EP.23 他地区見学会.2
トラックが停車して少ししたら、降りる様さっちゃんに言われた。
降りた先には検問所が設置されて、周りには銃を持った人達が眼を鋭くさせて警備をしている。
何と言うか……凄く物々しい雰囲気だ。
そんな事を思いながら、さっちゃんの後を付いて歩いていると、検問所から誰か走って来た。
「桜乃オーナー! お待ちしておりました!」
「お疲れ奏。貴女がここを死守してくれたお陰で、住民に被害を出さずにすんだわ」
奏……確か他地区を指揮するリーダーの人だよね? 女軍人さんっぽくて、レオンちゃんとはまた別の格好良さなんだよ。
「いえ、これも迅速な桜乃オーナーの采配のお陰です。後少し遅れていれば、間違い無く那邪道地区は壊滅でした」
そんなにギリギリだったんだね。
この人はスキル無いのかな……どうやってゴブを押し留めたんだろ。
「桜乃オーナー、そちらの御二方は?」
「紹介するわ、桐藤花乃歌さんと野小沢麗音さんよ。二人共スキル持ちで、迷宮の中層を経験済みね。桐藤さんは前のイベントで、異常個体を単独撃破しているわ」
「成程、ダークボアを倒した女の子ですか、それは心強い。私は奏梓と申します、何卒宜しくお願い致します」
「桐藤花乃歌です! よりょっ、宜しくお願いします!」
「…舌噛んだな、花乃歌大丈夫か? 私は野小沢麗音だ、宜しくな」
緊張して舌噛んだぁ……痛く無いなぁ。
「まさかスキル持ちが二人応援に来るとは……正直ギリギリのタイミングでした」
「何か迷宮に異常ですの?」
「はい、それも含めて現状を報告しますので、天幕までどうそ」
「面倒事の匂いがぷんぷんするじゃん、来るんじゃなかったぜ……」
「本当だよ……何かに祈るしかないっ!」
どうか厄介事じゃありませんようにっ!
◇ ◆ ◇ ◆
「それでは現在の状況を説明致します。現在、那邪道地区迷宮前に設置した鉄塊により、魔物の侵入は防いでおりますが、内部に残してある観測器の情報によると……奴等、その鉄塊を少しずつ削っている様なのです」
「鉄塊を削っている……たかが鬼種に出来る事ではありませんね。内部の様子は見れるのかしら?」
「それが、鉄塊の端からカメラを入れた瞬間、直ぐに潰されてしまうのです。まるで此方の機器を知っているかの様に。予測では、後三日もすれば鉄塊に穴が開くと思われます」
「なあ奏さん、その壊れたカメラに、何も映って無かったのか? 一瞬でも何か撮れたなら、確認しておきたいぞ」
確かにレオンちゃんの言う通りだね。
どんなゴブなのか見ておきたい。
「映ってはいますが……見てもらった方が早いでしょうね、直ぐ準備します」
「何か歯切れ悪い言い方だな……」
「彼女にしては珍しいですわ、それ程に不可解と言う事でしょう」
「どんなの映ってるかなぁ、少しだけ楽しみなんだよ」
少し待っていたら、モニターと機材をもって奏さんが戻って来た。
私には分からない機材を組み合わせて、配線がぐちゃぐちゃなの……奏さん迷ってる?
「奏、貴女相変わらずそういうのが苦手なのね。地区長なのだから、いい加減覚えないな」
「うぅっ、申し訳御座いません桜乃オーナー。仲間に教わってはいるのですが、どうにも上手くいかず……」
「そこの線はこっち、差し込みは……あぁ、これとこれがああなってと、こんなん簡単だろ」
レオンちゃんが接続しちゃった!?
しかも一目見ただけで、簡単数秒クッキングなのさ!
「有難う御座いますっ、助かりました!」
「野小沢さんはこういうの、変に得意ですわよね。不思議ですわ……」
「親父が配線関係の仕事してるし、こんなん餓鬼の頃からやってるからな。と言うか、お前リーダーなんだから手伝えよ!」
レオンちゃん凄い……私こんなの触ったら、苛々しちゃって機材壊しそう。
「そっそれでは映像を流します、本当に一瞬ですからね(ピッ)」
────ザザッ──ザザザッ────
「ノイズが酷いな……安物使ってるのか?」
「そんな訳無いでしょう、華ノ恵印の高価なカメラですわよ」
「何か映ったんだよ……何だろあれ……」
────ザッ『◾️◾️ッ!』ザッ────
「うひゃっ、びっくりしたぁ……」
「(ピッ)これが、カメラに映っていた全てです。カメラに向かって飛び付いて来ました」
「何かしらこれ……牙よね」
「カメラを喰おうとしてるのか? 変なゴブリンだな……」
びっくりしたけど、今の声──あの子?
いやいやまさか……あの子と会ったのは中層だし、こんな上にまで来るものなの? それに、ゴブがいる筈なのに、他に何も聞こえないんだよ。
まさか……鉄塊削ってるのって……あの子!?
さっちゃんに言わないと!
「さっちゃん、レオンちゃん……少しお話があるから一旦お外行こ……」
「桐藤さん?」
「なんだよ花乃歌、そんな変な顔で」
変な顔って言わないでっ!