EP.37 地区長会議.2
「それでは、本題に入りましょうか。今回現れた迷宮の出入口の管理ですが、奏地区はそのまま任せますわ。那邪道地区の方は……施工完了後、新たな地区長が決まるまでは、南雲隊が護って下さいまし」
『問題無いよ。応援に行った僕の部隊を、そのまま常駐させれば良い』
「助かりますわ。なるべく早く、新たな地区長を決めさせて頂きますので、宜しくお願い致しますの」
「桜乃オーナー、南雲の報告書に有った、犬耳少女の捜索はどうなされますか」
その件ね……一番の問題ですわ。
桐藤さんが以前に出逢ったとされる、あちらの世界の者達……今の所敵意は無い様ですが、どう対処したものかしら。
「そうね……無理に捜索する必要は御座いませんけど、念の為、各区出入口への常駐人員の増加と、万が一遭遇した際は、一時退避後に監視をして頂戴。あちらから手を出さない限り、絶対に攻撃しては駄目ですわよ」
『華ノ恵の言う通りだね。あの威圧感ははっきり言って、化物だったよ。二度と会いたくないな……』
南雲がここまで恐れるなんてね。
もしもコンビニで会った時に、手を出していたら──止めていただいた桐藤さんに、感謝ですわ。
「では、桐藤さんの件は如何しましょう? 今回の件で南雲は入院、装備の全損となっており、彼女は研究所所属となっていますので、何某らの罰は必要かと」
『まて奏。花乃歌は僕だと気付いて無かったんだ、仕方無いだろう。あの時は僕の行動が不味かったのだから、花乃歌に責任を求めるのはお門違いだ』
「それでもだ南雲。魔物が確認された時点で、桜乃オーナーや、研究所に連絡する事ぐらいは出来た筈だ」
そこは大体想像が付きますわね。
どう言う訳かは知りませんが、桐藤さんと犬耳少女、野小沢さんが行動を共にしていたのでしょう。
私にそれを知られれば、捕獲されるのではと危惧して、連絡をしなかったのでは無いかしら。
そこにゴブリンが現れ、戦闘となり、出現場所を特定すべく移動し、完全装備の南雲と遭遇。南雲が犬耳少女に攻撃して、桐藤さんが怒ってしまった。
「……やはり何か、おかしいですわね」
何か違和感が有りますわ、ゴブリンの検死報告書はどれかしら。
えっと……これね。
散らばった肉片は、間違い無く桐藤さんがやったモノとして、抉られて死んでいるゴブリンと、腹に穴が開いたゴブリン……倒し方が違うわね。
野小沢さんはこんな事出来ませんし、犬耳少女が戦った跡だとしても、抉るのと穴を開けるのとでは技術が違いますわ。
『どうしたんだい華ノ恵、ゴブリンの報告書なんて見て。そう言えば華ノ恵は、異常個体と遭遇したのだったね。どんな個体だったのか気になるな』
「南雲。桜乃オーナーが桐藤さんの処遇を悩んでいるのだ、少し黙っていなさい」
桐藤さんへの処遇は悩んでおりませんの。
罰として、新たに現れた出入口の調査に、夏休みを丸々使って頂きますわ。
それなら、無駄な人員を割く事無く、無駄なお金を使わずに調査出来ますし、寧ろこちらとしては、南雲がやられてラッキーですの。
ですので、今はそんな事よりも、この違和感の正体を突き止めたいのですわ。
「南雲、もう一度確認を。あの場に居たのは、桐藤さん、野小沢さん、犬耳少女で間違い無いのですね?」
『報告書に書いた通り、僕が見たのは犬耳少女だけだ。花乃歌が居たって言うのは、実際には声を聞いただけだし、野小沢?は僕の隊員が保護したと、後で聞いただけだからね』
「そうね……報告書にも書いてあるわ。なら、どうやって南雲は、桐藤さんの一撃に耐えたのかしら?」
一番の違和感がそこに有る。
確かに南雲は強い。
スキル無しで南雲と戦ったら、私でも簡単に負けてしまう程に、南雲は鍛え上げている。
専用の盾も、アシストスーツも、魔物から獲れた魔石や迷宮内の鉱石を、惜し気も無く使い作った特別製だ。
しかしそれでも、怒りに身を任せた、桐藤さんの一撃を防げるとは、どうしても思えない。
盾は粉々に砕かれ、アシストスーツも機能を失っていた状態で、何故助かったのか。
「誰かがその場に居て、桐藤さんの攻撃を防ぎ、南雲を助けた……これなら納得出来ますわ」
『他に誰か居たかなぁ……熱感知した時も、捉えたのは三人だったけどね……四人だったかな……違う違う三人で合ってるよ』
曖昧ですわね……まさかあの場に、記憶を操作出来る者が居た?
桐藤さんの記憶を弄った者かは分かりませんが、無くは無いですわ。
ですが……衛星画像には何も写って無かったですし、確証が取れませんわね、保留ですわ。
「……桐藤さんの処遇は、新たな出入口内部調査及び安全確保と致します。もう直ぐ夏休みですので、先ずは奏地区から調査させますわ」
「分かりました、桜乃オーナーに従います」
『異議無しだね……早く退院して、花乃歌に謝らないとなぁ……』
全く懲りてませんわねこの女……本当に、入院期間を延長させますわよ。




