火事
小説を書くのは人生で初めての経験でした。自分の文章を書く力を上げていきたいと考えています。もしよろしければ読んでいただけると幸いです。
燃えている。家が燃えている。"僕"の家が燃えている。無意識に3度も言ったのは目の前の事実を認識するためなんだろう。だが脳が認識を拒む。いや僕が拒絶しているようだ。その証拠に足はすくみ現場から離れようとする。さながら他人事にしたいかのように。口からは空の言葉しかでず目からは何もでなかった。体が本能的にこの場から離れようとしている。しかし感情によって動く部位は全く持って機能しない。体が本能と感情によって分断されたように感じる。
そんな時ふと思い出す。
父と妹はどこか と
家にいたはずの2人の姿が見当たらない。いったいどこにいるのか。疑問が飛び出すとともに自分が家族の安否を気遣えるほど本能的にも感情的にも落ち着いてきていることに気づけた。その瞬間に鼻がへし曲がろうとするほどの異臭が飛び込んできた。どこかで嗅いだことのある匂い。まるで生ゴミを焼くような、肉を焼くような、人を焼くときのような、そうだあの時と同じだ。母を焼いた時の匂いと同じだった。火葬場での忘れるように努めた匂い。僕を苦しめる匂い。家族を捨て男を作ったクズを地獄に送ろうとした憎悪の匂いーーー
はっとして家を見る。2階のベランダから人影が見える。僕はもう体の操作権を本能から僕へと戻していた。急いでベランダの下に駆け寄る。誰かに止められた気がしたがそれどころではない。ベランダには妹がいた、と安堵したかった。ベランダには父がいたと喜びたかった。そこには人型の炭が動いている。憎悪と悲観をはらんだ無機物が産声を上げる。それをみて僕は体の動かし方を忘れ感情の作り方を忘れる。ただ上を見上げたまま固まってしまった。すると上から前腕のような炭が降ってくる。塊は僕の額に当たり僕は悲痛を上げる間もなく倒れ込む。頭の打ちどころが悪かったのか意識が薄れゆく。視界に映り込む黒き塊には妹の結婚指輪がついていた。意識が戻る頃にはすでに火は収まっていた。僕は倒れた後病院に運ばれたとのことだった。看護婦によると僕は約半日意識を失っていたそうだ。1人状況を飲み込めず病室のベッドで黄昏ているとドアのノック音が聞こえた。返事をすることもできずにいると扉が開く。大柄の2人の男。見たらすぐに消防士とわかる格好をしていた。「松原さん、突然失礼します」と僕の苗字を神妙な顔で言う。なんとなく何を告げられるかを悟り僕は固唾を飲み込む。告げられた言葉を予想通りで僕は家族を失ったようだ。彼らはその後の手続きの話をあらかた話した後に退室していった。10分ほど思考が放置され無くなっていた感情が取り戻され目頭が熱くなる。かつてニーチェが遺した神は死んだという格言は真実だったのだろう。でなければこんな幸運を全人類に平等に与えないからだ。基本的に生物は群れという生命維持上必要不可欠な物を失うと死にかつてなく近づく。人も例外ではない。しかし人の力とは個々人の肉体的パワーではなく財政力にある。群れの全ての財政力を手にすることができた僕はこの状態に興奮する。家族が助かって財政力が維持されることを期待していたが僕は思わぬ形で全てを手に入れた。母の血をしっかり受け継いだ妹に実の娘が10の頃からレイプする父。クズどもが死に金が残る。聖火がクズを燃やし尽くし僕を潤してくれた。熱くなっていた目頭からは涙が流れ涙が新生活の芽を潤す。これからはこの天井を一生見上げ多くの金と生きていく。涙によって育った芽は僕の首から下を全て包み込んでいた。
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