EP.39 見た目は少女、中身は……
捕まえていた貴重な人材が逃げた。
どうやって部屋を出たのかとかは、ぶっちゃけどうでも良い。問題は、直ぐ確保出来る筈だったのにも関わらず、研究所内から忽然と姿を消した事だ。
監視モニターの映像を見ていると、何故か縫郷さんが、魔石を溶かす為の設備に入って行く姿が見えた。
その時に映像を巻き戻していれば、あの女の姿が映っていたのだが、私は無視してしまったのである。
縫郷関を一言で表すなら、自由人。
私が幼い時は、同い年と思い、良く遊んでいた記憶は有りますが、年を重ねていくうちに、距離を置きたくなった元友人。
年齢不詳、自由奔放、遊惰放蕩、神出鬼没と言った、まごう事無き遊び人。
私が距離を置いた理由も、バンバンジャリジャリキュイキュイーンと言った、子供が入ってはいけない店に、連れて行かれそうになったからで、御父様が若干怒でしたわね。
その時は、縫郷さんが限定スイーツを手土産に、平謝りして来たので許しましたが、今回のこれは……流石に許せませんわ。
「さて、縫郷さん。この映像は、何かしら?」
緊急時非常用通路内の、監視カメラの一つに映る、あの女と縫郷さんの姿。
それを見せられて、明後日の方を向く縫郷さんの頭を、スキルで無理矢理こっちに向かせる。
「痛いぞー桜乃ちゃん。暴力はんたーい」
「全然痛そうに見えませんわねぇ、縫郷さん?」
「保護対象って知らなかったー。知ってたらー、桜乃ちゃんに渡してたぞー」
「メッセージ、確認しましたわよね? 何故一人で戻って来られたのですか?」
そう。監視カメラの映像を見て直ぐに、縫郷さんにメッセージを送り、それを見ている姿も確認していた。
「私は見ての通り非力だからなー。あそこまで行ったらー、無理ぷーだぞー」
「無理ぷーでは有りません! ならばせめてっ、あの場で足止めさえしていれば、確保も容易でしたのにっ!」
「怒るなよー。桜乃ちゃん怒るとー、将勇の奴が絡んでくんだよー」
「誰の所為ですのっ!!」
動ける者で、あの女の行方を追わせていますが、市外へ逃げられると、手を出しにくくなりますの。
「私の所為かー? でもー、桜乃ちゃんも悪いんだぞー。ちゃんと先にー、保護対象の情報共有して無いからだろー」
痛い所をっ、これだから厄介ですの。
「……それについては謝罪しますわ。しかし、研究所職員で無い者が侵入していれば、必ず捕獲、ないし連絡する様にと、決まりがありますわよね」
「むー、確かになー。連絡しなかったのはー、私の責任だなー。責任嫌いだー、地区長辞めたーい」
「そんな事をすれば、報酬が無くなりますわよ」
「それは嫌だー。お金無いと遊べ無いだろー、給料上げろー」
話を逸らそうとして来ましたわね。
縫郷地区はとある施設が有り、他の地区よりもある意味で危険な場所。
そんな地区を任せられるのは、正直言って縫郷さんしかいませんもの。
「ならば、あの女を探して下さいまし。縫郷刑務所内の情報屋に、依頼を出しますわ」
縫郷地区に在る施設とは、刑務所。
それも、迷宮の素材と、莫大な費用を投じて造られた刑務所であり。刑務所と言うより最早迷宮と言っても過言では無く、逃げ出そうとする者がいたら、死よりも恐ろしい事が待っている、最凶の刑務所である。
例を上げるならば、壁を越えて逃げようとした者が、実際に壁を越え、地に足を付けた瞬間、地面から針山が突き出し、足を固定。
失血死ギリギリまで、助けられる事は無い。
よしんば仲間が居たとしても、助けようと針山に触れた瞬間、同じ道を辿る事となる。
それらを考え、作り上げたのが、この縫郷と言う少女なのだ。
縫郷刑務所初代所長、縫郷関。
受刑者達からは、確か……無邪気な悪魔と言われて居ましたわね。
「情報屋なー。あいつの刑期まだまだ有るしー、指示しておくぞー」
「お願いしますわ。貴女が逃した女は、鑑定スキル持ちの可能性があります。そのスキルならば、縫郷さんの年齢も一発で判明致しますわ」
「なっ、桜乃ちゃんそれマジかー? 鑑定? 私の年齢見られるのかー?」
「鑑定スキルなら可能ですわ。縫郷さん。あの女と話していて、何か違和感は無かったですか」
「違和感なーっ、名前だー! 私名前教えて無かったのになー。最後縫郷って言ってたー! 年齢見られてたのかーっ、処分しなきゃなー」
何言ってますのこの女、処分なんてさせる訳が無いでしょう。
「それは許しませんわ。もしあの女に危害を加えようモノなら、私が貴女を処分致しますわよ」
「冗談だぞー、桜乃ちゃん怖ーい。あの女性が犯罪起こさない限りー、危害は絶対に加えないぞー。安心しろなー」
安心は出来ませんわね。
監視を付けておこうかしら。




