EP.41 明日から夏休み?.3
「レオンちゃん…ここは…」
レオンちゃんの後を追いかけ、電車でぐるっと三十分。縫郷駅から徒歩五分の場所に在る、ジャンジャンバリバリと五月蝿い場所。
そんな場所の前まで来ました。
これは……未成年禁止の建物なんだよ。
「おーい花乃歌、そっちじゃないぞー」
「だよねっ、焦ったぁぁぁ……あそこは人生を狂わせる場所だ」
小走りでレオンちゃんを追いかけます。
だって早く立ち去りたいから!
昔お母さんが言ってたんだ。ジャンジャンバリバリする建物には、絶対入るなって。
入る訳が無いんだよ。
お母さん言ってたもん。鬼の形相で、お父さんが呑まれたって。
「何してんだよ花乃歌。あそこには絶対入るなよ、退学になっちゃうぞ」
「絶対入らない……呑まれるから」
「何にだよ。ほら、この建物だ」
「ここは……」
さっきのジャンジャンバリバリより、少しだけ楽しそうな音が流れてる。目の前にはショーケースが有って、中にぬいぐるみが沢山詰められてるんだよ。
「もしかして花乃歌、ゲームセンター来た事無いのか?」
「これがゲームセンター!? 来た事無いと言うか、近付いた事も無いんだよ。お母さんも、八代ママも、近付いたら駄目って言ってたからさ」
「そんなに危険な場所じゃ無いぞ。凄い偏見もってるな」
「可愛いモノがいっぱいだぁ……少しワクワクして来たよ! レオンちゃん! 色々教えて下さいな!」
「おうっ、私に任せとけ」
もう高校生だし、お母さんも八代ママも、許してくれるよね?
大丈夫だよね?
八代ママが怒になったら、全身全霊を持って逃げるからね。
レオンちゃんの後に付いて、建物に突入するんだよ! 後方は任せて!
ふへぇ……一階はクレーンゲームだけなんだね。このビル内全部がゲームセンターって、凄く広いんだぁ。
「あまりキョロキョロすると、不審者と思われるぞ?」
「仕方無いんだよ。こんな場所初めてだし、気になるモノが沢山あるし、何処をどう攻めれば良いのかが分からないの」
「攻めるって……あぁ、成程」
何が成程? どうしたのレオンちゃん。
「花乃歌がこう言う場所、禁止されてた理由が、何と無く分かってきた」
「こう言う場所が、危ないからじゃ無いの?」
「何て言えば良いんだろ……取り敢えず花乃歌、アレ、一回殴ってみ?」
「アレ……パンチングマシンって書いてる」
「そうそうパンチングマシン。ストレス発散とか、男子達の力の見せ合いで殴る奴だ。試しに私がやるから、そのあとで殴ってみ?」
「やってみますっ、柔軟しておくよ。ぐいぐいっと」
ストレス発散用のゲームなんだね。大量課題のストレス溜まる前だけど、先に発散しておくんだよ。
「そこまで本気にならなくても、良いけどな(ピッ)」
えっと、ランキングが表示されてる。
一位は、『暴力反対サラリーマン』さん。ストレス溜まってるんだねぇ。
「そんじゃ、今の私だと、ふっ──(ドズンッ)」
『チャララチャッチャチャーッ! アナタの拳はヘビー級! 八百五十キロ! 殴られた相手は顎が砕けます!』
「怖っ、レオンちゃん力強くない!?」
「やっぱりな……何か、力強くなってんだよ。私がヘビー級って、普通可笑しいだろ」
それでも二位なんだ……一位の暴力反対サラリーマンさんは、千二百キロだもん。
「ほれ、次は花乃歌の番だぞ。三回まで挑戦できるから、そのまま普通に殴ってみ?」
普通に殴る? 普通とは何ぞや……ゴブさん相手にする時ぐらいかなぁ。
「ゴブさん……良しっ、ふんっ──(シュゴッ)」
『チャララチャッチャチャーッ! アナタの拳は赤ちゃん以下! ゼロキロ! 殴られた相手は心が癒されままままま──プシュ──……』
「えっ……赤ちゃん?」
「思った通りになったな……殴るとこ消し飛ばすとか、計測出来ないって……」
殴るとこ消し飛ばす?
あれっ、ミットさん何処いったの?
「ミットさん消えた!?」
「花乃歌、絶対に普通の人と喧嘩するなよ。一発で蒸発するからな」
「蒸発!? 私結構力抑えたんだよ!?」
「本気出してたら……このビル倒壊するかも」
ビル倒壊って最早災害!?
私そんなに力の強くっ……無い…筈っ!!
「だから、ゲームセンター禁止されてたんだろ。以前の花乃華歌でも、普通に人殴ったら……」
「そんな事無いっ……とは言い切れぬぅぅぅっ」
「まぁ今日は私居るし、絡まれる事なんて無いって。上の階行こうぜ。結構面白いゲームがあるからよ」
パンチングマシンさんは……壊れたまま放置なんだね。
「二階はコインゲームのフロアだな。一世紀経っても無くならない、廃人達の心のオアシスって触込みだ」
「百年前のゲーム? 廃人達って……うわぁ、目が死んだ人達がそこそこ居るね」
「隣のパチ屋だと、金が一瞬で消えるからな。ここだと、ワンコインでそこそこ遊べるし、良い時間潰しにもなるんだろ」
恐ろしい場所なんだよ。
あれはスロットだよね。その回る液晶を睨んで、ぽちぽちボタン押す様は、何か取り憑かれた人に見えちゃう。
『また外れたぞー!(ガンッ)この台設定可笑しいだろー!(ガンッ)もっと優しくしろよー!』
「花乃歌。ああ言う奴の近くには、絶対に行くなよ」
「行かないよ! 台をガンガン叩いてるし、触るな危険だよね」
黒髪おかっぱの女の子だけど、目付きが病んでる人のソレなんだよ。私も、人の事は言えないけどさ。
「んじゃ、もういっこ上の階だな」
「何か怖くなってきた……」




