EP.24 リアルおままごと.1
迷宮の出入口となる場所は、確認されているだけでも二十箇所あり、年に一回魔物さんが押し寄せて来るのはその内の五箇所らしい。
さっちゃんが担当しているのは、華ノ恵百貨店の地下であり、他の出入口より黒い渦が大きいから、さっちゃんが居ないと持ち堪えれないそうだ。
なら、他の地区はどうだろうか。
今まさに、那邪道地区の迷宮の出入口に向かってるのだけど、何だろう……違和感しか無い。
「さっちゃん、本当にこの場所なの?」
「ええ、この場所ですわ」
「……唐揚げ食いたいな」
そうだねレオンちゃん。
日本全国何処にでも在って、終末の刻が起きた時でさえ営業を続けていた、無くてはならない便利なお店。
「桜乃オーナー! 此方は周囲を固めておきます! 連絡を頂けましたら鉄塊を動かしますので、後はお願い致します!」
「分かったわ。桐藤さんと野小沢さんが居れば、何とかなるでしょう」
「どうだかなぁ……」
「レオンちゃん! きっと大丈夫だよ!」
何か有れば私が盾になるもん!
さっちゃんとレオンちゃんには、指一本触れさせません!
一番最初にモフるのは私だからね!
それじゃあ突入なんだよ! 『コンビニ』に!
ウィィィィン────(ピロピロピロピロ)
「違和感が凄いっ、普通に買物しに来た気分になるんだよ!?」
「唐揚げあるじゃん、しかも揚げたてだし」
あれっ? 営業してないよね?
何で揚げたての唐揚げがあるの?
しかもちゃんと、専用の入れ物用意されてるし、美味しそうな匂いしてる。
「……どう言う事…ここは封鎖してた筈……桐藤さん、野小沢さん、気を付けて下さいまし」
「何をどう気を付けんだよ」
「唐揚げに、お惣菜も有るんだよ……帰りに買うから、レジに置いて『いらっしゃいませ!』っ!?」
いつの間にっ、レジ下にしゃがんでいた!?
それよりもこの子っ、あの女の子に似てるけど違う! それよりも小さいモフモフ幼女だぁあああっ!?
「花乃歌! 下がれっ!」
「桐藤さん! 今直ぐ離れなさい!」
「待ってさっちゃん!レオンちゃん!」
下手に刺激したら駄目なんだよ!
だって……『(ピッ)三百円が一点、(ピッ)二百五十八円が一点──袋は要りますか?』普通にレジ打ちしてて可愛いもん!!
背が小さいからか、台に乗ってやり易い様にしているし、頭が良いんだよ!
「袋は要らないよ」
ぶかぶかの制服着てて、名札に『那邪道』って書いてるから、そのバーコードを使って、レジを使える様にしたんだね!!
「ポイントアプリはありますか?」
「あっ、有るんだよぉ、はいこれだね(ピッ)」
凄い自然にこなしてる……何だろう、モフモフ幼女ちゃんはコンビニ経験者なのかな?
「有り難う御座います! 合計五百五十八円になります!」
「丁度だすね、はい(チャリッ)」
「丁度頂きます! レシートどうぞ!」
「はいどうも。さっちゃん、レオンちゃん、外で唐揚げ食べるんだよぉ」
「えっ!? 花乃歌っ、ちょい待てって!」
「桐藤さんお待ちなさい!」
「有難う御座いましたなの!」
ウィィィィン────(ピロピロピロピロ)
「お待ちなさい桐藤さん! 何をしてますの!」
「待て華ノ恵! 花乃歌……言ってた奴ってあの子供か?」
「違うんだよ…ムグムグ、レオンちゃんも食べる? ちゃんと揚げられてて熱々だよ」
「……貰うけど、あひゅっはふふ……旨いな」
「二人共っ!」
さっちゃんがちょい怒です。
だって、もう鉄塊通過してて、まさかコンビニで勝手に働いてるとは思わないんだよ。
しかも、迷宮で逢った女の子じゃ無かったし、一度退がった方が良いと思ったもん。
「さっちゃん、あの女の子ね……レジを打ちながら、私達を観察してたんだよ。変な動きをすれば、襲われてたと思います……」
「あぁ……言葉喋ってたし、確かに視線はヤバかったな」
「それはっ、そうですわね……っ、では時間を置いて、もう一度行きますわよ!」
そんな!?
時間置いたら、あの子が帰っちゃうかも知れないじゃん! 言葉が通じるなら、せめて一モフさせて欲しいんだよ!
あと飲み物買うの忘れてました!
「さっちゃん、レオンちゃん、飲み物買って来るけど何が良い?」
「何だよ唐突に……花乃歌まさか……じゃあコーヒー頼むわ」
「野小沢さん普通止めるでしょうっ!?」
「桜乃オーナー! 良かった、戻っておられたのですね。突如鉄塊からの反応が無くなったので、突破されたものとばかり……唐揚げ? 何処でそれを……?」
普通に売ってました。
目の前に有るコンビニで売ってました。
そして今から! 飲み物買うついでに! 耳か尻尾をモフモフして来ます!!