EP.40 夏休み前の日常.4
到着しました華ノ恵百貨店。
過去一入りたく無い気持ちで、今にも全力で逃げ出したい。でもね、逃げ出したら絶対に、さっちゃんに追いかけられて、捕まると思うの。
「なぁ華ノ恵。花乃歌の顔が、『無』になってるぞ」
「大丈夫です野小沢さん。桐藤さんは、『無』でも可愛らしいですわ」
無にもなるんだよぉぉぉ。
ずっとハサミでチョッキンしてきたのに、今更美容室だなんて……行き辛いんだよ。
「ぬぅぅぅ、美容師さん気絶しないよね?」
「ようやく戻りましたか。何度も言いますが、安心して下さいまし。完璧な仕事をなさいますわ」
「それなら良いけど……不安だぁ」
「何で他の奴らって、花乃歌の事怖がるんだろな? クラスの奴も逃げ腰だし、変なもん出てるとかか?」
レオンちゃん、昔から、昔からなんだよ。幼稚園の時だって、男の子に虐められて……そう言えば、悲鳴をあげて気絶されるまでは、無かった様な気がする。
「……あれかなぁ、赤と緑のオーラ」
「それそれ、凄い不思議現象の奴。実際何なのか分かって無いだろ? 何か関係してるんじゃ無いのか」
「有り得ますわ。桐藤さんのスキルは、正直言って規格外過ぎますもの。固有スキルなのは間違い無いでしょうけど、その効果がハッキリしませんわ」
「スキルの効果……ふんっ!!」
少しだけ、さっちゃんと戦った時を思い出してみて、力を込めてみます!!
ピシッ────『花乃歌ストップッ!』
うん? どうしたんだろレオンちゃん、凄い汗をかいてる。
「華ノ恵……アスファルト割れたな」
「今のは赤色でしたわね。桐藤さんが良く、鏡が割れると仰っていましたが、理由はこれでしたか」
「どうしたのさ二人共? アスファルト? 地面がヒビ割れてる!?」
「無意識に、スキルが発動するのでしょう。その赤いオーラみたいなモノの所為で、威圧感も増し増しになっていると、推測出来ますわ」
じゃ無くて! 華ノ恵百貨店の駐車場にヒビって、修理費用幾らなのさ!?
「しゅっ、修繕費わぁ…幾ら?」
「こんな事で請求しませんわ。地震が頻発しておりますし、他の作業のついでに出来ますもの」
「さっちゃんっ、有難う御座います!」
「アレだ、花乃歌は燃料要らずの、破砕機になれるな」
破砕機っ!?
確かに、今のでアスファルト割れるなら、全力で力を込めたら出来るだろうけど、そんなのはやりたくないよ!
「燃料要らず……良いですわねソレ」
「さっちゃん!? やらないよ! 何も破砕しないからね!」
「花乃歌……既に郊外に穴、開けただろ?」
「それは不可抗力!わざとじゃ無いからね!」
結構落下速度速かったし、それ込みであんな事になったんだよ。私の力だけじゃ無い!と思いたいです!
「あの女さえ捕まえていれば……花乃歌さんのスキルの詳細が分かりましたのに」
あの女? 何かさっちゃんが、物騒な事言ってる気がする。
「なぁ、早く入ろうぜ」
「そうでしたわ。行きますわよ桐藤さん」
「はぁぁぃ……」
華ノ恵百貨店一階の左奥にある美容室。
真っ赤な唇型の看板に、『分厚い唇』って書いてるんだけど、パンチ効き過ぎた店名だよね。
「なんだろ…店舗が真っ白だから、看板の圧力が半端ない。入りたく無いなぁ……」
「見た目だけですわ。店員はまともですから、安心して下さいまし」
「華ノ恵……看板がまともじゃ無いって、認めてるぞその言い方」
さっちゃん、嘘ついてないよね?
ここはまともなお店だよね?
この唇型の看板は、ぶっ飛んだデザイナーさんが作った作品だよね?
────ウィーンッ『よぅこそぉー』────
「濃いっ、濃過ぎるんだよさっちゃんっ!」
何で自動ドア開いた瞬間に、自動音声でオネェさんの声が流れるのさっ!?
「あぁ、何だ、私帰って良いか?」
「逃がさないんだよレオンちゃん! 一緒に髪切るんだよね? 帰らないよね? 置いて行かないでぇえええっ!!」
レオンちゃんが帰るのなら、私も全力で帰るからねっ!
「何してますの二人共……あら、誰も居ませんわね。マスター! マスターレディ!」
マスターレディッ、何さその名前……うひっ、奥から誰か来るぅぅぅ。
「あらぁん…その声、桜乃ちゃんじゃないのぉ。お、ひ、さ、し、ぶりねぇん!」
「久しぶりねマスターレディ。お身体の調子は如何かしら」
「見ての通りよぉん、元気元気で楽しくやってるわぁん。どぅしたの今日わぁ、誰か他に居る様だけどぉ……凄い子ねぇ……」
このオネェさん……目が見えて無い?
でも今、私の方を見て、凄い子って言った。
「彼女達のヘアセットをお願いしたいの。頼めるかしら」
「うぅん、問題無しよぉん。丁度二人出勤してるしぃ、可愛くして、あ、げ、る、んふっ」
「きっ、桐藤花乃歌です! お願いしまひゅ!」
「野小沢麗音だ……お願いします」
「桐藤ちゃんに、野小沢ちゃんねぇ。桜乃ちゃんがお友達連れて来るなんて、お姉さん嬉しくて、気合い入れてしちゃうわよぉ」
何だろこの人。
見た目は兎も角、全く嫌な感じがしないのさ。不思議な人だぁ。
「メロンちゃぁん、チェリーちゃぁん、お客様よぉん。早く来なさぁい」
んっ? メロンちゃんにチェリーちゃん?
「あらあらあらあら桜乃ちゃんじゃなぁい。レディママのご機嫌な声がぁ、聞こえて来た訳よねぇ」
「やだ見てメロン、可愛い子が二人も居るわぁあああ。私はその小さい子の担当ねぇ」
「チェリーちゃんの好みよねぇ。それなら私は、ボーイッシュちゃん担当ねぇ」
うん、この人達なら……私を怖がる事無さそうなんだよ。だって、人生初! 私が怖がってるんだもの!
嫌な気持ちは無いんだけど、このオネェさん達雰囲気が凄い怖い!
身長っ、二メートル越えのオネェさんっ、迫力が凄過ぎるもん!
「だから大丈夫だと言いましたわ。このお店なら、桐藤さんに物怖じせず、対応して頂けますわ」
「うん。だと思う」
「なぁ華ノ恵、本当に大丈夫だよな?」
レオンちゃん、お店のオネェさんに聞こえちゃってるよ。
「さぁやるわよぉん、二人共ぉ」
「「レディッ、ファイッ!!」」
「何と戦うのさ!?」
「花乃歌の髪と戦うんだろ……」
花乃歌の髪が、整えられた!
しかし天パは治らない!
ストパーをかけた!
天パがそれを跳ね除けた!




