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prologue
――真夏に降る雪は冷たくない。
誰かが言っていた。
窓の外、窓ガラスに打ち付ける雪を見ては、胸が痛んだ。
あれは、人。
人、だった、もの。
だから溶けないの。
だから、冷たくないの。
『キミは唯一の生き残りだ』
ある日突然、
なんの前触れもなく昇華する。
今、目の前にいた人が、
まばたきをした、1秒にも満たない間に、砂に還るのだ。
なぜ?
どうして?
まっしろな空間。
外は雪。
おなじぐらい、しろい肌。
きらきら光る、灰かぶりの髪。
『ただ生きていてくれたら――……』
*
開眼した、と自覚する。
さっきまで視ていた空間は存在しない。
管が伝う腕、その先の大きな液体、ピッピッと一定のリズムを刻む機械がくねくねを継続的に知らせてくる。
「…………?」
彼女が病院の一室と気づくのは、様子を見に来た医師が現れてからのこと。
ゆっくり起き上がり、薄いカーテンに手を伸ばせば、目を刺すような光に頭が眩んだ。
雪は降っていない。
かすかに波の音がする。
(――ここは?)
ようやく自問する彼女に心当たりはない。
それどころか、ここに来た経緯すら思い出せないでいた。




