EP.43 迷宮上層フルマラソン.3
温暖な風が、身体を優しく包み込む。
穏やかな夏日に晒されて、毛穴と言う毛穴から、大量の水分が流れて行く感覚。
ふかふかだったお布団が、その水分を吸収して、湿り気全開じっとりお布団に、早替わり。
「暑い…エアコン付けなきゃ…?」
エアコンのリモコンを探すけど、手を動かしても何も無い。
寝苦しい夜に、直ぐにエアコンを付けれる様にと、枕元に置いていた筈なのに。
「落としたかなぁ…よいしょっ」(ジャリッ)
んっ…何でフローリングの床から、ジャリジャリ音がするのさ?
ベットから腰を上げて、足を床に付けたら、ジャリッと言う音。そして、ぼんやり眼で周りを見ると、壁や天井が無い。
「?……夢?」
「暑っ…花乃歌ぁ、クーラー付けてぇ…」
レオンちゃん、また全裸になってる。
この感じ、夢じゃ無いの?
ここ何処?
「畑が広がってるし、知らない場所だよね」
畑の側には、巨大なドーム状の建造物。
その建造物は、見覚えがあった。
「以前ニュースにもなった、半自動型の、屋内農業施設だよね」
何でこんな所に私居るの?
夢にしては、妙にリアルだよね。
「夢なら……あの建物を、本気で殴っても大丈夫な筈……」(腕をぐるぐる)
「大丈夫な訳が無いでしょう。寝ぼけるにしても、物騒過ぎますわ」
「さっちゃん?」
「おはようございます、桐藤さん。ほら、早く着替えて、行きますわよ」
「何処に? と言うか……ここは何処?」
「何を仰っていますの。お伝えしていたでしょう、迷宮へ入ると」
「へっ……」
「花乃歌ぁ…クーラー付けてぇ…」
レオンちゃん……お外だから、クーラーは使えないんだよ。
これは、どう言う状況なのかなぁ。
太陽が眩しいんだよ。
「で、何で私は炎天下の中、全裸で爆睡させられてたんだ……おい華ノ恵、こっち向け」
「桐藤さん。ここのお野菜美味しいでしょう? 有機野菜で安心安全。あちらのプラントで作られた、華ノ恵印のお野菜ですわ」
「うん…ムグムグ、美味しいんだけどね。レオンちゃんが怒なんだよ?」
「多少日焼けした程度ですわ。今度無償で、お肌のケアを致しますわよ」
「こら華ノ恵……叫ぶぞ?」
「レオンちゃんここじゃ駄目だよっ、働いてる人も居るんだからね」
これは非常に不味いんだよ。
農業施設の中に入って、食堂でご飯を食べてるんだけど……レオンちゃんがマジ怒寸前なんです。
全裸で屋外に晒されたら、怒るのも分かるんだけど、ここは堪えて欲しいんだよ。
「さっちゃん。流石にこれは、説明が必要だと思うの。お野菜はムグムグ、美味しいけどさ」
レタスに玉葱ドレッシングをかけただけ。それなのに、この旨味は癖になります。
レオンちゃんも、怒りながらだけど、しっかり食べてるの。
「……ちょっとした悪戯ですわ。昨日、部隊を動かして、ベットごと移動させましたの。まさか野小沢さんが……全裸だったなんて」
「全然気付かなかった……。確かに、レオンちゃんが全裸だとは思わないよね」
「騙されるなよ花乃歌。そいつ絶対分かってて、やりやがったからな」
騙されっ、レオンちゃんの怒りが全く収まらないんだよ。
「ただの悪戯ですわよ野小沢さん。まさか桐藤さんのお宅で、全裸になっているだなんて、思いもしませんでしたわ」
ぬぅぅぅっ、間に私を挟まないで。
ピリピリした感じに、耐えられないんだよ。
「さっちゃんっ! 迷宮!迷宮のお話をお願いしますっ! その為に、私達をここに連れて来たんでしょ!」
「花乃歌……私の裸……」
「レオンちゃんっ、ここは抑えてっ! 全裸になったレオンちゃんも、悪いんだからね!」
「ふふっ、そうですわね。野小沢さん、悪ふざけが過ぎましたわ。謝罪致します」
「チッ……いつかお嬢様も、炎天下で全裸にひん剥くからな」
「それはそれは、楽しみにしておきますわ」
ピリピリが収まらないっ……これは、後を引きそうだよねぇ。
「それでさ、ここって何処なの? ドーム型の農業プラントって言うのは、分かってるんだけど、ここに迷宮があるの?」
「そうですわ。ここは奏地区の農業プラント。お二人には、黒い渦の発見と、その迷宮の規模、資源の調査をお願い致します。長期調査になりますから、そのおつもりで」
「……だから課題を終わらせろって、言ったんだね。自由研究どうしよう……」
「そんなもの、ここのお野菜を、研究題材にすれば宜しいですわ」
お野菜の研究?
ど素人の私に出来るとでも?
「それ良いな。私も何にしようか、迷ってたんだ。一緒にしようぜ花乃歌」
「うん…レオンちゃんがそう言うなら、やってみるんだよ……」




