これからのこと
「そんな事言わないでよぉぉぉおおおマサト君おねがああああい!あたし…あたし…うぅ…」
「マサト様。そんなに怒鳴っちゃダメですよ。こうゆう時は優しくヨシヨシしてあげるんです。」
ラズリー。どうしてこいつの味方なんだ。
「はぁ…。ラズリー。そんなこと言ってもなぁ…」
「どうせ…どうせあたしなんて何も出来ないんだ…うっ…うぅ…」
何も出来ない…か。そんな顔で見るなよラズリー。俺に気の利いた言葉なんて求められても何も出てこねぇよ…。何せ俺も何も出来ない人間なんだから…。
「マサト様…。」
「養えなんて言われても今は何も出来ないよ。」
「うっ…うっ…マサトくん…。」
「…はぁ。ギルドにも行ってないのにどうやって養うんだよ?どれぐらい稼げるかも、仕事が何かもわかんないのに約束なんて出来ないだろ?」
「じゃあ稼ぎが良かったら養ってくれる…?」
だらしなく泣く歳上のお姉さんと心配そうな面持ちの美少女を前に、断る選択肢など無かった。
「良かったらな。良かったら。」
「マサト様…!」
「あーん!!!マサトさまー!!!ありがとうー!!!!」
「おい!やめろ!抱きつくな!汚れんだろ!それにまだ決まったわけじゃ」
「大丈夫よぉ。マサトさまなら魔道士ギルドですーーぐに大活躍できるわぁ!」
「なっなんで分かるんだよ…」
「だってラズリーちゃん。悪魔でしょ〜?悪魔って強いのよー?魔法なら神にも負けないわ。」
「なっ!お前!謀ったな!?」
「ふっふーん。何の話かしらねぇ?」
「てめぇ…」
「マサト様……」
「ん?」
「あら?」
ラズリーは震えていた。
「私がいながら…ジェシカさんに…。」
「ま、待てラズリー。こいつが勝手に」
「もー!マサト様のバカー!」
ラズリーの咆哮は魔法と共に放たれた。
重力を操るラズリーの魔法はただ重くなる、軽くなるなどという単純なものではない。もちろん特定の場所や物体に対し、重力を増やしたり減らしたりする事で負荷を掛けたり減らしたりは可能だ。だがそれだけでは、カイトが放った水の斬撃のように特技に分類されてしまう。カイトが使っていた特技、「レレイド・オータウル」は槍に水の魔力を纏わせた後、その水状態の魔力を斬ることで斬撃を飛ばすというもの。よって魔力を槍に纏わせる以上の魔力の操作をしてはいない。対して、魔法は魔力を自在に操るもの。つまりラズリーの重力魔法は方向や角度、範囲や形態に至るまで、彼女の管理下にある。はずなのだが、半径六十メートルに亘りラズリーを中心とした半楕円形に咆哮と共に広がったその全てを遠ざける過剰な重力波は、マサトを想っているのなら。やりすぎであった。
マサトは受けたことの無い衝撃に一瞬にして白目を向いて飛んで行ったが、ジェシカは意識の薄れる寸前で誓った。
ラズリーちゃんは怒らせないようにしよう…
と。
「もー。マサト様!私がいながらジェシカさんと…って。えーー!!!ごめんなさい!!!マサトさまーー!!!!!」