EP.37 地区長会議.1
あの緊急事態から三日経った。
無事、迷宮への出入口を封鎖する事に成功して、今はその出入口に被せる様に、建物を建設中である。
そして今日、終末の刻研究所に急遽地区長を招集して、会議を開くことを決定した。
会議の内容は勿論、新たに出現した、迷宮の出入口に関する事。それに加えて、未だ病院にて治療中の南雲からの報告書に有った、桐藤さんと犬耳の少女の件。
複数の場所で、同時並行的に物事が起こり、その一端に桐藤さんが関わっていた。
南雲の完全装備を打ち壊したのは桐藤さんであり、どうやら花乃歌の逆鱗に触れてしまった様で、防御が間に合わなければ、確実に死んでいたと南雲は言っていた。
「所々が曖昧ですわね……桐藤さんと野小沢さん以外に、誰か居たのかしら……」
私が接触したあの男も……一体御父様とどう言った関係なのかしらね。
幸い、貴重なスキル持ちが確保出来たから良いものの、それがなければ大赤字でしたわ。
「(コンコンッ)桜乃オーナー、扉が開いたままですよ。奏梓、只今到着致しました」
「あら、一番乗りね奏。先の件は良くやりましたわ。迅速に部隊を纏め、魔物を出す事なく封じ込めましたもの。流石ですわ」
本当に良くやってくれたわ。
元々、那邪道地区のコンビニを封鎖していた部隊を解散させず、何か有れば動ける様にしていた、奏の判断が功を奏したわね。
「有難う御座います。これも隊員達が優秀だからこそ出来た事ですので。出来ましたら、隊員達に臨時ボーナスの支給を御検討頂きたく」
相変わらず部下想いですのね。
万が一奏地区まで魔物が出ていたら、対応が遅れたかもしれませんし、良いでしょう。
「分かりましたわ、一人辺り五十の臨時ボーナスを支給致します」
「有難う御座います、隊員達も喜ぶ事でしょう」
奏、南雲、那邪道さん。この三人の中で信頼出来るのは、やっぱり奏だけね。
南雲は、戦闘力と情報収集能力には目を見張るモノが有るものの、桐藤さんを執拗に追いかけ回したり、今回は装備の全損……まだ利用価値が有りますので、大目に見ますけどね。
那邪道さんは、目上には頭を下げますが、部下や住民に対しては高圧的に接して、まるで物語りの悪役の様な方ですわね。戦力にもなりませんし、頭が良い訳でも無い……早めに交代させましょう。
「(ピポッ)あらっ? どうやら那邪道さんはオンラインの様ですわ。南雲は病室から参加ですので、始めましょうか」
「南雲は兎も角、何故那邪道は来ないのでしょうか。もう殆ど、完治しているでしょうに。それに縫郷の奴はまたサボりですか」
那邪道さんは、私に直接会うのが怖いのでしょう。
以前桐藤さんに無礼を働き、その後自らの失態で、他地区に迷惑をかけたのですから。
御飾りの副社長共々、僻地へ左遷かしらね。
「縫郷さんは無視して良いですわ。それじゃあ、会議を始めますわよ」
『────異常が、僕からの報告となる。この傷は僕の選択ミスさ……花乃歌を怒らせてしまった、僕の責任だね』
『有り得ませんわ……たかが一般人が、南雲様の盾を砕くだなんて』
「那邪道さん、以前にもお伝えしましたが、桐藤さんは単独で、しかも簡単に異常個体を倒せますの。良い加減理解なさって下さい」
「私も一度桐藤さんに会っていますが、正直言って規格外です。那邪道がそこまで言うのなら、桐藤さんと戦っては如何か?」
『そっ、わっ、私はまだ治療中ですのよ! 万全の状態になればっ、あの様な見窄らしい者なぞに負けはしませんわ!』
桐藤さんを見窄らしいと言いましたか。
僻地へ飛ばそうと思っていましたが、それは止めましょうか。
『僕は入院中の身だけど……那邪道、花乃歌への侮辱は、お前の命で持って償わさせるぞ……』
あら? 南雲が先にキレましたわね。
『なっ、南雲様!? 何故あの様な者を庇うのですか!!』
『花乃歌は僕の──』
「そこまでになさい南雲……」
『っ、怖いなぁ華ノ恵は』
最後まで言っていたら、入院期間を延ばしていた所ですわ。
それじゃあ、会議の本題を話す前に、さっさと終わらせましょうか。
「那邪道さん、貴女を地区長の任から降ろします。それに加え、那邪道優副社長を降格処分と、両名の配属先を解体部とします」
『えっ──華ノ恵さんちょっとお待ち(ブッ)』
『ははっ、楽羅蘭が回線切ったね』
流石楽羅蘭ですわ。
この会議は地区長会議であり、最早地区長で無くなった那邪道さんには、一切関係ありませんものね。
「那邪道地区の地名や駅名等、次の地区長が決まり次第変えますわ。異論は無いかしら?」
『僕は無いね。解体部は心身を鍛えるのに丁度良いし、那邪道には良い薬になるだろうさ』
「私も御座いません。コンビニに居る私の隊員は、そのまま継続して保守に勤めさせます」
ふぅ……これで一つ、懸案事項が片付きましたわね。




