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  作者: まつこ
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異世界探訪パート①

粗削りでつらつらと書いていきます。半分異世界物です。

 ある快晴の昼下がり、日陽里は落ち込んでいた。


 重い足取りで電車を降り、昼食時で大勢の人が行き交う街を鬱屈としたオーラをまといながら歩き、駅から商店街を抜るルートで自分を自宅まで運ぶ。

 アパート階段を上がりやっとの思いでドアを開けた。鉄製のドアは"キィー"と音を鳴らしながら日陽里を迎え入れる。玄関で履き慣れないパンプスを放おるように脱ぎ捨て、リビンクの電気を点けてソファーに座り部屋を眺める。

 景色はあまり良くない、散乱したペットボトル、ゴミ箱からこぼれた丸めたティッシュ、雑に纏められた化粧品が、無言の重圧のように感じてお腹の上のあたりが気持ち悪い。いや、ただ単にお腹がすいているからかもしれない。

 

 本日の面接 3件 採用なし


 連日の面接で疲れ切ったメンタルが少しづつ崩れていく。

 くよくよ考えないのが私の美点だとなぜ思ってしまったのか日陽里は自分の楽観主義を後悔し始めていた。

 ふと、面接で言われた"やる気が伝わってこないんだよね"に対して、もはや慰めや励ましの言葉は浮かんでこなかった。今の自分を肯定しても負け犬みたいで嫌だった。でも弱音はさらに自分を弱くする気がする。

 ポニテをほどいて髪の毛を振りながら、習慣でカバンからスマホを取り出しテーブルに置く。


 スマホの時間は12:77を表示している


 お腹がすいている

 ご飯にしよう


 欲求は語りかけてくる。


 面接担当の嫌なニヤケ面を脳内でかき消して、上着をベッドに放りパーカーに着替える。

 帰りにコンビニ寄ればよかったなぁ…なんて思いながら、今さっき帰ってきたばかりの玄関に戻りパンプスを脇に寄せスニーカーに足を滑らせる。


……。


…違和感


いや、違うか


ドアノブに手をかける


…開かない?!


「なんで?」


日陽里の脳内は先ほどの鬱モードから一気に覚醒してパニックモードに移行した。


「なんで?なんで?おかしいでしょ」


 思わず早口でまくし立てる、鍵は…開いてる。よね?ドアノブをガチャガチャしながら再度確認、鍵は…間違いなく開いてる。

 それなのに玄関の扉は頑として開く気配がない。何か自分が間違えているのかと思って"内鍵をひねる"ドアノブを回す。"内鍵を戻す"ドアノブを回す。を繰り返しても結局は同じことだった。ドアの不具合?故障?そんなことあるのだろうか


「ふざけてる?」


 物言わぬドアに怒りを覚え始めたその時、ハッと思いたってドアスコープを覗き込む、もしかして"何か"玄関の外に置いてあって開かなくなっているのかも。

片目を凝らし辺りを見渡す。が、日陽里の予想とは違って何も変わったものは見えない、ドアの下あたりはギリギリ見えないけどそこに原因があるのだろうか?

 

「オーマイゴッド」


 理不尽で不可解な状況に思わず口走る、そして先ほどの怒りよりも好奇心が勝ってきた。助けを呼ぶことも考えたが、まずは1人で解決の手段を模索したい。そう思い日陽里はテーブルのスマホに手を伸ばす。頭の中で「ドア 開かない 原因」や「ドア 開かない 修理」などと考えながらスマホに表示されているものに衝撃を受ける。

 

  12:81


 ???!!


 スマホの時間はどう見ても分数のところが81と表示されている。スマホも故障?そんなことって…

 急いでロックを解除して検索バーを開く、検索履歴で"面接 NGワード"をタップすると一覧が表示された。ひとまずネットは使えるようだ。

 電話を掛けようかと思ったが頭の中ごちゃごちゃで何から手を付けていいか分からなかった。


「もしかしてあの時…」


 今さら気が付いた、閉じ込めをくらう直前に玄関で感じた違和感の正体。私はカバンから取り出したスマホを一瞬見ていた。はっきりとその時の場面が脳裏に蘇る。その時はスルーしてしまったが普通ならあり得ない"77"が表示されていたのだ。これはどういうことだ?

 ふと、スマホに目を戻すと 12:86 時間が進んでいる。異様でしかない時間表示に日陽里の意識は集中する。次の瞬間、表示は 12:87 に変わった。感覚的にも普通に時間が過ぎて数字が増えているようだ、確かめるために秒数を数えてみる。


 1…2…3…4……


 …57…58!


 58秒まで数えたところで 12:88 やはり時間は1分を刻んでいる。ただ普通なら13時に変わるはずの12がそのまま変わっていない。謎に壊れたスマホに開かない扉、なんだか気味が悪くなってきた。

 そして、その時は訪れる。


"ピンポーン ピンポーン"


 突然のインターホンにビクッと身体が強張る。普通ならこの状況に誰かが来てくれたなら"助けてもらえるかもしれない!"そう思うだろう。しかし、日陽里にはそう思えなかった。なぜかは分からないが言いようのない不安に包まれる。


「はい」


 短く、でもはっきりと聞こえるように日陽里はこえをかけてみる。返事はない。スマホを片手に、ゆっくりと立ち上がり玄関に向かう。壁に手を当て、体を支えながら身を乗り出しのぞき穴に顔を近づけた。そこには、……小さな男の子が立っていた。


「おとどけものです」


 その子は小学生低学年位の身長で黄色い帽子、白いTシャツ、青いズボンを履いていて、年相応の可愛らしい声でこちらに言ってくる。


「かしわぎひよりさんに、おとどけものです」


 こんな小さな子が配達?いたずら?いや、そんなことより


「ごめんね、今ドア開けられなくて、近くに大人の人いるかな?誰かいたら呼んで欲しいんだけど」


 ドア越しに伝わるように大き目の声で男の子に伝える。もしかしたら助けを呼べるかもしれない、そう思うと希望が湧いてきた。

 返答を待ちながらのぞき穴で男の子の様子をうかがう。男の子は顔を伏せたまま黙っている。


 「おとどけものです」


 そう言うと、走り去ってしまった。


「あっ、まって!」


 言ってみたものの少年は戻ってこなかった。そもそも会話も成立させてもらえなかった。大声を出せばほかの人を呼べるだろうか?そういえば、少年は"お届け物"がどうとか言ってたけど…

 日陽里は視線を落として、郵便受けの中を確認してみるが、中には何も入って……!!?

 いや、何か入っている!!取り出してみると4つ折りの紙が出てきた。手のひらに収まる程のその紙をゆっくりと開いた。


"はずれ"


 そう書いてある。普通ならこの状況をいたずらだと思うだろう。実際、そう思った。しかし、紙に書かれている文字はスッと消える。そして、新たな文字が、いや文章が浮かび上がってきた。


"残り回数 3"


 思わず紙から手を離す。ヒラヒラと足元に落ちて裏返る。

 文字が消えて……文字が浮かび上がってきた?!!再度確認するためにゆっくりとしゃがみ慎重に足元の紙片をめくる、"残り回数 3"やはりそう書かれている。その下に先程は読めなかったが文章が続いている。


"施錠された扉から出ることはできません。部屋からでないでください。来訪者に対してYESで入室を許可。NOで入室を拒否することができます。入室を許可した際は取引が可能です。今回のノルマは2回来訪者と取引することです。取引成立後ポイントが付与されます。取引不成立又は回数券を使い切ることで終了となります。難易度★"


 読み終えた日陽里は思った。何一つ分からない、もしかしたらとんでもないことに巻き込まれたのではなのか?状況を飲み込めないものの、不思議と冷静さを取り戻している自分に少し驚く。

 もう一度読み返す。少し考えてから、自然と足は動き出していた。リビンクを通ってベランダの方へ進む。カーテンから外の光が透けていない。

 薄々気がついていた、のぞき穴から外をみた時外が異様に暗かったし、キッチンの小窓からは昼間に差すはずのない廊下の蛍光灯の光。

 明け放ったカーテンから見える景色は…


 漆黒の闇だった。



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