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怠惰の英雄  作者: ケイ
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起きたら昼間で王宮で

「んん…なんだよ…眩しいなぁ…」


俺はいつものように、閉め切った真っ暗な部屋で日が沈む頃まで眠っているはずだった。

窓際にはホコリが積もり、黒く分厚いカーテンがウザったい太陽から俺を守ってくれる。床には数日かけて飲み干したエナジードリンクとビールの空き缶。カフェインとアルコールを適度に抜くために飲んでいた水のペットボトルももう、数え切れないほど溜まっていた。青いカーペットの上に敷かれたお布団にぬくぬくと挟まれ夜になるのを待つ。日が沈めばまた、付けっぱなしのパソコンの前に座り、オンラインゲームに勤しむ。それが俺の日常だった。けれどその日は何故か布団は赤くて長い敷物の上で、黒く分厚いカーテンは白く薄めのカーテンで、おまけに左右に纏められ窓から日の光が刺している。

これじゃ太陽がやりたい放題してくるじゃねぇか。ていうかなんだ?どこだよここ。俺の天国は何処に。


「んん…?なんだ…?お前ら…」


久しく浴びる日光に目を擦りながら辺りを見渡す。なんだか物騒な鎧を着た野郎共がレッドカーペットの端に沿い、均一な間隔で並んでいる。俺の布団の周りにはまるで焚き火に手を当てるかのように両の手のひらを向けてくるマントの集団。


「成功した様です。国王様。」


「うむ…。だがこれは…。」


太陽の攻撃に負けじと目を開ける俺。するとなんだ。伸びた敷物の先で玉座に座る王冠付きのジジイがいるではないか。横にいるのは側近ってやつか?随分長い帽子だな。ていうか今、喋ったのか?夢で声が聞こえるなんて…やはりこの期に及んで初のMMOに手を出したのがまずかったか…。


「まずは儀式の結果を見てからだな…。準備は済んでいるか。」


「はい。すぐにでも始められます。」


ジジイと長帽子がなんか話しているがよく聞こえん。眠いからってゲーム音量上げるのも無しだな。あれ?まだ目が覚めねぇな。こんだけ明るくてうるせぇならとっくに…。


「夢…じゃないのか…」


「貴様!態度を改めよ!いつまで布団にいるつもりだ!国王様の御前であるぞ!」


鎧を着た連中のボスと思しき男が斧の持ち手を伸ばしたような長い武器を地面に突き立て、デケェ声で威嚇してきた。均一に並んだ列の端、ジジイに1番近い位置に立ってるしなんか一人だけ違う鎧着てるし身体も態度もデカイ。うーむ。怖い。


「そう声を荒らげるでない。彼もいきなり召喚されて戸惑っておるのだ。少しは大目に見てやるのがこちらの礼儀ではないか。」


「しっ失礼しました。」


やっちまった。と言わんばかりの表情を見るに、普段からあんな感じなのだろう。しかし、俺が言うのもなんだがボスの言い分も分からんでもない。あの髭面で冠乗っけたジジイが国の王なら、俺は間違いなく無礼だろう。上半身を起こしたとはいえ、下半身は布団の中。寝癖で髪は鳥の巣みたいだし服装はジャージだ。普通お偉いさんに会う時にはそれなりに身なりを整えるものだ。まぁ国王どころか会社の上司とやらにすら会ったことの無い引きこもりニートの俺にはそんなこと、どうでもいいしめんどくさいだけなんだけど。


「なぁ。ここどこだ。日本…でもないよな?多分」


「ここはアルラトール。私はその国王、アルランタ・バーリルト三世じゃ。すまんがこれ以上は儀式が済んでからだ。」


国王のジジイが合図するとマントの集団が俺の両腕を掴み、出口の方向へ引きずる。ああ…俺の愛すべきお布団。


「儀式ってなんだよ。それも後でってか。おーい。何とか言えーい。」


こうして俺、相田誠人(あいだまさと)は突然異世界に召喚され、強制的に謎の儀式とやらに連れていかれた。

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