は?」
思わず声が出る。
「でも、この事件」
一瞬、間を置く。
「あなた達に、協力したいんです」
「……なんでだよ」
警察を辞めてまで?
男は、少しだけ目を伏せた。
「何度か、この家のパトロールや訪問をしていて」
「気づいたんです」
ゆっくり顔を上げる。
「この事件、普通じゃないって」
部屋の中の空気が、変わる。
後ろで凛が立ち上がる。
花那は、黙ったままこちらを見ている。
「……で?」
短く聞く。
「何が分かった」
男は、はっきりと言った。
「黒いバラ」
その一言で、全員の動きが止まる。
「これ、今回だけじゃない」
背筋が冷える。
「もっと前から、同じものが使われてる」
「……どこで見た」
思わず、声が低くなる。
男は、一歩だけ近づいてきた。
そして。
小さく、言った。
「あなた達が思ってるより――ずっと前です」
沈黙。
重い空気。
でも。
確信だけが残る。
「……いいですよ」
ゆっくり口を開く。
「協力、してもらう」
凛が小さく頷く。
「歓迎するよ」
男は、もう一度だけこちらを見てから、続けた。
「そのバラなんですが」
空気が張り詰める。
「30年ほど前に、一人の男性が遺体で発見されています」
「その時も――バラが添えられていた」
心臓が、強く打つ。
「……名前は?」
喉が乾く。
男は、はっきりと言った。
「間宮四郎」
一瞬、時間が止まる。
「20年前の事件――」
ゆっくりと続ける。
「間宮凪と、風花の父親です」
「……っ」
言葉が出ない。
頭の中で、何かが繋がる。
30年前。
20年前。
そして、今。
黒いバラ。
全部が――一本の線になる。
「……じゃあ」
かすれた声で呟く。
「最初は……そいつか」
静寂。
誰も、すぐには言葉を出せなかった。




