第11話・帰り道の花びら
「ここでも……?」
思わず、声が漏れる。
やっぱり。
クリスマスだから――
キーン……
園内に、不快な音が響く。
次の瞬間、アナウンスが流れた。
「ただいま園内にて、行方不明の子供が一名、そして女児の遺体が発見されました」
空気が、一気に凍る。
「来園者の皆様は、スタッフの指示に従い、直ちに退避してください」
女児の遺体。
その言葉が、頭の中で反響する。
「……っ」
嫌な予感が、現実になる。
「なぁ凛!」
声が強くなる。
「花那、離れるなよ!」
反射的に手を伸ばす。
「花那、こっち来い!」
手を掴む。
小さくて、温かい手。
ちゃんと、生きている。
それだけで、少しだけ安心する。
「優希……」
凛が、低い声で言う。
「女児の遺体って……やっぱり」
「あぁ……」
言わなくても分かる。
さっきの子供だ。
ウーウーウー……
サイレンの音が近づいてくる。
「……警察か」
人の流れに押されながら、出口へ向かう。
スタッフの誘導。
泣き出す子供。
ざわめき。
全部が混ざり合って、ぐちゃぐちゃになる。
その中で。
一人の警官と目が合った。
「あ……」
前に来た、あの警官だ。
「またですね」
小さく、そう言った。
その声は、どこか重かった。
「……気をつけてください」
一瞬だけ、目が鋭くなる。
「これは、もう――偶然じゃない」
そう言って、すぐに人の中へ消えていった。
「……分かってるよ」
誰に言うでもなく、呟く。
そのまま、外へ出る。
冷たい空気が、頬に刺さる。
さっきまでの光が、嘘みたいだった。
「……帰るか」
小さく言う。
凛も、何も言わずに頷いた。
花那も、静かだった。
その帰り道。
ふと、違和感を覚える。
「……ん?」
足元。
街灯の下。
そこに――
ぽつりと。
黒い花びらが落ちていた。
「……なんで、こんなとこに」
嫌な予感が、胸を締め付ける。
まるで。
“まだ終わっていない”と、言われているみたいに。




